貨物運送業|未払賃金請求に関する顧問弁護士活用事例

長距離運送を担当していたトラックドライバーが代理人を通じて1700万円を超える未払賃金を請求してきて,支払いを拒否したところ,同額に付加金を付けて請求する労働審判を申し立ててきたもの,会社が140万円を支払うという内容で調停が成立して解決したケース。

概要

業種

貨物運送業 株式会社

宮崎県内に本社,県外にも営業所を有している運送会社。グループ会社の本社は関西にある。

相談内容

長距離運送を担当していたトラックドライバーが退職後,在職中に未払いの賃金があったとして代理人弁護士を通じて請求してきたがどうすればよいか。

解決方法

元ドライバーの代理人弁護士が労働時間や賃金計算にあたって必要だとして請求してきた書類を提示し,それを踏まえて元ドライバー側が計算して請求してきた賃金請求について,ドライバーが運行中に1度も休憩をとっていないという内容での計算であったために会社の代理人として支払いを拒否した。
その後,しばらく連絡がなかったが半年以上経った後に同額の請求をする労働審判を申し立ててきた。


この際も交渉段階と同じく休憩0の労働時間をベースに1700万円強の請求をしてきたので,ドライバーの1つの運行パターンをモデルにした説明をするとともに,このような考えで請求されている期間の賃金計算を行って未払い賃金の額を試算してみたら,140万円程度になるとの答弁書を提出した。裁判所(労働審判委員会)がこの試算額である140万円程度について合理的ではないかとの心証のもとに調停を進めて初回期日で140万円を会社が元ドライバーに支払うとの内容で調停が成立した。

解決までの期間

労働審判については2か月弱(なお,最初に未払賃金の請求があった時点から労働審判での調停成立による解決までは約1年半)

事案内容

事案と結果

相談内容に記載したとおりです。トラックドライバーが運行中に1度も休憩をとっていないという不合理な労働時間の考えとそれを根拠とする未払い賃金請求を維持し,その支払いを拒否したところ最初の請求から6か月以上経過した後に労働審判を申し立ててきたものです。この6か月以上経過によって元ドライバーは消滅時効によって未払い賃金請求権の1部を失い,また適正な計算モデルをドライバー代理人弁護士が提示できなかったことから当方の主張そのままの内容で労働審判における調停成立で解決できたものです。
当初の請求が不当に高額であったこと,元ドライバーが賃金請求権の一部を消滅時効にかけてしまったことを差し置いても当初の請求額の10分の1以下の支払いで済む解決になったことから良い結果になったと思います。

事案の詳細

労働者側代理人は最初,賃金計算に必要な資料の提示を求めてくるのが通例で,提示した資料を基にして未払賃金を計算して請求してきます。本件は長距離運転を担当するトラックドライバーですので提示した資料の中にタコメーターの記載を転記したチャート図がありました。運行の内容とチャート図を根拠にしてドライバーが1つの運行の際に本社を出て最終目的地までに行く場合にどこのパーキングエリアで休憩し,どこで荷下ろししてその間には手待ち時間が生じるのかどうか,最終目的地から本社に戻ってくる際に戻りの運行において,どこで荷物を積んでその際には手待ち時間が生じるのかどうかなどを説明して,手待ち時間も労働時間と評価して計算したとしても,このような金額になる,このような考え方ですべての期間の計算をするとこうなるという試算を行いました。

 

その結果を答弁書に記載して主張したところ,裁判所(労働審判委員会)が合理的であるとの考えのもとに手続を進めて初回期日における調停成立での解決となりました。

弁護士の対応・アドバイス

交渉段階で会社の代理人として案件を受任し,会社から預かった資料の提示を元ドライバーの代理人弁護士に行い,それを踏まえて元ドライバー代理人からの高額請求については不当な請求を拒否するとの文書を作成・送付しました。その後,長期間にわたって元ドライバーの代理人弁護士から何のアクションも起きませんでした。


当初の請求から半年以上経過した後,会社から裁判所から文書が届いたということで確認したところ労働審判の申立書であり,確認したところ交渉段階と同額の請求(+付加金の請求)をするものでした。労働審判の場合にはスケジュール的にタイトであり(民事訴訟とは違い合計で3回の期日しか開かれませんし,申立書の送付から期日までの時間が短いこと,初回期日までに提出されたもので労働審判委員会が解決方針を決めてしまうのが通例ですので初回期日までに会社側の主張を明確にした答弁書を提出する必要があるという意味です),請求されている全ての期間の運行内容を説明することはできませんので最もスタンダードな運行を会社と協議の上でピックアップしてそれを説明し,このような考え方に基づいて全ての期間を計算しましたと答弁書で説明することにしました。

 

その際,労使で考え方が分かれる手待ち時間(貨物運送では荷主における荷物の準備ができるのを待つ時間等が待機時間になり,この時間について労働時間なのかどうかが争点となるケースが多いです)を労働時間と考えて全部の期間を計算しても,金額はこの程度にしかなりませんよ,仮に労働審判が不調になって裁判に移行した場合には会社は手待ち時間についても労働時間がどうかを全面的に争います。この場合,長期化が予想されますけどそれでいいですかという趣旨の主張をしたところです。
元ドライバー側は有効な反論をすることもできず労働審判の初回期日における当方の主張額での調停成立という形で解決できたものです。

なお本件は私自身が普段懇意にさせていただいている社労士の先生の紹介で受任するに至ったもので,その縁もあって賃金計算のソフトの提供などの協力を得ることができました。このこともあって当方が説得力のある主張(合理的な賃金計算額はいくらか)をすることができたものです。

 

当事務所は貨物運送を業とする会社の顧問業務も行っており,問題社員への対応,未払い賃金請求への対応など数多くの相談を受け,個別の案件の解決に関わってきました。また運送業を理解するために運行管理者(貨物)の資格を取得した弁護士が運送業を営む会社の顧問業務を担当しますので実情を無視した杓子定規な助言をすることはありません。
運送業を営んでおられる法人の経営者の皆様,多くの経験とノウハウ,貨物運送業の実情への理解が深い当事務所への相談や顧問業務の依頼を検討されてはいかがでしょうか。

 

  • 顧問弁護士の活用事例

    詳しくはこちら

  • 顧問先の声

    詳しくはこちら

  • 当事務所の顧問弁護士の特徴

    詳しくはこちら

  • 顧問先のご紹介

    詳しくはこちら

  • 顧問弁護士の活用事例
  • 当事務所の顧問弁護士の特徴
  • 顧問先の声
  • 顧問先のご紹介