宅建業|文書作成による競合企業の抜き行為の排除に関する顧問弁護士活用事例
顧問先企業(宅建業)が売主からの依頼で売買の仲介を行っている不動産取引について,別の宅建業者が「買い手を見つけてくるので現在依頼している業者を通さずに当社を通して売買してくれ」と売主に働きかけてきた(「抜き行為」を行おうとした)ことについて,顧問先企業名で文書を作成して,この送付によって「抜き行為」を行おうとした宅建業者を排除できた事例
タイトル
宅建業者が別の宅建業者による売買への介入行為(「抜き行為」)を排除できた事例
ある依頼者(売主・買主・貸主・借主)が、ある宅地建物取引業者との間で媒介契約または代理契約を締結しているにもかかわらず、他の宅地建物取引業者がその依頼者を誘引して媒介契約または代理契約を締結することを「抜き行為」という。
概要
企業の業種 宅地建物取引業(不動産業) 株式会社
都城市に本社がある。
相談内容
売主からの依頼で売買の仲介を行った不動産取引に別の宅建業者が介入して,同社を
通した売買をするように働きかけてきているが,この業者を特定したい。仮に特定できないとしても,「抜き行為」を行おうとしている業者を取引から排除したい。なお,売主は別の宅建業者から同社の名前を出さないように言われており,同社の名前は教えられないとの対応である。
解決方法
媒介契約を締結している売主に対して一般媒介契約において契約期間中に別の宅建業者と媒介契約を締結する場合には,この業者名を明示する義務があること,この義務の履行を
求め(別の宅建業者を教えるよう求め),応じない場合には費用償還請求を行う旨の通知書を顧問先企業名で作成し,顧問先企業から内容証明郵便で発送してもらった。
売主は顧問先企業に「抜き行為」を行おうとした業者名こそ開示しなかったものの,謝罪して別の宅建業者は撤退し,売買契約は予定通り顧問先企業の仲介の元に成約したとの
報告があり,無事に解決に至ったものである。
解決までの期間
最初の相談を受けてから「抜き行為」を行った宅建業者の撤退による解決までに4日
事案と結果
宅建業を営んでいる方が遭遇することが多い「抜き行為」に対する対応を相談された案件です。相談があった日に内容証明郵便で送付できる形式で通知書案を作成して,それを手直しして顧問先企業が売主に送ったのが最初の相談から2日後,売主から謝罪があって別の
宅建業者の撤退が確認できたのが最初の相談から4日後になります。
通知書案を即日作成して,その手直しと発送までを最短のスパンで行えましたので最初の相談から解決までに4日しかかからなかったスピード解決事案となりました。
事案の詳細
既に宅建業者が仲介に入っている取引に介入して契約当事者に甘言を弄して(「当社が仲介した方が高く売れますよ。」「仲介手数料が安く済みますよ」等)仲介に入ってくる悪質な宅建業者がいます。本件はその手の業者の介入を排除すること,可能であれば業者を特定
することが顧問先企業の目的でした。
顧問先企業の代理人弁護士として文書を作成,送付することも考えられたのですが,顧問先企業と売主との間で一般媒介契約が存在している状態であること,可能であれば売主との関係を悪化させずに予定されていた売買についてスムーズに終了させたいというのが顧問先企業の希望であったことから顧問先企業の名前で文書を出していただくこと,その文書を当事務所(担当弁護士)が作成すること,文書の発送方法は内容証明郵便の形式を用いて顧問先企業が本気であることを示そうという方針を顧問先企業に提案し,この方針について決済をいただきました。それを受けて即日文書案を作成して数回のやり取りを経て送付文書を完成させ,顧問先企業から売主に内容証明郵便で送付していただきました。
その2日後に顧問先企業へ売主からの謝罪があり,別の宅建業者の撤退が確認できたものです。
弁護士の対応とアドバイス
顧問先企業名で内容証明郵便が出せるように文書案を作成して,数回の手直しを経て顧問先企業に内容証明郵便の送り方をお伝えして送付していただくという対応をしました。
売主に送付する文書の内容については代理人弁護士として送付する場合と変わりませんが,当事務所から電子内容証明郵便で出す場合と異なり,顧問先企業に送付していただくという点で当事務所がコントロールできない事態の発生(形式ミスなどで文書が郵送できない等)が想定されましたので,出来るだけわかりやすく内容証明郵便の発送方法を顧問先企業にお伝えしました。
それを受けての顧問先企業の動きが早く,特に問題なく文書が売主に送付でき,その2日後には到達して売主からの謝罪,別の宅建業者の撤退という流れになったものです。
当事務所の顧問契約においては簡易な文書作成までを顧問業務として行っているのですが,本件は「簡易な文書作成」ということで作成をいたしました。文書の枚数ほど多くなかったのですが,どのようなトーンでどの条項を根拠にどのような対応を要求し,要求に応じない場合にはどうするという内容にするのかという点では悩みが多かった文書であり,結果的には「簡易な文書」ではなかったのですが,顧問先企業と協力して短いスパンで「抜き行為」を行う宅建業者の排除ができましたので結果的には良かったです。
本件のような顧問先企業名での文書作成については当事務所が顧問先に顧問料の範囲で行っている業務の1つです。顧問先以外の法人,個人事業所様からのスポットの依頼については対応しないことが多い業務であり,仮に対応する場合にもそれなりの金額(5万円~10万円)はいただくことになるかと思います。
顧問先企業であれば業務の実情がある程度わかっており,継続的な信頼関係が構築されていることが多いことから,文書の作成をすることが難しくないのですが,スポットで相談いただいている企業様の場合には業務内容の理解が十分でないこと,積み上げた信頼関係がないことからスポットでの対応は難しいことをご理解いただければ幸いです。
なお,代理人弁護士としての文書作成についても同様な事情があります。
そもそも一方的に送付する文書(例えば「消滅時効を援用するので請求額を支払いません」との内容の文書等)ではなく,その後の対応が必要になるものについて「文書作成」ではなく「交渉」としてお受けすることがほとんどです。この「交渉」業務については顧問先ではい企業様からスポットでお受けすることがありますが,顧問先企業からの依頼に基づく「交渉」業務の方が圧倒的に多い現状にあります。
さて,本件のように相談から解決までに4日というのは,かなりのレアケースですが,
初動の速さが案件の解決までのスピードに影響を与えるという実例ではないかと思います。
困った問題が生じたときにすぐに相談できること,相談してからの迅速な対応が期待できること,このことによって悩み事,トラブルをご自身だけで抱えている状態から抜けられることを考えると顧問弁護士を依頼して,いざというときの安心材料,問題が生じた場合の
心の拠り所にしていただくことには価値があると考えます。「悩み事」「トラブル」を抱えている時間,その間の心理的な負担も目に見えないコストですから。
ということで,顧問弁護士を選択する際に当事務所を選択肢の1つとしてご検討いただけると幸いです。
文責 弁護士 濵田 諭