製造業｜売買代金金額回収に関する顧問弁護士活用事例
本来，現金払いで支払ってもらう商品を，顔見知りの相手方（苗字と携帯電話番号しかしらない）に代金をもらわずに渡してしまった後に相手方の住所と氏名を特定し，代金の支払いを求める文書を代理人名で送付して売買代金全額を回収した事例
概要
企業の業種
住宅資材の販売，製材加工業 株式会社
相談内容
苗字と携帯電話番号氏からわからないお客様に代金（２０万円弱）をもらわずに製品を渡してしまったが，携帯電話番号がつながらなくなった。このお客様から未払い代金を回収したい。
解決方法
携帯電話番号から弁護士会照会をかけて相手方の住所を特定して売買代金の支払いを求める通知書を内容証明郵便で発送し，指定した送金期限までに相手方から売買代金の全額が指定預金口座に送金されたことから全額の回収という形で解決した。
解決までの期間
依頼を受けてから全額回収による解決までに２か月半
事案と結果
相手方の苗字と携帯電話番号しかわからず，かつ携帯電話番号にかけても相手方が出ないという文書の送付での初動ができない状態からスタートした案件です。
弁護士会照会と職務上請求を駆使して相手方の住所を特定して，売買代金を請求する文書を送って，代金全額が回収できたことになります。
事案の詳細
携帯電話会社によっては弁護士会を通じて照会（携帯電話番号についての契約者や住所等について回答を求めるものです）に応じないところがあり，本件は幸い弁護士会照会に応じる会社であったことから弁護士会照会をかけるところからスタートしました。
最初の照会で別の携帯電話会社に契約が移行していることが確認できたことから移行先の携帯電話会社に再度，弁護士会照会をかけました。
その結果，相手方と同じ苗字の人が契約者であることが判明したのですが，この人と相手方の関係がわからなかったことから，契約者の住民票（本籍あり）を職務上請求（弁護士業務に必要な場合に自治体から住民票や戸籍を取り寄せる手続）で入手し，その後に契約者の戸籍謄本を入手しました。
この段階でも相手方が出てこなかったことから契約者の改製原戸籍を職務上請求で入手してようやく相手方が戸籍に現れました。
そこから相手方の戸籍附票を職務上請求で入手し，ようやく相手方の住所が特定できました。
弁護士の対応とアドバイス
相談の段階から相手方の特定を携帯電話会社への弁護士会照会で行うこと，その結果によっては交渉自体が進まない可能性をご説明して交渉案件として受任しました。
そして弁護士会照会をかけたものの契約者が契約先会社を変更していたり，携帯電話の契約者とその利用者である契約者をつなげるための住民票，戸籍の調査についてかなり時間がかかった案件です（解決全体にかけた時間のうち相手方の特定にかけた時間の占める割合が大きいという意味です）。
特定した後の通知書の内容証明郵便による発送，到達の確認，通知書を受けての入金までは約２週間くらいしかかかっていませんので，相手方は，もしかしたら売買代金を支払う意思が全くない方ではなかったかもしれません。
売買代金について現金での受領をせずに売掛金にする業種の方が多いと思いますが，本件は日常の債権管理の重要性を再認識させられる案件でした。
本件のような少額の債権回収については当事務所が顧問先に顧問料の範囲で行っている業務の１つです。顧問先以外の法人，個人事業所様からのスポットの依頼をお願いされる場合には回収希望額（本件だと２０万円弱が回収希望額）よりも同程度以上（少なくとも２０万円以上）の費用をいただかないとケースが多いです。金額の多い少ないに関わらず，業務としての負担にそれほど違いがなく，最低限の費用をいただく必要があるからです。
スポット案件として費用対効果が微妙なのに弁護士を立てる，費用対効果が見合わないから泣き寝入りするという対応もあるのかもしれませんが，本件のように代理人名で通知書を送付しただけで請求額を支払う法人，個人も少なくない現状があります。
かかる現状を踏まえると会社が顧問を依頼し，顧問弁護士に顧問業務の範囲として出来ることを依頼し，顧問業務を超えて費用がかかる場合（民事訴訟を提起して回収を図る場合等）に費用対効果を考えてどこまで時間と費用をかけるかを検討するというのが合理的ではないかと思います。顧問弁護士を選択する際に当事務所を選択肢の１つとしてご検討いただけると幸いです。
文責 弁護士 濵田 諭
