欠勤の多い社員を解雇できる?適切な対処方法について弁護士が解説

今回は問題社員の1類型である欠勤の多い問題社員への対処方法について弁護士の立場からお話ししていこうと思います。
 お話しする項目は以下のとおりです。
1 欠勤の多い問題社員を放置するリスク
2 欠勤の多い問題社員への対応方法
3 欠勤の多い社員を解雇できるか
4 欠勤の多い問題社員対応に関して弁護士に相談するメリット
6 当事務所がサポートできること

それでは早速内容に入っていきましょう。

1 欠勤の多い問題社員を放置するリスク

欠勤の多い問題社員は比較的よくいるタイプの問題社員です。この手の社員の中には自分は欠勤が多くても会社に貢献しているから問題がないという認識を有している人もいますが,自分の能力を適切に評価できていないからこのような認識を有しているケースが多く,ローパフォーマーの一類型と言えるかもしれません。根拠のない自己評価の高さは能力のなさを表す特徴の1つです。
さて,このタイプの問題社員を放置するリスクですが

(1)周りの社員の負担

欠勤の多い社員が一人いるとその社員が行う業務を他の社員でカバーする場面が増えます。そうすると本来の業務にかける時間が短くなる社員が出てくるわけであり,この社員には当然ですが負担がかかります。

(2)組織としての生産性の低下

欠勤の多い社員がいると欠勤するかもしれない社員をどのようにフォローするかを会社で検討する必要があります。実際に周りの社員で欠勤社員をフォローするとなるとフォローする社員が本来の業務に注力することができなくなり,その日に終わるはずであった業務が翌日以降に終わることになったり,お客様へのサポートやサービスが十分にできなくなったりします。このことは短期的にみた生産性の低下だけではなく,長期的には会社の業績の低下といったレベルでの組織としての生産性の低下にもつながる可能性があります。

(3)他の社員の勤務態度の悪化や優秀な社員の離職

欠勤が多い問題社員を放置しておくとそれをフォローする周りの優秀な社員にはどうして自分が後始末をさせられているのだという不満が生じます。欠勤が多くてもまじめに出勤しても評価が変わらないのであればまじめに出勤するのが馬鹿らしくなり,欠勤が多くなる社員が出てくる可能性もあります。
このような他の社員の勤務態度の悪化,それをフォローする優秀な社員に不満が生じること,その結果,優秀な社員は離職し,残った社員は勤務態度が悪化した社員のみという最悪な結論につながる可能性すらあるのです。

2 欠勤の多い問題社員への対応方法

所定労働日に所定労働時間の労務を提供すること(「働くこと」)は労働者の最低限の義務ですし,この義務を果たせないということは労働契約(雇用契約)の不履行と評価できます。
働いている質以前の問題で,欠勤が多いということは労働者の勤務態度の不良を示すものといってよいでしょう。
遅刻や欠勤は働くのが「人」である以上,避けられませんが「欠勤が多すぎる」と評価されるような社員,無断欠勤をするような社員の放置は前述の問題点を引きおこしますので対処が必要です。なお,無断欠勤とは,会社に「無断」すなわち「連絡しないで」欠勤することに限られず,届出をしても許可が得られない場合や,欠勤に理由がない場合,すなわち,正当な理由のない欠勤もこれにあたるとした裁判例もあり(福岡高判昭55・4・15,
東京地判昭56・12.24),無断欠勤と評価できる場合が多いことも付け加えておきます。

 

さて話をもとにもどしましょう。
まず欠勤が多い社員については,それが無断欠勤と評価されるものであるのかを判断し無断欠勤が生じている場合には注意・指導を行うべきでしょう。この注意・指導は書面の形で行い,問題点の指摘を書面で行い,それに対して社員が反省しているのかどうか,無断欠勤を今後は行わないという旨の約束を書面でさせるのが良いと考えます。
欠勤が多い社員のうち心身の健康を損ねていることが原因で欠勤が増えている場合には休職扱いにしたり,その間に傷病手当金が支給されるように手続を進めるのが良いと思います。
なお欠勤が多いだけではなく無断欠勤が多い社員について注意・指導を行ったにも関わらず無断欠勤を繰り返すような場合には懲戒処分を下すことを検討すべきでしょう。

3 欠勤の多い社員を解雇できるか

欠勤が多いにとどまらず,無断欠勤が多く,かつそれに対して注意・指導したにも関わらず無断欠勤を繰り返す社員についてもいきなり解雇をしてはいけません。解雇権の濫用として不当解雇と評価されるのがほぼ確実だからです。
無断欠勤であるのを確認し,注意・指導を行い,今後は無断欠勤をしない旨を社員に文書で約束させること,ここがスタートラインです。
ここまで行ったにも関わらず無断欠勤を繰り返す社員については,無断欠勤の事実が単なる債務不履行を超えて企業法秩序に違反したと評価されることが可能であるために懲戒処分を下すことを検討することになります。
懲戒処分を下す前に無断欠勤を繰り返すと懲戒処分を下すことになりますよという警告を文書で行い,それにも関わらず無断欠勤を行った場合に最初の懲戒処分を下すというのが合理的だと思います。


そして懲戒処分を下す際には最も軽い処分(けん責や戒告)から初めて,その処分を下し改善の機会を与えても無断欠勤を繰り返すようであれば,より重い懲戒処分を下すことになります。
改善指導を行う→改まらない→懲戒処分の警告→改まらない→軽い懲戒処分→改まらない→重い懲戒処分→改まらない→解雇を含めた検討というイメージでよいかと思います。
欠勤が多い社員をいきなり解雇もできないし,無断欠勤が多い社員についても段階を踏んで最後に解雇を検討という流れになるということですね。


なお,解雇を検討するまでのプロセスで懲戒処分の警告の前段階等で適宜,退職勧奨を行い退職の方向で社員が検討するように勧めていくのが良いと思います。
ローパフォーマーの話でも触れましたが,社員からの退職で処理するのがその後の紛争の発生防止につながりますし紛争が発生した場合の対処が用意だからです。

4 問題社員対応に関して弁護士に相談するメリット

問題社員対応のうち欠勤の多い社員への対応方法について弁護士に相談するメリットは「無断」欠勤かどうかの事実確認をどうするのか,無断欠勤であると評価できた場合に社員に対してどのような対応をするのかについて適切な助言が得られることです。
無断欠勤を繰り返していると評価できた社員に対して文書でどのような注意・指導を行うのか,どのような反省を文書で残すのか,それにも関わらず無断欠勤をする社員に対してどのように懲戒処分の可能性を警告するのか,警告にも関わらず無断欠勤をする社員にどのような懲戒処分を下すのか,このようなプロセスのどの段階で退職勧奨を行うのがよいのかなど弁護士に相談した方が良い場面は多くあります。


このような相談に対して適切な回答ができるのは労務問題を日常的に扱っている弁護士だけです。
適切な助言を受けて適切な対応をし,問題社員の勤務態度の改善や改善しない場合の雇用契約の解消に向けて何をすべきかを理解することができること,これが弁護士に相談するメリットです。

5 当事務所がサポートできること

当事務所では欠勤の多い社員を含む問題社員への対応について多くの法人の顧問業務を通じて日常的にアドバイスをし,不幸にして民事訴訟等の法的紛争に発展した場合の案件対応をしております。
スポットでの相談も受け付けておりますし,問題社員対応についてすぐに電話やメールで相談したい,困ったときにはすぐに相談できる顧問弁護士を信頼できる弁護士に依頼したいというご希望がありましたら気軽にお問合せいただけると幸いです。

当事務所では会社の規模や社員数,希望される業務の内容等に応じた顧問プランを準備しております。悩みを抱えている時間も目に見えないコストです。問題社員対応はもちろん労使関係のお悩み,取引先との契約,売掛金の回収など弁護士に相談すること,すぐに相談できる顧問弁護士がいることの安心感には顧問料をはるかに上回る価値があることを実感していただけると思います。

 

 

 

 

 

 

文責  弁護士 浜田 諭

 

 

 

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