逆パワハラとは?事例や具体的な対処方法について労務管理・労使紛争に詳しい弁護士が解説
パワーハラスメント(パワハラ)といえば「上司から部下へ」行われるものが一般的ですが、近年、部下から上司に対して行われる「逆パワハラ(逆パワーハラスメント)」に関するご相談が中小企業の経営者様や人事担当者様から急速に増えています。
部下からの行き過ぎた言動や反抗的な態度によって上司がメンタルヘルス不調に追い込まれたり、職場全体の業務に支障が出たりするケースも少なくありません。
本記事では、現在100社以上の中小企業で顧問弁護士を務め、数多くの労使紛争・訴訟対応を解決に導いてきたキャリア約20年の弁護士が、逆パワハラの概要から具体例、会社側の適切な対処方法および予防策を分かりやすく解説します。
今回解説する内容は以下のとおりです。
1 逆パワハラとは
2 逆パワハラが起こる背景
3 逆パワハラの具体例
4 逆パワハラへの対応
5 逆パワハラの予防策
6 逆パワハラについて弁護士に相談するメリット
7 当事務所のサポート内容
1 逆パワハラとは
S総務部長
「最近、当社において部下から上司への当たりがきつくて精神的に参っているというケースが見受けられるようになったのですが、これが部下から上司へのパワハラとされることはないですよね?」
濵田弁護士
「実はパワハラは上司から部下に行われるものに限らず優越的な関係を背景に行われればパワハラと評価される余地があり、例えば慣れない部署に配転された上司がベテラン社員から人格を否定されるような言動をされた場合もパワハラを受けたと評価できることがあるんですよ。わかりやすさのために逆パワハラと定義して説明していきましょう。」
「逆パワハラ」とは、部下や後輩が、職務上の知識や人間関係などの「優位性」を背景に、上司や先輩に対して業務上の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える行為を指します。
厚生労働省の指針におけるパワハラの定義には「優越的な関係を背景とした言動」が含まれますが、この「優越的な関係」は必ずしも役職上の上下関係だけに限定されません。
以下のような場合も「優位性」が存在すると判断されます。
・専門的知識・ITスキルの優位性:部下しか扱えない業務やシステムがある
・集団的・人間関係の優位性:同僚や部下同士で結託し、上司を孤立させている
・ハラスメント知識の偏重:上司の適正な指導に対して「それパワハラです」と過剰に主張する(いわゆる「ハラ・ハラ」)
2 逆パワハラが起こる背景
S総務部長
「逆パワハラとはどのようなものかは理解できたのですが、どうして逆パワハラが起きるのでしょうか?」
濵田弁護士
「逆パワハラが起こる理由は様々です。その中でもパワハラ防止法(労働施策総合推進法 中小企業については2022年4月から義務化)の施行に伴い自分の言動がパワハラにならないのかを過剰に気にする管理職が増えていること、その結果、必要な指導ができなくなるだけではなく、部下が上司に対して必要以上に強い態度に出ることや本来はパワハラに当たらない業務上の指導をパワハラであると主張し、そのことによってますます管理職が委縮するといった構図が多く見受けられるようになった気がします。」
なぜ中小企業の現場で逆パワハラが発生するのでしょうか。主な背景には以下の要素が挙げられます。
(1)「ハラスメント」意識の高まりと誤解
パワハラ防止法の施行等に伴い意識が高まった一方で、「業務上の必要な指示・指導」までもパワハラだと主張する(主張すれば守られると誤認する)部下が増加しています。
(2)上司側の「パワハラと言われることへの恐れ」
部下に指導したことで「パワハラ上司」として会社に通報されることを恐れ、上司が強い態度に出られず、毅然とした指導を躊躇してしまう状況が生じています。
(3)IT・専門スキルなどの逆転構造
デジタル化の推進や業務の専門化に伴い、現場の若手・中堅社員の方がシステムや実務に詳しく、上司が業務上のコントロールを失いやすくなっています。
(4)人手不足と採用難
人員余裕がない中小企業では、特定の部下に頼らざるを得ず、注意・指導すると「辞められたら困る」という心理が働き、野放しになりやすい構造があります。
3 逆パワハラの具体例
S総務部長
「逆パワハラにはどのようなものがあるのでしょうか。具体例を教えていただけると助かります。」
濵田弁護士
「上司からの業務上の指導を拒否・無視したり、上司からの指導に対してパワハラと主張したり他の部下と結託して職場において上司を孤立化させるといった言動が逆パワハラと評価できる可能性のあるものだと思います。」
現場でよく見られる逆パワハラの具体例には、以下のようなケースがあります。
①適正な業務指示・命令の拒否・無視
正当な理由なく上司からの業務指示を拒否したり、指示に対してあからさまに無視・不満な態度を取り続ける。
②過剰な「パワハラ」主張(ハラスメント・ハラスメント)
遅刻や業務上のミスに対する注意・指導に対して、「パワハラだ」「訴えてやる」「人事や外部機関に通報する」と過剰に脅す。
③集団での上司の無視・孤立化
職場内で部下同士が結託し、上司の発言を無視したり、必要な報連相(報告・連絡・相談)を行わずに放置する。
④SNSや社内チャット等での誹謗中傷・集団での嫌がらせ
社内チャットやSNS、第三者の目の前で、上司の能力や人格を否定するような言動・暴言を書き込んだり発言したりする。
4 逆パワハラへの対応
S総務部長
「会社で逆パワハラが疑われる事態が発生した場合にはどのように対処すればよいのでしょうか。」
濵田弁護士
「逆パワハラについて上司からの相談が発覚のきっかけになることが多いと思いますのでまずは相談窓口において上司からの相談内容を聞き取ってそこをスタートにして事実関係を客観的な証拠の収集や関係者からの聞き取りによって調査をして逆パワハラであると評価できればパワハラを行っている部下に対して指導や注意、悪質な場合には懲戒処分を下すことも検討するという流れになります。仮に逆パワハラとまでは評価できない場合にも部下に対する指導・注意が必要なケースも多いと思います。
逆パワハラが発生した際、会社側が放置したり「当事者同士の対応」に委ねたりすることは事態を悪化させます。会社として以下の手順で適切に対応する必要があります。
(1)相談窓口の適切な対応と事実関係の調査
被害を受けた上司からの相談を真摯に受け止め、公平な立場から当事者および周囲の従業員へのヒアリングを行います。
(2)客観的証拠の収集
メール、社内チャット、録音データの保全
業務指示書や日報、第三者の目撃証言の整理、「パワハラだ」と主張された指導内容が適正であったかの検証
(3)調査結果を踏まえてパワハラがあったかどうか、服務規律違反があったかどうかの評価
部下の行為がパワハラであるかどうか,パワハラと評価できないとしても就業規則上の服務規律に違反したと思われる行為があったかどうかについて調査結果を踏まえて判定します。
(4)行為者(部下)への指導・警告
評価結果に基づき、指示不履行や暴言がどう評価されたのか(パワハラと評価された場合にはその旨を、パワハラとまでは評価できないまでも服務規律違反があったと評価された場合にはその旨を)を明確に伝え、改善を求めます。
(4)毅然とした人事処分・懲戒処分等
注意・指導に従わない場合は、就業規則に基づき戒告・減給・出勤停止・懲戒解雇などの懲戒処分を下すことを検討します。「部下だから処分できない」という姿勢を見せないことが重要です。懲戒処分のみならず部下についての配置転換も検討すべきケースが多いと思います。
5 逆パワハラの予防策
S総務部長
「逆パワハラが社内で生じないように予防策をとれればと考えているのですが、具体的に教えていただいてよろしいでしょうか。」
濵田弁護士
「パワハラについて正確な知識を持っていないことが管理職は委縮、部下の場合は増長につながっている部分があると思います。適切な指導とパワハラの線引きについて会社内で周知することが必要です。管理職向けのサポート体制の構築も重要ですし管理職向けにハラスメント研修を行う場合にはハラスメントをしないようにとの視点だけではなく、部下等からハラスメントを受けたら相談するようにとの視点も入れて行うのが適切でしょう。」
逆パワハラを防ぐためには、会社全体の管理体制とハラスメントに対する共通認識の更新が必要です。
(1)「適正な指導」と「ハラスメント」の基準の明確化
何がパワハラにあたり、何が業務上の正当な指示・指導(就業規則上の義務)であるかを全社的に周知・教育します。
(2)就業規則・ハラスメント規定の見直し
「部下から上司への過度な言動や業務阻害行為も懲戒対象となる」旨を規程上に明確に盛り込むことも選択肢の1つです。
(3)管理職・上司へのサポート体制の構築
管理職を孤立させないよう、適切な指導方法に関する研修を行うとともに、問題のある部下への対応は会社(人事・経営陣)が一体となってサポートする体制を作ります。
(4)業務の属人化の解消
特定の社員しか対応できない業務(ブラックボックス化)を無くし、業務マニュアル化や共有化を進めます。
6 逆パワハラについて弁護士に相談するメリット
S総務部長
「逆パワハラについて弁護士に相談するメリットがあれば教えてください。」
濵田弁護士
「逆パワハラと思われる事態が生じたときにこれからどのような調査をしていくのかの助言が得られますし調査済みの場合には調査した結果を踏まえてパワハラ、服務規律違反と評価できるのかの正確なアドバイスが得られます。そしてその評価を踏まえて会社がどのように対処すべきかについても知見を得ることが可能です。」
部下からの逆パワハラ問題は、適切な対処をしないと逆パワハラがなかったかどうかを調査するプロセスで会社が部下に行ったことがパワハラだと主張されて法的な請求をされるリスクや適切な対処をしないことで上司が精神的に参ってしまって上司から職場環境配慮義務違反等を根拠として法的な請求を受けるリスクがありますので、初動から法的な観点での弁護士からの助言を受けながら進めることが不可欠です。
弁護士に相談するメリットは以下のとおりです。
① 事実関係調査の助言
逆パワハラが疑われる事態発生を受けて、これからどのような調査をすべきかの助言が得られます。
② 「正当な指導」か「パワハラ」かの客観的法判断
調査の結果判明した上司の指導内容や部下の言動を法的に分析し、それが正当な指導かパワハラか、服務規律違反があるかどうかを客観的に見極めた助言が得られます。
③ 懲戒処分・指導プロセスの適法性サポート
評価を踏まえて部下側から「不当な懲戒処分」「不当解雇」として訴えられるリスクを未然に防ぐため、適切な指導方法や懲戒処分までの進め方のサポートを受けることができます。
④ 労使交渉や労働審判・訴訟への迅速な対応
部下側が弁護士を立てて交渉をしてきた場合、労働組合に加入して団体交渉を求めてきた場合、労働審判を申し立てたり民事訴訟を提起してきた場合でも、会社側の代理人として迅速かつ適切な交渉・手続対応を行います。
7 当事務所のサポート内容
S総務部長
「逆パワハラ問題など、みなみ総合法律事務所ではどのようなサポートをしていただけるのでしょうか。」
濵田弁護士
「逆パワハラ問題に限らず、ハラスメント問題が発生した際にどのような事実を調査すべきか、調査結果をどのように評価すべきか、評価した結果、どのように対応すべきかについて助言を行っております。現在ではスポットでの相談を受けるケースはほとんどなくなり顧問業務として継続的に会社からの相談を受ける中でハラスメント問題についても、このようなサポートをさせていただいているというのが実情です。」
当事務所は多くの会社の顧問業務を日常的に行っており、その中で逆ハラスメントを含めてパワハラ相談があった場合の対応、パワハラの申告があった際の調査方法、上司や部下の言動がパワハラと評価できるかどうか等について相談を受けることが少なくありません。
パワハラ問題を抱えている会社は多かれ少なかれ職場環境が悪化しますし、多くの離職者を出す潜在的なリスクを抱えていると思います。このような相談への対応を日常的に顧問業務の範囲内で行っている次第です。
日頃から顧問業務としてハラスメント問題を含む色々な相談に乗っていると会社の内情や人間関係がわかりますし、適切な対応を指示しやすくなると考えております。
弁護士は紛争が生じてからようやく相談するところではなく、日常の中で困ったことがあればすぐに相談して悩みから解消されるのが最も合理的であり、この点については逆パワハラ問題に限らず、どのような法律問題についても言えることだと思います。
日頃から困ったことがあればすぐに弁護士に相談できるようにするために当事務所との顧問契約を検討されたい会社経営者の皆様、法務担当者の皆様は遠慮なくお問い合わせください。
文責 弁護士 濵田 諭
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