【参加レポート】日弁連主催の不祥事発生時の危機管理セミナーに参加して
弁護士の柏田笙磨です。
2026年7月8日、日本弁護士連合会主催の「2026年度 ESGセミナー 第1回」にZoomウェビナーにて参加いたしました。テーマは「不祥事発生時の危機管理とステークホルダー対応」です。地方都市である宮崎にいながらにして、危機管理法務の最前線における議論にリアルタイムで触れられるのは、実務家として非常に有意義な時間でした。
本稿では、セミナーで共有された有事対応の実務的なポイントについて、法律家の視点も交えて解説いたします。
1 説明責任の核心は「3つの問い」に対する徹底した調査
プロアクト法律事務所の竹内朗弁護士による基調講演では、企業が果たすべき不祥事対応の原則と「説明責任」の構造が明確に示されました。
不祥事報道に接したステークホルダーが企業に求める説明は、極めて論理的であり、以下の3点に集約されます。
- 事実関係:何が起きたのか?
- 原因究明:なぜ起きたのか?
- 再発防止:どうしたら二度と起きないのか?
我々弁護士が裁判実務や社内調査等に関与する際も、まずは客観的証拠に基づく事実認定に固執しますが、それは正確な事実関係の把握なしには、その後の原因究明も再発防止策も砂上の楼閣と化してしまうからです。
2 情報開示における迅速性と正確性のジレンマ
実務上、経営陣が最も判断に迷うのが対外公表のタイミングです。「正確な事実が確認できていない段階で公表すると混乱を招く」と危惧し、開示に後ろ向きになるケースが散見されます。しかし、経済産業省のガイドライン等に照らせば、社会的観点から「迅速な第一報」を優先させるのが現代のクライシスマネジメントの定石です。正確性を期すあまり公表が遅れると、社会からは「隠蔽」と評価され、企業のレピュテーション(社会的評価)の致命的な毀損を招きかねません。初期段階では判明している事実関係の範囲で迅速に説明し、後日第二報、第三報と調査の進捗を報告する姿勢が求められます。
例えば、第三者委員会の報告書については、クォーター(四半期)の観点から、「3か月以内」が目安とされる旨の話があり、いかに迅速に対応するかが勝負となります。
3 外部の厳しい目:ガバナンス改革と第三者委員会の活用
パネルディスカッションでは、機関投資家やメディアによる厳しい監視の目が浮き彫りになりました。
経済ジャーナリストの加藤裕則氏からは、昨今の記者会見は、フジテレビ問題前後で大きく様変わりし、挙手する記者全員に質問させるため、3〜4時間に及ぶケースが当たり前になっているとの指摘がありました。こうした環境下では、不祥事に関与した可能性のある身内によるセルフ調査では社会的信用を得ることは不可能です。社外役員が率先して自浄作用を発揮し、事案によっては日弁連のガイドラインに準拠した独立性・中立性のある「第三者委員会」を設置するなど、透明性の担保が不可欠となります。
超長期で株式を保有するパッシブ運用の投資家は、不祥事の背景に「企業体質や風土に根深い問題」が潜んでいないかを強く懸念しています。そのため、社外役員を通じた抜本的なコーポレートガバナンスの改革を求めています。
4 結語-法律家としての自戒を込めて
本セミナーを通じて特に印象に残ったのは、不祥事においてステークホルダーが企業に問うているのは「法的責任」の有無ではなく、「経営責任・社会的責任」であるという事実です。
私たち法律家は、つい「法律上適法か否か」「損害賠償義務を負うか」という防衛的な視点に偏りがちですが、「法的責任はない」と強弁するだけの対応はかえって社会の反発を招き、クライアントの真の企業価値を守ることはできないのだと、自戒も込めて痛感させられました。
また、顧問弁護士として対応する場合、執行機関(取締役)や目の前の損害賠償請求訴訟の防御だけではなく、企業は「公器」であるとの考え方からステークホルダーを含めた巨視的な観点にも留意し(当該観点からは防御よりも被害者救済を最優先すべきことが多いというのが竹内弁護士の見解であると理解し、そうであれば私の倫理観とも合致します。)、企業価値を中長期的に維持・回復するための最善策を考えるべきだと感じました。
また、上場企業の不祥事対応の原則(プリンシプル)は、ステークホルダーの構造にほどんど差はない(株主くらい)ことから、中小企業においても通用する旨の解説は説得力がありました。
機関投資家の方からは、不祥事は企業活動上避けられないリスクであり、起きること自体は仕方ない、むしろその事後対応で、よりステークホルダーからの信頼を強固にできるかどうかが問われていることを改めて忠告されていました。
宮崎県内の企業様におかれましても、不測の事態に備えたコンプライアンス体制の構築や、有事の際の初動対応に関するご不安がございましたら、当事務所までご相談ください。法的リスクの極小化と、社会的信用の保護という両輪の視点から、実践的なサポートを提供いたします。
弁護士法人みなみ総合法律事務所
代表弁護士 柏田 笙磨
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