休職・復職を繰り返す社員との雇用契約は解消できる?適切な対応方法や休職・復職の基礎知識について企業法務に詳しい弁護士が解説
近年、メンタルヘルス不調などを理由に「休職と復職を繰り返す」社員への対応に頭を悩ませる企業が増加しています。 「復職したと思ったら、数週間でまた欠勤が始まり休職してしまう……」 こうした事態が繰り返されると、現場の業務負担は増大し、周囲の社員のモチベーション低下や連鎖的な休職を招くリスクもあります。
本記事では、使用者側の代理人として多くの労使紛争を解決してきた弁護士の視点から、休職・復職を繰り返す社員への適法かつ実務的な対応策等について解説します。
1. 休職・復職制度とは
S総務部長
「休職・復職の制度について就業規則にあることは知っているのですが上手く活用できていません。この制度についてどのようなものであるかを教えてください。」
濵田弁護士
「休職制度は業務外でのケガや病気によって働くことができない労働者について雇用契約は残したまま一定の期間は働かないので治療に専念させるというもので復職制度は一定の期間経過後に回復したこと、働ける状態になったことを確認して職場復帰させる制度です。」
そもそも休職制度とは、業務外の疾病(私傷病)などの理由により労働を提供できない労働者に対し、一定期間労働義務を免除し、労働契約を維持したまま治療に専念させる制度です。
法律上、会社には休職制度を設ける義務はありません(労働基準法に定めはありません)。しかし、多くの企業では「就業規則」に任意で休職規定を設けています。 休職期間中に傷病が治癒すれば「復職」となり、期間が満了しても治癒しなければ退職(または解雇)となるのが一般的な仕組みです。
2. 休職・復職制度に関するよくあるトラブル
S総務部長
「休職・復職をめぐってどのようなトラブルがあるのかを教えてください。」
濵田弁護士
「休職期間中の治療で回復しておらず十分に働けない状態なのに回復したとの医師の診断書を持ってきて復職を求めてくる社員、十分に回復していないのに復職したもののすぐに働けない状態になって再度休職してしまう社員への対応について相談を受けるケースが多いですね。」
休職・復職制度をめぐり、実務上は以下のようなトラブルが頻出します。
・「隠れ未治癒」での復職要請
休職期間の満了(=退職)を避けるために、医師の診断書(しばしば患者の「働きたい」という強い希望に沿って書かれたもの)を持参し、実際には働ける状態ではないのに復職を求めてくるケース。
・短期間での休職リピート
復職後、すぐに同じ(あるいは類似の)病状が悪化し、再び欠勤・休職状態に陥るケース。
・業務上のケガ(労災)か私傷病かの対立
本人は「仕事が原因のうつ病(労災)」と主張し、会社側は「私生活に起因する私傷病(休職制度の適用)」と判断することで、休職の取り扱いや給与補償をめぐり激しく対立するケース。
3. 休職・復職を繰り返す社員の解雇が難しい理由
S総務部長
「休職と復職を繰り返す社員について結局働けないわけなので解雇してしまえばよいと思うのですが、それではいけないんですか?」
濵田弁護士
「まず解雇については解雇権濫用法理が適用されますので有効な解雇をすることが非常に難しい現状があります。このことから解雇するという選択肢はとれないと考えてください。 また休職期間満了後に復職すると当初の休職期間はリセットされてしまうことが多く,復職後に働けなくなった後の休職期間満了時に再度、復職可能性を判断することになり、その都度に復職を認めてしまえば延々と休職・復職を繰り返す社員との雇用契約を解消できないことになってしまうといった問題があります。」
多くの経営者や人事担当者が「これだけ繰り返すなら解雇したい」と考えますが、法律上、安易な解雇は極めて高いリスクを伴います。主な理由は以下の2点です。
① 休職期間のリセットにより期間満了を迎えられない
多くの就業規則において、一度復職すると「休職期間がリセットされる」構造になっています。 たとえば、通算して数年間休職と復職を繰り返していても、その都度リセットされて「新たな休職」として処理されるため、いつまで経っても「休職期間満了による自然退職」の要件を満たせないという技術的な問題が生じます。
② 解雇権濫用法理によるハードルの高さ
日本の労働法において、解雇は「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です(労働契約法16条)。 労働者が「働きたい」と意思表示している場合、医師の診断書等で就労可能性が少しでも示されていると、会社側が「完全な労働能力の喪失」を証明することは容易ではありません。手続きを怠った拙速な解雇は、後に「解雇無効」と判断され、多額のバックペイ(遡及給与の支払い)を命じられる原因になります。
4. 休職期間満了による自然退職を成立させるには
S総務部長
「当社の就業規則には休職期間満了時に復職しない場合には自然退職と書いてあります。この満了による自然退職を成立させるにはどうしたらいいのでしょうか?」
濵田弁護士
「基本的には復職を安易に認めないということだと思います。主治医の診断書に復職可能と記載していたとしても復職可能性に疑問がある場合には産業医の診断を受けてもらってそれを踏まえて復職を判断することが重要になります。」
トラブルを回避しつつ、法的に安全な形で労働契約を終了させる(あるいは休職期間を満了させる)ためには、以下のステップを確実に踏む必要があります。
(1)復職可否の厳格な審査(産業医の面談など)
主治医の診断書を鵜呑みにせず、会社の指定医や産業医による受診・面談を義務付け、本当に「従来の業務を通常に行える状態まで回復しているか(治癒しているか)」を医学的・実務的観点から客観的に判断します。
(2)復職可否判断のプロセスの記録
面談記録、休職前の勤務評価、本人へのヒアリング内容などをすべて書面で残し、万が一裁判になった際にも「会社が尽くすべき安全配慮と慎重な検討を行って復職可能性を判断した証拠」を確保します。
(3)安易な「お試し出社(リハビリ出勤)」の取り扱いに注意
正式な復職ではない段階で安易に稼働させると、法律上の「復職(リセット)」とみなされるリスクがあります。就業規則上、リハビリ出勤中の位置づけや期間、給与の有無を明確に定義しておく必要があります。
5. 休職期間満了での自然退職を可能にするために企業が整備しておくべきこと
S総務部長
「これまでにきちんと休職制度を使っていなかったので当社はこれからどのようなしていけば休職期間満了での自然退職といった対応ができるようになるのでしょうか?」
濵田弁護士
「まずは就業規則の整備が必要です。休職・復職を繰り返す社員対策のために類似の傷病での休職の場合に休職期間を通算できるようにする、復職可能性を判断するプロセスを明記する、制度を作るだけではなく制度をきちんと運用していくことが重要となります。」
休職・復職をめぐるトラブルを未然に防ぐため、また発生時に会社が有利に対応できるようにするためには、何よりも「就業規則(休職・復職規定)」のアップグレードが不可欠です。
(1)通算規定(重複・累積規定)の整備
「復職後〇ヶ月以内に同一または類似の傷病により欠勤した場合は、前後の休職期間を通算する」という規定を設けます。これにより、短期間のリピートによる「期間リセット」を防ぎ、適正に休職期間を満了させることができます。
(2)復職決定権が「会社」にあることの明文化
「主治医の診断書が提出された場合であっても、最終的な復職の可否は、会社が指定する医師の診断および業務遂行能力を勘案して会社が決定する」旨を明記します。
(3)退職勧奨ステップの標準化
いきなり解雇や自然退職とするのではなく、面談を重ねて本人の状況に寄り添いつつ、「これ以上の就労継続が双方にとって望ましくないこと」を理解してもらい、合意退職へと導く(退職勧奨)ステップを社内プロセスとして確立しておきます。
6. 休職・復職を繰り返す社員に関して弁護士に依頼するメリット
S総務部長
「当社には顧問弁護士がおらず、これまで弁護士に相談したことや案件を依頼したことがありません。休職・復職を繰り返す社員への対応について弁護士に相談・依頼するメリットを教えてください。」
濵田弁護士
「弁護士に依頼することで現状を正確に把握して今後どのような対応をしていくのかの専門的な知見を得ることができますし、それを実践していく過程で生じた問題についても協議しながら進めていくことが可能です。休職にあたって休職命令を文書で出すときにその作成をしてもらうこと、社員との対応において会社での対応が難しい場合に代理人として窓口になってもらい会社の対応コストを減らすことができるケースもあります。」
人事担当者だけでこの問題に対処しようとすると、本人の感情的な反発や、精神医学的な専門知識の不足、そして労働法上の落とし穴により、事態が長期化・泥沼化しがちです。弁護士へ依頼・相談することには以下のメリットがあります。
(1)個別具体的な事案に応じたロードマップの策定
「この社員の場合、今どのステップを踏むべきか(産業医面談か、退職勧奨か、休職通算の適用か)」を法的な見通し(勝ち筋)をもとに立案できます。
(2)証拠収集・書面作成の徹底
のちの紛争を見据え、本人に送付する通知書、復職面談の議事録、合意書などの文面を、法的な不備がないようきちんと作成します。
(3)代理人としての交渉(窓口の引き受け)
本人やその家族、あるいは相手方弁護士・労働組合(ユニオン)からの連絡窓口を弁護士が一手に引き受けることで、社内担当者の精神的負担を激減させ、通常業務に集中させることができます。
7. 当事務所のサポート内容
S総務部長
「みなみ総合法律事務所ではどういったサポートをしていただけるのでしょうか。」
濵田弁護士
「当事務所は多くの企業・法人、社労士の先生方と顧問契約を締結して休職・復職問題を含む多くの労務に関する相談対応、案件対応を行い解決した実績があります。現在の就業規則の確認、就業規則の内容を踏まえて何ができるのかの助言や必要な文書の作成、必要に応じて会社の代理人としての交渉業務や紛争化した場合の代理人としての対応などをしております。現在では、ほとんどのサポートについてその会社と顧問契約を締結していただき、その顧問業務として対応させていただいております。」
当事務所では、これまで数多くの企業様から休職・復職に伴う労使紛争のご相談をお受けし、円満な解決や適法な退職処理をサポートしてまいりました。現在ではスポットの案件のご依頼ではなく顧問契約を締結していただき、その顧問業務として以下のような対応をさせていただいているところです。
・就業規則(休職規定)の法的な総点検・改訂
・復職可否プロセスにおけるリアルタイムな助言(産業医との連携方法など)
・問題発生時の退職勧奨・合意書作成サポート
・労働審判・訴訟対応
日頃から顧問業務として休職・復職に関わる問題を含めた色々な相談に乗っていると会社の内情や人間関係がわかりますし、適切な対応を指示しやすくなると考えております。
弁護士は紛争が生じてからようやく相談するところではなく、日常の中で困ったことがあればすぐに相談して悩みから解消されるのが最も合理的であり、この点については休職・復職問題に限らず、どのような法律問題についても言えることだと思います。
日頃から困ったことがあればすぐに弁護士に相談できるようにするために当事務所との顧問契約を検討されたい会社経営者の皆様、法務担当者の皆様は遠慮なくお問い合わせください。
文責 弁護士 濵田 諭
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