建設業における請負代金等の回収について
今回は建設業を経営する方からの相談で多い請負代金等の回収について弁護士の立場からお話ししていこうと思います。
お話しする項目は以下のとおりです。
1 建設業における請負代金等未払いについて
2 請負代金の未払い問題が発生する理由
- 契約書等の問題
(2)発注者の資金繰りの悪化
(3)工事内容や品質に関するトラブル
3 未払いが発生した場合の対処方法
4 弁護士に依頼すべき理由
5 当事務所に依頼するメリット
それでは早速内容に入っていきましょう!
1 建設業における請負代金未払いについて
一言で建設業といっても様々な業種が含まれていると思いますが,建設業を営んでいる会社経営者からの相談で多いのが請負代金の未払い問題です。もちろん従業員との労使関係のトラブルの相談も多いのですが,他業種と比較するときに相対的に多いと感じるのが
この請負代金未払い問題です。
また請負代金未払いに限らず請負代金について下請け業者から過剰に請求されているという元請け業者からの相談を受けることもありますが,請負代金をめぐるトラブルの解決に携わってきた弁護士として,このようなトラブルが発生する理由について思い当たるところがありますので次の項目で触れます。
2 請負代金の未払い問題が発生する理由
(1)契約書等の問題
建設業においては請負契約書を作成しない会社が少なくないイメージがあります。地方都市でそれなりに有名な中小企業(建設業)が契約書を作成していないという実例に触れたこともありますので,私が持っている,このイメージはあながち間違っていないと思います。
請負契約自体は諾成契約(当事者の意思表示の合致だけで成立する契約)ですので請負契約書自体がないから法的に問題とまではいえませんし,請負契約書を作成していなくても
注文書とそれに対応する注文請書の活用で書面による契約がされていれば契約の成立自体や基本的な契約条件(請負代金,納期等)については問題がないこともあります。
しかし請負契約においては天候不順による納期の遅れ,注文主側の希望による工事内容の変更といった契約締結時には予想しなかった理由による契約内容の変更が生じることが
多々あります。請負契約書を作成していないとこのような場合にどう対処すればよいのか
が明確ではありません。特に工事内容の変更が生じた場合に請負代金の積算内容が変わるわけで請負代金が変わるのが通常です。しかし,ここを当事者間の口頭でのやり取りで行っているケースが多く見られ,これが「工事内容についてどのような変更があったのか」「工事内容の変更に伴って工事代金が変わったのかどうか」「工事の納期が変わったのかどうか」
が不明確になり,これらの点をめぐるトラブルに発生するケースが多いです。
請負契約書を作成しておけば,これらも問題が全てカバーされるわけではありませんが,工事内容の変更,納期の変更などの事態が生じた場合にどのようなフローで行われるのかを明記しておくことで当事者間の予測可能性を担保し,後日の「言った,言わない」の不毛なトラブルを避けることができると思います。
- 発注者の資金繰りの悪化
発注者が工事を注文した後,元請け業者が一次下請けに仕事を依頼した後などに資金繰りの悪化などから請負代金の未払いを起こすこともあります。資金繰りの悪化が事業の破綻につながるレベルであれば破産→配当による回収ということになるのですが,事業の破綻にまでは至らないものの資金繰りが悪化しているという場合には「発注者」への信用不安
が生じていることになります。この場合には漫然と工事を進めているだけではだめであり,
一定の金員を追加で前払いしない場合には工事をしない等の対応が必要となります。工事を進めている間に資金繰りが徐々に悪化していく場合には,工事を進めれば進めるほど売掛金が多くなり,貸し倒れリスクがある金額も増えることになるからです。
(3)工事内容や品質に関するトラブル
受注業者が行った工事内容や品質に不満があることを理由に請負代金の支払いを拒む発注者は少なくありません。請負工事の内容や品質が請負契約の目的に適合しない場合には
履行の追完(追加工事等)を請求したり,請負代金の減額を請求したり,損害賠償を請求したり,請負契約自体を解除することができたりします。民法上のいわゆる契約不適合責任(
旧民法下での瑕疵担保責任)が問題となる場面です。
このような場面では,契約不適合を主張する側は契約不適合の状態を改善してもらうべく追完請求をする必要がありますし,主張された側は契約不適合の事実を争うか,契約不適合を指摘された点について追完を行った上で請負代金を約定通り請求するかの判断をすることになります。
最終的には契約の解除や損害賠償を請求するという形での解決を目指すケースも当然
あります。
3 未払いが発生した場合の対処方法
(1)未払いが発生している理由の確認
例えば発注者側の送金遅れ等によって請負代金の支払いが一部遅れているといった理由の場合には,早い段階で未払い状態が解消されることが想定されます。この場合には対処が
不調となりますが,事務処理上のミスではない場合には次の対応が必要となります。
(2)請負代金の文書での請求と工事中止の検討
請負代金が未払いのまま工事を継続すると売掛金が膨らんでいくことになりますので,
工事の中止を検討しつつ未払いの請負代金について文書で請求することをお勧めします。
この段階で内容証明郵便の形式での請求までは必要ないと思いますが,書留など送付したという記録が残る形式での文書の送付をお勧めします。文書を作成する際には,作成日付
を入れること,送付者(法人であれば法人の名称,代表者の氏名 例 株式会社〇〇 代表取締役××)と記載して法人印を捺印しましょう。また,未収の請負代金の請求する場合には支払期限を明記すること,支払先の預金口座を明記することを忘れてください。
支払期限までに支払いがなかった場合にはどうするのかも記載した方が良いでしょう。例えば「令和7年2月14日までに請求額全額の送金がない場合には工事を中止するとともに請負代金について支払いを請求する法的措置をとることを検討いたします。」といった感じです。
4 弁護士に依頼すべき理由
請負代金等の未収が生じている場合に会社から相手方に対して文書を送付するという対応でも初動としては構いませんが,請負代金の未払いを繰り返す場合(何回かに分けて請負代金を支払う内容になっているのに,毎回支払期限に遅れる等)や未払いの請負代金を
文書で請求したものの支払いがない場合等には弁護士に相談したり,交渉の代理を依頼したりすることをお勧めします。
代理人弁護士からの請求であることによって相手方(発注者)が支払わないと大事に
なると考えて支払う可能性が高くなるという心理的な効果があります。
また,作成する文書についてきちんとした法的な根拠を示して「何を」請求するのか,それに応じない場合には「どうするのか」を記載しないと文書によって発生させたい効果(例:請負契約の解除等)が生じない可能性があります。
さらに交渉段階はその後の裁判等の法的な手続きを見据えた前哨戦という面もあり,受注者が交渉段階において代理人弁護士を通じて,きちんとした文書を送っていたという誠実な交渉態度をとっていたという事実は裁判所の肯定的に評価される可能性が高いです。
このような観点からも弁護士に依頼する意味があります。
もちろん交渉が決裂して民事訴訟の提起等の裁判所を使った手続きをとる場合には,
弁護士を代理人に立てる必要性がより高いことは言うまでもありません。裁判等においては,きちんとした法的な主張ができない結果,本来であれば通ったはずの請求が通らなくなるリスクがより高くなるからです。
5 当事務所に依頼するメリット
当事務所は建設業を含む100社以上の顧問先からの相談やその依頼に基づく事件処理を日常的に行っており,交渉段階,交渉が決裂した場合の裁判等の法的手続きにおいても豊富な経験と実績を有しております。
また,顧問先以外の法人,個人事業主からのスポットでの相談や案件対応についても
行っております。建設業を営んでおられる会社,個人事業主の方からの相談や案件対応の
依頼も少なくありません。
それでは請負代金請求はもちろん,売掛金の請求を始めとする債権回収にお困りの
建設業を始めとする会社経営者,個人事業主の皆様,当事務所へのご相談,ご依頼を
検討されてはいかがでしょうか。
文責 弁護士 浜田 諭