福祉業|損害賠償請求に関する顧問弁護士活用事例
介護施設の入所者から預かった金員を着服したことを理由として刑事処分を受けた職員(施設管理者)に対して,この処分をきっかけにして行政から受けた処分によって被った営業損害等を損害賠償として請求する民事訴訟を提起して請求額全額(400万円弱)を回収した案件。
概要
業種
介護事業者 社会福祉法人
相談内容
施設管理者を任せていた職員が入所者から預かった金員を着服したとして刑事処分を受け,このことがきっかけで,介護施設が新規入居者受け入れ禁止の行政処分を受けて多額の営業損失,被害者に対する賠償によって損害を被ったので,この職員(不祥事発覚後に退職したので,正確には「元職員」)に対して損害賠償請求したい。
解決方法
法人が元職員の不祥事によって被った損害について賠償を求める民事訴訟を提起したところ元職員から賠償額全額を支払うとの回答があり,全額の賠償が得られたために訴えを取り下げる形で解決できた。
解決までの期間
3か月弱(なお,最初に不祥事の相談を受けてから解決までは1年以上かかっている。)
事案内容
事案と結果
相談内容に記載したとおりです。元従業員の不祥事によって行政処分を受け,それによって被った営業損失を主とする損害賠償を請求してそれを全額回収できた案件になります。
元従業員は不祥事の一部について刑事処分を受けており,この範囲では事実に争いがありませんでしたが,刑事処分を受けていない部分についても入所者から預かった金員を着服したことが疑われるケースであり,法人はこの部分についても入所者に弁償していたことからその額についても併せて元職員に損害賠償を請求しました。
この部分も含めた請求額全額の回収に成功したので良い結果になったと思います。
事案の詳細
元従業員が施設管理者の立場にあったこと,法人内の調査でも正確な着服額が判明せず法人の管理責任について行政から厳しい目が向けられており,より厳しい処分(営業停止等)が想定されたケースでした。結果的には数か月の新規入所者受け入れ停止という処分にとどまったことから営業損失はそれほど大きい額にはなりませんでしたが,複数の入所者やその家族から元職員に預けた金員を着服されたとの訴えがあり,その対応に労力・時間がかかったことから損害賠償によってカバーできない損失もあったことは否定できません。
また,法人の不祥事として法人名が公表される形での報道が一部報道機関よりされたことによって法人の社会的評価が下がったという面もありましたが,そのことによる営業損害(例:多数の退所者の発生等)が現実化しなかったのが不幸中の幸いでした。
弁護士の対応・アドバイス
本件は不祥事の発覚後に元職員が逮捕・起訴されて刑事処分を受けるのが先行し,その間は対行政,対被害者,被害者の家族との関係での対応に法人は追われていました。そして,これらについてどのように対応すべきかについて,法人の顧問弁護士として,法人から多くの相談を受けてきました。
その段階で法人と協議し,元職員に対する刑事処分が下され,行政処分の内容が確定した後に民事での損害賠償を求める民事訴訟を提起して解決を図るということで方針を決めて,この方針通りに対応しました。
元職員が民事訴訟における法人の請求内容について争うことも想定していましたが,訴状が元職員に送達されたタイミングで元職員から訴訟での法人の請求額全額を支払いますとの文書が当職(法人の代理人弁護士である私)の元に届いたことから送金先を指定する
文書を送りました。この文書を送付した後に当方の指定した送金先口座に元職員から,法人の請求額全額と同額の入金がありましたので全額が回収できたということで既に提起していた民事訴訟を取り下げる形で案件は解決したものです。
当事務所は介護事業を運営している多くの法人(社会福祉法人,株式会社)の顧問業務を
行っており,行政への対応,入所者への対応,職員への対応など数多くの相談を受け,個別の案件の解決に関わってきました。介護事業を営んでおられる法人の経営者の皆様,多くの経験とノウハウ,介護事業の実情への理解が深い当事務所への相談や顧問業務の依頼を検討されてはいかがでしょうか。