契約書の内容を変更するには?中小企業様必見!弁護士解説コラム

今回は契約書と覚書についての一般論,契約書の内容を覚書の作成で修正する場面等についてお話していこうと思います。

今回お話しする内容の項目は下記のとおりです。

1.覚書と契約書の違い

2.覚書と契約書の使い分け方

3.覚書の法的拘束力について

4.契約書の内容を変更する際の流れとポイント

 (1)内容変更についての合意

 (2)覚書の作成

 (3)収入印紙について

5.当事務所のサポート内容

6.まとめ

それでは早速内容に入っていきましょう。

1.覚書と契約書の違い

覚書は一般的に,当事者の間で取り決めた内容を忘れないように記載しておく文書やメモのことを指す用語です。

一方で契約書は,当事者間で契約を締結する際に作成される契約内容を表示する文書をさす用語となります。

また念書という文書もありますが,これは覚書や契約書と異なり,当事者の一方が相手方当事者に義務を負うことを示す文書であり,念書には義務を負うことを認める当事者の署名・捺印だけが行われるのが通常です。

 

2.覚書と契約書の使い分け方

実務の現実

覚書と契約書は一般的な定義に違いがあるのは先に述べたとおりなのですが、実務上は契約書で本来作成されるはずの文書が覚書として作成されていることもあり,実際には契約書と同じ性質のものとして取り扱われるケースも決して珍しくありません。

本来は法律の世界の方が用語の取り扱いに厳しく,覚書と契約書についても明確に区別されているという印象をお持ちの方が多いと思いますが,この2つについてはあまり区別されずに使われている実態があるということをご理解ください。

今までに「覚書」というタイトルの文書を持ってきて,これは契約書というタイトルの文書ではないので法的には有効ではないですよね?といった相談を複数回受けた記憶がありますが,それに対する私の答えは「覚書というタイトルであれ想定している契約の効果に向けられた意思表示が具体的かつ明確に示されていてそれが合致している場合には契約が成立していると評価されることがあります,文書のタイトルは本質的な問題ではありません。」でした。

これはそのような相談を私自身が受けることが少なくなった(ここ10年以上は,このような相談を受けていない気がしますが)現在でも変わりません。

 

「覚書」と「契約書」のあるべき使い分け方

(1)契約書を作成すべき場面

まず「契約書」ですが,当事者間で合意した契約内容に拘束力を持たせる必要がある場合です。相手方が契約に基づく行為をしないことによる不利益が大きい場合,契約に違反した場合に負担する責任(例えば損害賠償責任)を明記したり,そもそも契約によってどのような義務を相手方に負担するのか,どのような権利を有するのかを明記しておかないと契約の内容が当事者間で合意されていたとしても不誠実な当事者から反故にされるリスクがありますので契約書を作成することになります。コンビニでお弁当を買うときには契約書を作ったりしませんが,売主のお弁当を渡す義務と買主の代金を払う義務が同時に履行されるので不履行のリスクを考える必要がない売買(現実売買といいます)だからですね。

一方で不動産の売買や賃貸借の契約をするにあたって契約書を交わさないケースはほとんどないと思います。大きい財産の移動や管理を伴う契約にあたって契約書を交わさないのは大きい法的リスクにつながるからです。売買で言えば売主と買主の双方に,賃貸借契約であれば貸主と借主の双方に契約書を作成する意味があります。

後から「言った」「言わない」,「約束をした」「約束をしていない」といった不毛なやり取りが生じるのを避けるためにも契約書の作成が必要な場面があるということですね。

 

(2)覚書を作成する場面

実務上最も覚書を作成することが多い場面で,かつ覚書を作成すべき場面というのが事前に取り交わした契約書の内容を変更する場面です。契約期間の延長,契約で支払われる対価(売買代金や賃料等)の支払内容が変わる場合など既存の契約書に大きく手を入れる必要まではないが変更された内容について当事者間の合意内容を明確にしておく必要がある場面ですね。

本質的な契約内容に変更がないのに再度,契約書自体を再度作成するというのは手間ですし,覚書の作成でも足りるという考え方が実務上は多くの方に共有されていますし,私自身も覚書の作成を顧問先に依頼されることがあります。

 

3.覚書の法的拘束力について

覚書に法的拘束力があるかという問題ですが,ある場合とない場合があり,これはケースバイケースです。

先ほど述べた契約内容を修正する場面で覚書が作成される場面では修正される契約条項が明記されていることが多く,ベースとなる契約書が既に締結されているわけですから覚書の法的拘束力が否定されることは少ないと思います。

一方で本来は契約書が作成されるべき場面で覚書しか作成されていないという場面ではその名のとおりケースバイケースとしか言えないところです。覚書の記載内容や締結された経緯から見て,当事者に法的拘束力のある合意として扱う意思があったと認められれば法的拘束力があると評価されますし,当事者間にそのような意思があったと認められなければ法的拘束力はなかったと評価されます。

4.契約書の内容を変更する際の流れとポイント

内容変更についての合意

そもそも契約書について内容を変更する必要があるというのが双方当事者の共通認識でなければ契約内容の変更ができません。契約内容の変更が必要であると考えた当事者から変更が必要な部分を特定して,どのような変更が必要であるのかを相手方当事者に伝えて内容変更の合意が得られるかというのが最も重要です。

 

覚書の作成

契約書の内容を変更することについて合意が得られても具体的にどのような表現にするのか,覚書を作成する場合には,現契約書のどの部分についてどのような内容への変更する覚書とするのかを相手方当事者とやり取りをして確定させて合意できた場合に覚書を作成することになります。

タイトルは「覚書」というものである場合も「・・・についての覚書」という形で変更対象を明記する場合もありますね。例えば「消費税率変更に伴う賃料変更についての覚書」といったパターンです。

覚書は2通作成して2通ともに契約当事者双方が署名(記名)捺印し,完成した覚書を双方が1通ずつ保管するというのが通常ですね。

 

収入印紙について

覚書の法的拘束力が認められる場合(契約書と同等のの扱いになる)場合,そこに課税に関する事項が記載されている場合には印紙税が発生することになります。必要に応じて正しい金額の収入印紙を貼って消印をするのを忘れないようにしましょう。

なお,収入印紙の金額は合意内容や契約金額によって異なりますので,税理士の先生や国税庁のホームページで確認するようにしていただけると幸いです。

 

5.当事務所のサポート内容

契約書の作成や既存の契約書の修正,修正に際しての覚書の作成についても当事務所は業務として取り扱っておりますが,スポットの案件として受任するケースは少ないと思います。

一方,顧問業務として顧問先企業からの依頼で行うことは多いです。顧問先から契約書のチェックの依頼があり,チェックの結果,修正の必要があると助言し,その際に修正案を顧問先に提示するというのは日常の顧問業務ではよくあることです。

それを踏まえて顧問先が契約の相手方当事者に契約内容の修正依頼をして,それに応じていただける場合には覚書の作成に着手するというパターンが多く,この場合には顧問業務として当事務所(正確には顧問先を担当する顧問弁護士)へ覚書の作成依頼があります。これを受けて覚書を作成するという流れですね。

 

6.まとめ

契約書の作成や契約書のチェック,修正,修正に伴う覚書の作成というのは顧問弁護士として最もお役に立てる場面ではないかと思います。

今までは相手方企業から提示された契約書を内容もよくわからずに(相手方を信頼して)署名・捺印してきた企業様の中には,もしかしたら一方的に不利な契約内容を押し付けられてきたのではないか不安がある,少なくとも特に不利な条項が含まれていないかを弁護士に確認してもらった上で契約をしていきたいというところがあられると思います。

当事務所は顧問先企業様からの相談やご依頼に迅速なレスポンスをして,正確で無難な成果物をお届けすることをモットーとしておりますので,当社には顧問の税理士も社労士もいるけどそろそろ顧問弁護士を依頼する必要があるなぁとお考えの経営者の方は当事務所の顧問契約について気軽にお問い合わせください。

文責  弁護士 浜田 諭

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