問題社員の放置は危険!企業が抱えるリスクと対応すべき事項を解説

今回は会社において問題社員を放置することで生じるリスクについてお話していこうと思います。

今回お話しする内容の項目は下記のとおりです。

 

問題社員の特徴

問題社員の類型
1 類型化する視点
2 問題行動が起きる時点
3 問題を起こす場面
4 問題の種類

問題社員を放置することが企業へ与えるリスク
1 業務上の能力等を欠くタイプの問題社員
2 ハラスメントを行う社員
3 不正行為を行う社員
4 私生活上の非違行為を行う社員

問題社員への適切な対応方法
1 業務上の能力等を欠くタイプの問題社員
2 ハラスメントを行う社員
3 不正行為を行う社員
4 私生活上の非違行為を行う社員

当事務所がサポートできること

 

ということで早速,内容に入っていきましょう!

第1 問題社員の特徴

一言で「問題社員」といっても後で述べますように色々なタイプがいます。人間的な良し悪しではなく会社から見た場合にその社員の行動や存在が会社にとって不利益に働くような社員のことを「問題社員」と言って良いでしょう。

会社から見て「問題社員」と評価される人が全ての面においてネガティブな評価を受ける人とは限りませんし,同じ立場で同僚として仕事をする分には実害がない人かもしれません。また,社内での行動には大きい問題はないものの私生活上の問題行動があって,それが会社に対するネガティブな評価につながりかねないというパターンもあります。

 

このような見た目の人には注意しましょうとか,こんな口癖のある人は問題社員ですといった明確な特徴があるわけではありません。その人の言動が会社から見て「問題」であるから問題社員であると考えてください。

 

問題社員の類型

1 類型化する視点

(1)問題行動が起きる時点

採用時に問題を起こす社員,使用期間中に問題を起こす社員,本採用後に問題を起こす社員,在職中に問題を起こす社員,退職時に問題を起こす社員など問題行動を起こす時点で分けることが可能です。

 

(2)問題を起こす場面

業務時間内に問題を起こす社員,業務以外の場面すなわち私生活において問題を起こす社員といった視点で分けることも可能です。

 

(3)問題の種類

この分け方が最もわかりやすいかもしれません。本来の業務を遂行するにあたって能率が悪い,ミスが多い,能力に欠けるといった問題社員については,どの会社にもいるのではないでしょうか。また,部下に対して暴言を吐くパワハラ系の社員,性的な言動を行って周りの社員を困惑させるセクハラ系社員といったハラスメント社員,パワハラ系の社員はどの会社にも一定数おられると思います。

次に精神的な問題を生じさせているメンタルヘルス系社員も会社から見ると対応に苦慮するという意味では「問題社員」といえるかもしれません。先に述べたハラスメント系社員の行動がメンタルヘルス不調を抱えた社員を生み出しているという側面もあると思います。

 

私的に支出した領収証を業務で使ったものであるかのように装って会社に支払わせる,会社の経理担当が会社の小口現金を私的に使ってしまう着服といった職務上の不正行為を行う社員,金額が少額な場合も含めるとかなりの数の問題社員がいるのではないでしょうか。

職場外で飲酒運転による事故を起こす,飲み屋で喧嘩して傷害罪で逮捕されるといった私生活上の非違行為を行う社員,このパターンには問題行動自体が刑事罰を受ける可能性のある非違行為の場合と職場外での不貞行為といった民事上は違法と評価される行為であるものの刑事罰を受ける行為ではないものの2種類があります。

 

問題社員を放置することが企業へ与えるリスク

1 業務上の能力等を欠くタイプの問題社員

このタイプの問題社員の存在によって上司や部下が教育・指導をする手間や時間がかかるという問題が生じますし,「どうしてあんな社員を雇い続けるんだ。」「早く辞めさせて欲しい。」といった他の社員の不満がたまっていくことが懸念されます。こういった不満がパワハラ的な言動として問題社員に向くこともありますし,会社やその部署全体の士気を下げるという問題も起こりえるでしょう。

 

また言うまでもありませんが,能力等を欠くタイプの社員の存在が業務の効率性をさげるという問題もあります。

採用段階ではわからなかった部分が採用後に判明することも珍しくありませんのでこのタイプの問題社員を雇用してしまうことは避けられませんが,業務効率の低下,社内の士気の低下といった目に見えづらい問題も無視することはできませんが,このタイプの問題社員への対応を会社全体,上司,部下が誤ることによって問題社員と会社の間での労使紛争を招きかねません。

問題社員の指導の際にパワハラがあったとして慰謝料を請求される事態になること,問題社員の対処に困り,上司や部下からの突き上げによって社員を辞めさせてしまう(解雇してしまう)ことがきっかけで地位確認の訴えを提起されて高額なバックペイを支払わされるというケースも起こりえるでしょう。

2 ハラスメントを行う社員

セクハラやパワハラを行う社員は,その存在自体が法的リスクの象徴です。ハラスメントを受けたとされる社員が精神的な苦痛を被って精神疾患になってしまう,このことを理由に会社が慰謝料を請求されたり,労災を申請しなくてはいけなくなったり,この手の社員を放置することが企業へ与えるリスクは看過できません。

 

また,ハラスメント系社員の行動を見過ごせないからといってどのような対応をしてもいいのかというとそうではありません。ハラスメントを繰り返す社員に対していきなり重い懲戒処分を下したりするとその有効性を争う法的紛争が起きる可能性がありますので対応には工夫が必要です。

ハラスメントを受ける社員からの法的請求を招くリスクとハラスメントをしている社員との法的紛争を招くリスクの両方があるのです。

3 不正行為を行う社員

会社の経費として処理できない私的な支出について会社宛ての領収証をもらって会社に負担させたり,会社名義の預金から引き出して私的に使ってしまう着服行為を行う社員については,そのままにしておくと不正に会社の資金が使われ続けて財務内容を悪化させるというリスクがあります。このリスクは時間が経つにつれてその金額が膨らんでいく(着服ですと,このくらいばれなければ,次はこのくらい抜いてみようというマインドが生じがちです)という怖さがあります。

 

また会社の経費として処理できないものを経費として処理していたことが税務調査の際に判明すると本来支払うべき法人税を支払っていなかったと評価されて過少申告加算税を負担させるといった税務上のリスクもあります。

そして,会社宛ての領収証を使った不正請求等については他の社員がそのような行為が横行しているのを知ると自分もやっていいのではないかという意識を持ち始めて同様の行為を行うようになる等のモラルハザードを社内で発生させることになります。

4 私生活上の非違行為を行う社員

会社の職場とは全く関係ないところで不貞行為(配偶者のいる方と性交渉をすること等)などを行っているようなケースでは会社には法的なリスクはほとんどありませんが,刑事罰の対象となるような行為を社員が行っている場合には,その社員が逮捕・勾留されることも起こりえますし,そうすると社員が1名不在となる状況が生じます。業務に支障を来すリスクがあるということですね。

 

私生活上の非違行為を行っていることを放置しておくとその社員が民事上の紛争に巻き込まれるリスクがありますし,刑事罰を受けるような行為を会社がうすうす知りながら放置しておくとその社員が逮捕・勾留されることによって1人の社員が長期間不在の状態が生じたり,重い刑罰を受けるようなケースでは収監されることによって社員との雇用契約を解消しなくてはいけないケースも生じることになります。

 

問題社員への適切な対応方法

1 業務上の能力等を欠くタイプの問題社員

即戦力として高い賃金を支払うといった労働条件で雇用した中途採用社員といった例外的なケースを除き,このタイプの問題社員については能力を引き上げていくために教育・指導していくという対応が基本です。戦力にするために粘り強く行っていく必要があります。

 

しかし,教育・指導が効果を発揮しないことが予想されるケースやその社員の存在が業務に与えるネガティブな効果が大きい場合には,退職勧奨を行って退職していただく方向で調整していくのが適切なケースが多いと思います。

このタイプの問題社員の解雇が有効になるケースはほとんどないと考えていただいた方が無難なので解雇だけはしないようにしてください。

2 ハラスメントを行う社員

この手の社員の行動を放置しておくとハラスメントを受けている社員が精神的に参って退社してしまう,会社が職場環境に対する配慮を怠ったとして慰謝料を請求してくるなどのリスクがあり,対応が必要です。

事実関係を確認して,それを評価して,ハラスメントを行っているという社員,ハラスメントを受けている社員に対して適切な対処を行う必要があります。ハラスメントがあったと評価できれば行っている社員に懲戒処分を下し,行っている社員と受けている社員について接触機会を減らすために配置転換を行うことが必要なケースもあります。

 

ハラスメントを行っている社員について注意・指導や懲戒処分を行っても改善が見られないケースでは雇用契約を解消する方向で努力する必要があります。解雇はあくまでも最終手段であり,退職勧奨を行って自主退職してもらう方向で最大限努力するのが妥当です。会社側に支障がない場合には会社都合退職という選択肢を社員に提示できると退職してもらいやすくはなります。また退職金の支給規定がなかったり,支給規定があっても支給要件を満たしていない社員に対しても一定の解決金を支払うことを条件にすると退職してもらいやすくはなります。

3 不正行為を行う社員について

懲戒処分を行う,どうしてもその社員が必要であるという事情がなければ退職勧奨を行って退職してもらう方向での調整をするのが妥当なケースが多いです。

不正の内容によっては懲戒解雇ですら有効になるケースもありますが,そのような場合でも退職勧奨からの自主退職という結論に持っていくのが最もリスクが小さくお勧めです。

4 私生活上の非違行為を行う社員について

その非違行為が会社の秩序や職場規律に影響を与えるものであるかによってどのような対応をするのかを決めるべきです。口頭での指導にとどめる程度で済むケースもありますし,重い懲戒処分や解雇まで考えるべきケースもあります。

後者の場合でも退職勧奨からの自主退職という形で処理をするのがベストであるケースが多いというのが多くのケースを扱ってきた私自身の実感としてあります。

 

当事務所がサポートできること

問題社員を放置することには様々なリスクがあることは既にご説明したところですが,どのような対応をすることが最も好ましいのか,リスクを軽減できるのかについて相談に対応しております。もちろんスポットで「このような問題を抱えているのですがどうしましょう。」と相談に来られる会社経営者の方,人事担当者の方からの相談に乗るケースも0ではありませんが,顧問契約を締結していただいた会社からご相談をいただくというケースが多くなっています。

 

スポット案件であれ,顧問先からの相談であれ,当事務所としては,その時の状況で最もリスクが低く,効果が期待できる解決方法をお伝えするよう心がけています。特に問題社員との関係では懲戒処分をどのように下すか,処分の重さをどう決めるか,辞めてほしい社員に対してどのように退職勧奨をしていくのかといった相談を受けるケースが多いです。

 

このような相談を受けてアドバイスをする弁護士の立場からすると業務内容や日常の労務管理がどのようにされているのかを把握できている顧問先企業の皆様からの相談の方が企業の実情に応じた正確なアドバイスができるという面があります。このことから顧問契約の締結をお勧めすることが多く,お勧めした企業様から顧問契約を締結していただく機会が近年増えています。有難い話です。

問題社員への対応はもちろん,労務問題全般や不動産取引紛争について多くの経験があり,多くの中小企業の顧問弁護士業務を担当している弁護士が所属している当事務所との顧問契約について多くの会社経営者の皆様に興味を持っていただけると幸いです。

文責  弁護士 浜田 諭

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