製造業|建物の賃貸借に関する顧問弁護士活用事例
建物を賃借して食品の製造・販売を行っていた会社(顧問先)が,楯も賃貸借契約が終わって退去した後に契約期間中の使用状況に問題があったことを理由として原状回復等を名目に損害賠償を請求される訴訟を提起されたが,借主が貸主の請求額の約35%を支払うことで訴訟上の和解成立にて解決できたケース
概要
業種
食品の製造業(メーカー)
相談内容
当社が以前,賃借して工場を営んでいた建物の貸主から契約期間中の使用について問題があったせいで建物の劣化が進んだ等として原状回復請求等の名目で金銭を請求する民事訴訟を提起されて困っているとの相談を受けました。
解決方法
建物の借主であった顧問先からの依頼を受けて同社の訴訟代理人として原告の請求権の発生や額を争い,請求額の約35%を支払うという内容で訴訟上の和解を成立させて終了させました。
解決までの期間
10か月(訴訟を提起されてから,裁判所での訴訟上の和解成立まで)
事案内容
事案と結果
借主であった顧問先が作成する食品は製造過程において,塩分を発生させることが不可避であり,この点を考えた場合に原告の原状回復請求について被告である顧問先が一定額を支払わなくてはいけないだろうという裁判所の心証が示されて,和解協議に入り,請求額の約35%を被告が支払う(未返還分の敷金返還請求権も相殺して)との内容で和解が成立しました。
請求自体を排除できれば良かったのですが,製造している食品の性質,賃貸借契約のスタート時と終了時の状況の違いなどを考えた場合には原状回復についての費用負担を免れないとの裁判所の心証を尊重した方が無難であるとの判断から請求額から一定の数字を引いた額を被告側が原告に支払うとの内容での和解を成立させるにいたったものです。
本件は被告である顧問先が原告に敷金を差し入れていた,顧問先が本来自ら負担すべきであった電気代金などを立て替えていたといった事実も考慮に入れて金額を算定して包括的清算条項を入れた和解を成立させるのが得策であると判断して顧問先を説得して訴訟上の和解に応じるように説得して,同和解を成立させました。
事案の詳細
先に述べたとおりですが,建物の賃貸借契約が終了して退去して1年以上後に
提起された訴訟でしたので,証拠の収集や提出について少し苦労した案件でした。
弁護士の対応・アドバイス
本件は民事訴訟の被告となった借主(顧問先)の訴訟代理人として建物の貸主であった原告からの請求額の約35%を支払えば建物賃貸人と借主の間の紛争はすべて解決したものとするという包括的な清算条項を入れた和解を成立させたのですが,1つの紛争をきっかけに潜在的に残っていた別の案件(顧問先から貸主への敷金返還請求や立替金請求)も解決できたという点で,ある程度,良い結果が出せた事案だと思います。
事業を行う皆様全員が自身の所有する不動産で事業を行うわけではなく,多くは不動産を賃借して事業を行っておられます。そして貸主からの理不尽な請求で不動産の賃料増額に追い込まれたり,退去・明渡しを求められたりするケースもあり,このような不当要求に適切に対処するには紛争案件について多くの経験と知識を有する弁護士にいつでも相談できるような体制をつくっておくとよろしいかと思います。
不動産取引はもちろんそれ以外の紛争案件についても多く扱っている当事務所の弁護士を貴社の顧問弁護士として依頼することも検討されてはいかがでしょうか。