問題社員への指導のポイントとは

浜ちゃんこと弁護士の浜田です。今回は問題社員への指導のポイントについてお話ししていこうと思います。
今回お話しする内容の項目は下記のとおりです。

1.問題社員の指導のポイント

(0)問題社員について

 ・7つの類型

(1)指導は書面にて実施すること

 ・指導の有無や内容を争われるリスクを回避する。

 ・録音しておくのも有効

(2)注意指導書に記載すべき内容

 ・注意指導の「原因」

 ・注意指導の「内容」

 ・社員の署名・捺印や今後社員が行う努力内容

(3)問題行動に対しては注意を実施

 ・懲戒処分の一歩手前

(4)悪質な行為に対しては懲戒処分を検討

 ・程度に応じて行う。

 ・初回は軽微な処分を選ぶのが無難

(5)指導後に改善が見られない場合

 ・配置換え等を検討

 ・退職勧奨の検討

 ・解雇の検討

 ・解雇のリスク

2.当事務所ができるサポート内容

 ・スポット案件としての業務

 ・顧問弁護士としての対応

それでは内容について入っていきましょう。

 

1.問題社員への指導のポイント

(0) 問題社員について

問題社員と一言で言ってもその中には色々なタイプの社員が含まれます。主な問題社員について申し上げますと

 

① 勤務態度が悪い社員
② 仕事の能率が悪い,ミスが多い社員
③ 部下に対してハラスメント(パワハラ,セクハラ等)を行う社員
④ 職場の秩序を乱す社員(社員同士で喧嘩する,お金の貸し借りを行う等)
⑤ 精神的不調を訴えて出社してこない社員
⑥ 交通費,手当について会社から不正受給する社員
⑦ 私生活上の非違行為を行う社員(例:職場外で起こした不祥事で逮捕された社員)

 

など様々な類型が考えられます。
こういった問題社員に対して適切な対処を行わないと社員自身が抱えている問題がエスカレートする,問題社員によって迷惑をこうむっている他の社員から会社が責任を問われるなど様々なリスクが発生します。会社がこういった問題社員に対してとることができる最も身近な手段が「指導」ということになります。

 

(1) 指導は書面で実施すること

問題社員のうち前述の①②④,また③の軽微な事案については,問題社員に対して上司などが「指導」を行うことになると思います。

問題の程度によっては口頭で指導を行うことも考えられると思うのですが,後述しますように「指導」をしたにもかかわらず改善が見られない場合には懲戒処分などの対応が必要になるケースがあります。懲戒処分をする前に会社がまずは問題社員に「指導」をしたこと,その「指導」が適切なものであったのかが争いになるケースがあります。

このような観点からしますと,特に問題社員に対する「指導」は書面などの形として残る方法をとった方が良いということになります。指導を書面で実施し,その指導内容について社員の方が理解しましたということで書面に署名・捺印をもらった上でその写しを会社で保管するというところまでやれるのが理想です。また,「指導」の段階でも上司と部下のやり取りを録音しておくとパワハラと評価されるような「指導」は行っていないという証拠として使える可能性があります。

 

(2) 注意指導書に記載すべき内容

「指導」を書面で行う場合(「注意指導書」という表題の文書を使って行うとした場合),この書面にはどのような内容を記載すべきでしょうか。
まず最も重要なのは,「指導」に至った原因の記載です。この原因となった問題の改善や再発防止を目的として「指導」を行うわけですし,「何」を指導したのかを書面から読み取るためには「指導」の原因の記載が必要でしょう。

そして「原因」を記載して問題社員に指導に至った理由を理解させた後,その「原因」の再発防止や改善のために社員が今後どのような対応をしていくのかという点については社員に記載してもらった方が良いでしょう。問題点を理解し反省して改善するためにどうするのかを社員に記載していただくことによって社員の自覚と改善に向けての意識を持たせる効果があります。

それと当たり前ですが,書面に日付,社員自身の署名・捺印といった欄を設けてきちんと記入していただくというのも重要ですね。

 

(3)問題行動に対しては注意を行う

「指導」と「注意」の区別は難しいところですが,後述の懲戒処分の前段階として一歩前の手続として「注意」することも考えられるところです。

 

(4)悪質な行為や大きな「問題」行動を行った社員には懲戒処分

前述の③④の程度が著しい場合,⑥に当たる行動を行った社員には「指導」や「注意」を経ずに懲戒処分を行うことを検討することになります。問題行動の内容にもよると思うのですが,初めての懲戒処分の場合には譴責や戒告といった軽い処分を行うのが無難です。また後述する退職勧奨や配置転換といった対応と並行して懲戒処分を行うといったことも当然考えられます。

 

(5)指導後に改善が見られない場合

指導・注意の後に改善が見られない場合には懲戒処分を検討するケースがありますし,配置転換や退職勧奨といった対応をとるのが妥当なケースもあります。ハラスメント事案の場合には上司と部下,加害社員と被害社員との接点を減らすというのが最優先事項であったりしますので配置転換という手段を検討するケースが多いです。ただ,この場合,被害を申告した社員の方が配転するのは会社側の対応として問題があると評価されるケースが多く,また労使の対立を激しくする原因ともなりますので配転を検討する場合,基本は加害者とされる社員の方を異動させるものであると考えておきましょう。

また退職勧奨については社員と会社とのミスマッチを解消する手段として雇用契約の終了が有効なケースにおいて,解雇自体はその有効性が認めづらいといったケースの場合には早い段階で行うことを検討して良いと思います。

退職勧奨を行う場合には,回数,時間,頻度,人数,拒否した社員へのさらなる勧奨は避けるなど色々と配慮すべきポイントがあります。執拗な退職勧奨が行われたとしてそれ自体をパワハラと評価される,退職届が提出されたものの退職の意思表示の取り消しを後日主張されるといったリスクがありますので要注意ですね。

最後に問題社員の「解雇」ですが,これはあくまでも最終手段です。解雇については無効と評価された場合のバックペイ(雇用契約が存在していると評価されて解雇の時点にさかのぼって賃金の支払いをしなくてはいけなくなること)のリスクは大きいですし,逆に「退職」で処理すれば「退職」に向けた意思表示に問題があることの主張・立証は社員の側の責任となりますので会社側が有利に話を進めることができます。

極端な話,解雇が明らかに有効になると予想されるケースであっても退職勧奨からの退職で雇用契約終了という形で処理するのが無難であると考えます。

 

2.当事務所が提供できるサポート内容

当然,問題社員を解雇してしまった後に不当解雇を理由として地位確認等を求める裁判や労働審判を起こされたといった紛争が顕在化している案件をスポットとしてお受けすることもできるのですが,問題社員への対応はどちらかというと日常の労務管理こそが重要です。

このことから会社や法人との間で顧問契約を締結させていただいて顧問弁護士として問題社員への対応についてどのような進めていくのか指導・注意なのか懲戒処分を下すのか懲戒処分を下すとしてどの処分を下すのか退職勧奨をどのタイミングでどのように進めていくのかについてアドバイスをさせていただいております。

なお,問題社員をめぐるトラブルが不幸にして労使の紛争に発展した場合には,顧問弁護士として日頃の労務管理を把握した上で対応することになりますので,スポット案件としてお引き受けするよりは会社側にとって有利な内容で解決できる可能性が高くなります。

 

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3.最後に

問題社員に関する相談は年々増えているように感じています。私自身が顧問業務を行うにあたって最も多くの相談をいただくのが問題社員への対応であったりします。日常の労務管理をきちんと行っているにも関わらずちょっとした対応の誤りや無理解から深刻な労使紛争に発展するのは会社にとっては経済的なダメージが生じるという面で不幸なことですし,真面目な経営者の方がこういったトラブルをご自身で抱え込んで精神的に追い込まれてしまうという場面も多く見て参りました。

問題社員についての悩みはどの会社にも存在し得ますし,会社経営者の方の悩みは尽きないと思いますが,当事務所がこういった会社,会社経営者の方々のお役に立てるのであれば幸いです。

文責:弁護士 浜田 諭

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