トラック運送業における労務管理 その13-社員間のお金の貸し借りを禁じることはできるのか?-

 

浜ちゃんが最近,物流業界に興味を持っているとの噂を聞き,相談に来られた運送会社S社のK社長。

今回もトラック運送業における労務管理について浜ちゃんに相談しています。

 

 

1.社員間でのお金の貸し借りがもたらす弊害

 

K社長

「前回,ドライバー同士の喧嘩の話を伺いましたよね?」

 

浜ちゃん先生

「そうでしたね。今回はそれに関連する話ですか?」

 

K社長

「実は社員の間でお金の貸し借りが行われているようで,

 それが社員間でのトラブルの原因になったことが何度かあるようなんです。」

 

浜ちゃん先生

「そうなんですねぇ。個人間の問題とは言え,社員同士でお金の貸し借りをすると

 いくら貸したのか,貸したお金をいつ返してくれるのか等の争いが生じて

 人間関係の悪化につながりかねないですねぇ。」

 

K社長

「それにお金を借りている社員は貸している社員との関係で

 業務上注意しなくてはいけないことについて変に気を使って見逃してしまったりといった

 業務上の判断への悪影響につながるというのも心配です。」

 

浜ちゃん先生

「確かに,そういった可能性も否定できませんし社員間の貸し借りを認めたり,

 放置しておくというのは労務管理上妥当ではないでしょうね。」

 

 

2.金銭の貸し借りを禁ずる規定を就業規則に設けることは可能か

 

K社長

「そこで当社としては社員同士でのお金の貸し借りを禁ずる規定

 就業規則の服務規程の項目に入れたいと思っているのですが,これは可能でしょうか?」

 

浜ちゃん先生

「可能だと思います。この点,最高裁は富士重工事件(最判昭52・12・13 労判287号頁で

 「企業秩序は企業の存立と事業の円滑な運営の維持のために必要不可欠

 「企業は,この企業秩序を維持するため,これに必要な諸事項を規則をもって

  一般的に定め,あるいは具体的に指示,命令することができる」 と判断しています。

 企業秩序維持のために服務規律に関する規定を設けることを認めているということですね。」

 

K社長

「社員間の金銭の貸し借りを認めたり放置したりしていると

 企業秩序が維持できないと思いますので・・・」

 

浜ちゃん先生

「就業規則の服務規律に関する規定の中に社員間でのお金の貸し借りを禁ずる規定を設けることは可能です。」

 

 

3.金銭の貸し借りを禁ずる場合,どのような条項にすればよいのか

 

K社長

「社員間での金銭の貸し借りを禁ずる規定を就業規則に入れるとして,

 たばこ代程度の少額な金銭の貸し借りを禁ずるのは厳しすぎるので

 「多額の貸し借りを禁ずる」といった条項にしてはどうでしょうか?」

 

浜ちゃん先生

「そのような条項ではいくらからが「多額」なのかが問題になりますし,少額の貸し借りを許容すると

 複数回にわたる貸し借りで多額になった場合にはどうするのかという問題も生じます。」

 

K社長

「そうですねぇ。それではどのような条項にしたらよいですか?」

 

浜ちゃん先生

社員間のお金の貸し借りを一切禁止する条項にしてください。

 社員同士でお金の貸し借りが禁止されていることをきちんと認識させて,それを徹底する必要があるからです。」

 

 

4.禁止規定に違反した社員にどのような対応をすればよいのか?

 

K社長

「そうすると例えば500円ほどの社員間での貸し借りが発覚した場合も

 服務規律に違反するとして懲戒処分にするということになるんですか?」

 

浜ちゃん先生

「そういうことではありません。行った行為と懲戒処分のバランスが取れていないと

 懲戒処分が無効になる可能性がありますし,まずは貸し借りを行った社員に対して

 注意したり指導したりするというところから始めましょう。

 

K社長

「それでも貸し借りを繰り返す場合にはどうすればよいですか?」

 

浜ちゃん先生

「その際に懲戒処分を下すことを検討することになるのですが,

 戒告などの軽い懲戒処分を下すことをまず検討しましょう。」

 

K社長

「服務規律に違反したからといって形式的に全て懲戒処分にする必要はなくて,

 注意や指導にとどめるという対応でもよい場面があるということですね?」

 

浜ちゃん先生

「そうですね。軽微な違反で,かつ注意や指導でも職場の秩序が維持されるのであれば

 懲戒処分を下す必要はないと思います。」

 

K社長

服務規律を定めること,その違反に対してどのような対応をするのかについては

 違反の程度や職場の秩序維持にあたっての必要性を考慮して考えていくということでよろしいですか?」

 

浜ちゃん先生

「そういう整理でよいと思います。」

 

K社長

「今日も勉強になりました。今後ともよろしくお願いいたします。」

 

浜ちゃん先生

「こちらこそ,よろしくお願いいたします。」

 

 

 

さいごに

当事務所においては,これまでも労務管理を中心とする中小企業の顧問業務,

宅建業や不動産取引にかかわる紛争の解決に注力して参りましたが,

今後は流通・運送業界の法律問題の解決,顧問業務にも力を入れて取り組むことになりました。

このブログにおいても有益な情報発信ができるよう努力して参りますので,よろしくお願いいたします!

 

 

執筆者  弁護士 浜田 諭