建設業における契約書のポイントについて弁護士が解説

今回は建設業における契約書についてお話していこうと思います。
今回お話しする内容は以下のとおりです。

1 建設業において交わされる文書の種類
2 契約書等の作成の重要性
3 契約書等作成時の注意点
4 よくあるトラブル例
5 弁護士に依頼するメリット
6 当事務所がサポートできること 契約書がない場合の対処法
 それでは早速,内容に入っていきましょう!

建設業は,施主,請負業者,一次下請業者,二次下請業者など多種多様な関係者が関与し,工期も長期にわたることが少なくありません。そのため,日々の業務から契約締結,紛争解決に至るまで,様々な場面で文書が作成・取り交わされます。これらの文書を適切に管理し,活用することは,建設プロジェクトの円滑な進行と将来的なリスク回避のために不可欠です。


1.建設業において交わされる文書の種類

建設業で取り交わされる文書は多岐にわたります。主なものを以下に挙げます。

(1)契約関連文書

①工事請負契約書: 発注者と受注者の間で工事の内容,工期,請負代金などを定める最も重要な文書です。
②設計・監理委託契約書: 設計や工事監理を委託する際に,業務範囲や報酬などを定める契約書です。
③下請契約書: 元請業者と下請業者の間で,工事の一部を委託する際に締結される契約書です。
④覚書・合意書: 契約内容の一部変更や追加事項について,当事者間で合意した内容を記録する文書です。
⑤注文書・請書: 個別の工事や業務を依頼・承諾する際に交わされる簡略な契約文書です。

(2)見積・請求関連文書:

①見積書: 工事費用や業務委託料などを見積もり,発注者に提示する文書です。
②請求書: 完了した工事や業務に対する対価を発注者に請求する文書です。
③領収書: 代金受領の事実を証明する文書です。

(3)施工管理関連文書:

①工程表: 工事のスケジュールを示す文書です。
②図面・仕様書: 工事の内容や品質に関する詳細な情報を示す文書です。
③工事日報: 毎日の工事の進捗状況や作業内容を記録する文書です。
④安全書類: 作業員の安全管理に関する計画や記録です。
⑤品質管理記録: 工事の品質管理に関する検査記録などです。
⑥写真・動画: 工事の進捗状況や完成状況を記録するものです。

(4)通知・連絡関連文書:

①通知書: 契約内容の変更,工事の遅延,瑕疵の発生などを相手方に通知する文書です。
②連絡書・報告書: 関係者間の情報共有や業務報告のために作成される文書です。
③議事録: 社内での会議や取引先との会議の内容や決定事項を記録する文書です。

(5)その他:

①保証書: 工事の品質や性能を保証する文書です。
②保険証書: 工事に関する保険の内容を示す文書です。
③許可証・届出書: 建設業法に基づく許可や届出に関する文書です。

2.契約書等の作成の重要性

上記のように,建設業では様々な文書が取り交わされますが,中でも契約書は最も重要な文書と言えます。なぜなら,契約書は当事者間の権利義務関係を明確にし,将来的な紛争を予防するための指針となるからです。
 より具体的に話していきましょう。

(1)権利義務関係の明確化

請け負った工事範囲,工期,請負代金,支払い条件,契約不適合責任の発生条件など,当事者間の合意内容を明確にすることで,後々の認識のずれや解釈の相違を防ぎます。

(2)紛争予防

契約書に具体的な取り決めがない場合やその条項内に曖昧な表現が含まれている場合,紛争が生じる可能性が高まります。契約書をしっかりと作成することで,紛争の種を事前に摘み取ることができます。

(3)リスク分担の明確化

天候不順や資材の調達遅れによる工事の遅延,天災,地盤の変動など,予期せぬ事態が発生した場合の責任の所在や費用負担について明確に定めることで,当事者間の不公平感を解消し,円滑な解決を図ることができます。

(4)法的拘束力

契約書は法律に基づいた拘束力を持ちます。万が一,契約内容が履行されない場合,契約書は訴訟等の法的措置を講じる際の重要な証拠となります。

(5)信頼関係の構築:

明確な契約書等を交わすことは,相手方に対する誠意を示すことになり,良好な信頼関係の構築につながります。
なお契約書以外にも,見積書や図面,仕様書なども契約内容を構成する重要な要素となる場合があります。これらの文書も契約書と一体として管理し,内容を相互に整合させておくことが重要です。

3.契約書等作成時の注意点

重要な契約書等を作成する際には,以下の点に注意する必要があります。

(1)当事者の特定

契約当事者の名称,住所,代表者などを正確に記載します。

(2)工事内容の明確化

工事の範囲,仕様,図面などを具体的に記載し,曖昧な表現を避けます。必要に応じて,別添資料として詳細な図面や仕様書を添付します。

(3)工期等タイムスケジュールの明確化

着工日,竣工日を明確に記載します。遅延した場合の取り決めについても定めておくと良いでしょう。

(4)請負代金と支払い条件の明確化

請負代金の総額,内訳,支払い時期,支払い方法などを具体的に記載します。中間金や出来高払いの条件も明確にしておきましょう。

(5)契約不適合責任

契約の趣旨,瑕疵の範囲,期間,修補方法,損害賠償などについて明確に定めます。民法の規定があるから定めなくてよいというものではなく,当事者間の特約も重要です。

(6)危険負担

工事期間中に予期せぬ事故や天災などにより損害が発生した場合の負担について定めます。

(7)契約解除の条件

どのような場合に契約を解除できるのか,その手続きや効果について定めます。

(8)紛争解決方法

裁判によるのか,調停や仲裁によるのかなど,紛争が生じた場合の解決方法について定めておきます。裁判になった場合の管轄裁判所を明記するケースは多いですね。

(9)印紙税

契約金額に応じて印紙税が発生する場合がありますので,注意が必要です。

(10)弁護士への相談

契約内容に不安がある場合や複雑な内容を含む場合は,弁護士に相談することをお勧めします。
なお,契約書だけでなく,見積書や注文書なども,後々の紛争の種となる可能性があります。これらの文書も,工事内容や金額,納期などを明確に記載し,記録として保管しておくことが重要です。

4.よくあるトラブル例

 建設業においては,契約書等の不備や認識のずれから,様々なトラブルが発生する可能性があります。具体的にお話しします。

(1)工事範囲の不明確さ

契約書や図面,仕様書における工事範囲の記載が曖昧なために,追加工事の費用負担で揉めるケース。

(2)工期の遅延:

天候不良や資材調達の遅延などにより工期が遅れた場合の責任の所在や損害賠償に関するトラブル。

(3)請負代金の未払い・遅延

発注者側の資金繰りの悪化や,工事の出来栄えに対する不満などを理由に,請負代金が支払われない,または遅延するトラブル。

(4)契約不適合(瑕疵)に関するトラブル

工事完了後に瑕疵が発見され,その責任の所在や補修費用について揉めるケース。瑕疵の範囲や期間に関する認識のずれが原因となることが多いです。

(5)下請代金の支払い遅延・不払い

元請業者から下請業者への代金支払いが遅延したり,不当に減額されたりするトラブル。

(6)安全管理上のトラブル

労働災害が発生した場合の責任の所在や損害賠償に関するトラブル。安全管理体制の不備が原因となることが多いです。

(7)契約解除に関するトラブル

一方的な契約解除の有効性や,解除に伴う損害賠償に関するトラブル。
これらのトラブルは,事前にしっかりと契約書等を作成し,当事者間で内容を十分に確認しておくことで,その多くを回避することができます。また,日々の業務においても,記録をしっかりと残しておくことが,トラブル発生時の証拠となり,早期解決につながります。
特に工事途中での工事内容の変更にともなう請負代金の増額やその費用負担については後々,法的紛争に発展しやすい印象があります。

5.弁護士に依頼するメリット

建設業における契約書の作成や契約の解釈や工事内容をめぐる法的紛争の解決を弁護士に依頼することには多くのメリットがあります。
より具体的にお話しします。

(1)専門的な知識と経験

弁護士は,建設業法をはじめとする関連法規や判例に関する専門的な知識と豊富な経験を有しています。複雑な契約内容や法的な問題点について,適切なアドバイスをすることができます。

(2)リスクの低減

契約書作成の段階から弁護士に相談することで,将来的な紛争のリスクを未然に防ぐことができます。法的な観点から契約内容を精査し,不利な条項がないか,抜け漏れがないかなどをチェックしてもらうことが可能です。

(3)交渉力の強化

法的紛争が発生した場合,弁護士は依頼者の代理人として相手方と交渉を行うことができます。弁護士が法的な根拠に基づいた主張を展開することで,将来裁判になった場合のリスクを当事者双方が予想し,それを踏まえて対応を検討することになりますので早期解決できる可能性が高まります。

(4)紛争解決の迅速化

訴訟などの法的手続きが必要になった場合,弁護士を代理人に立てることで訴訟の提起,訴訟係属中の書面の作成・提出,証拠の収集などを弁護士が行いますので代理人を立てずに
訴訟に臨むよりも迅速な解決をすることが可能です。

(5)精神的な負担等の軽減:

法的なトラブルは精神的な負担が大きいものですが,弁護士に依頼することで,その負担を軽減し,本業に集中することができます。また訴訟中に会社が紛争解決に割く時間や費用
についても社内での対応時間・コストを軽減することが可能です。

6 当事務所のサポート内容-契約書がない場合の対処法等

契約書についてお話してきましたが,契約書がなくても契約関連書類やその他の書類から契約内容等を主張・立証することで交渉,訴訟での解決をすることは不可能ではありません。ただ,請負契約書の作成は建設業法上も義務付けられていることで,また契約書の意義については前述のとおりであり,その重要性は言うまでもありません。


 当事務所は建設業を始めとする多くの企業の顧問業務を行っており,その顧問業務の一環として契約内容等をめぐる紛争の予防,紛争が顕在化した場合の法的紛争の解決に注力しております。現在は月額5万円(税別)の顧問契約の中で日々の相談対応はもちろん契約書等のレビューや通知書等の簡易な文書の作成も行っており,簡易な交渉業務も対応させていただいております。また紛争が訴訟に発展した場合の着手金等の費用についても顧問先についてはスポットで依頼をいただく会社様(顧問先でない会社様)よりも2割引きさせていただいております。


 当事務所は顧問先以外の会社様からのスポットでの紛争解決依頼もお受けしておりますが,紛争の解決にとどまらず,紛争に至った原因を特定してその解決をしないと同様の紛争が発生する可能性が高いこと,日々の業務の中で顧問先の実情や業界の暗黙のルールを理解した上で対応することが紛争の予防にとって重要であると考えますので顧問契約の締結とその業務の一環として紛争の解決のお手伝いをする方がベターであるケースが多いように感じます。
 宮崎県で建設業をされている会社経営者の皆様,顧問契約をお考えの際には当事務所にご相談ください。

文責  弁護士 浜田 諭

  • 顧問弁護士の活用事例

    詳しくはこちら

  • 顧問先の声

    詳しくはこちら

  • 当事務所の顧問弁護士の特徴

    詳しくはこちら

  • 顧問先のご紹介

    詳しくはこちら

  • 顧問弁護士の活用事例
  • 当事務所の顧問弁護士の特徴
  • 顧問先の声
  • 顧問先のご紹介