既に退職した社員から現場への直行直帰を伴う就労について現場への移動時間、現場からの戻り時間についても労働時間であり、この時間について賃金が支払われていないことを理由に未払い賃金を請求されたものの元社員の請求額を大幅に削った内容の判決から付加金を削った内容にて控訴審が判決を下し、これが確定して解決した事例

請負工事現場への直行直帰がある従業員からの未払賃金請求を内容とする訴訟について請求額を大幅に削る内容の判決をもらったことから判決で支払いを命じられた額を供託し、控訴審では一審判決での会社敗訴部分を全部取り消す内容での判断が下されてこれが確定した事例

概要

・企業の業種 

建設業 宮崎市に本社がある。

・相談内容

退職した従業員から在職中の未払い賃金請求、在職中に社長から受けたパワハラに対する慰謝料請求、過重労働によって精神的苦痛を被ったとの内容の民事訴訟を提起されたが、どのように対応すればよいか。

・解決方法

顧問先企業(被告の1人)の訴訟代理人として原告側の請求には理由がないことを主張する答弁書,準備書面を提出する等して現場への移動時間、現場からの戻り時間は基本的に労働時間ではない、パワハラはなかったとの主張等を展開してこの点について会社の主張通りの判決が下され、そのタイミングで判決において支払いを命じられた額を全額供託し、控訴審では会社が敗訴した部分について全部取り消しとの判決を得て、これが確定して解決に至ったものである。

・解決までの期間

依頼を受けてから控訴審の判決確定まで約3年

事案と結果

遠隔地の現場への移動を伴う就労をしていた元社員から現場への移動時間、現場からの戻り時間も労働時間であり、この点について賃金が支払われていないとして未払い賃金請求、多くの移動時間を伴う過重労働を元社員に強いていたとしてこの点の慰謝料請求、在職中に社長から暴力、暴言を受けたとしてこの点の慰謝料を請求する内容の民事訴訟を提起されたケース。

顧問先企業は長時間の移動を伴う現場での就労の場合も移動時間は労働時間に含まれないこと、過重労働ではないこと、社長が暴言を吐いたり暴力をふるったりしたことがないことを主張してこの主張が基本的に採用されて慰謝料請求は棄却、移動時間のうち他の従業員の送迎を命じていた部分以外は労働時間と評価しないとの内容の判決が地方裁判所で下され、地裁で支払いを命じられた額を控訴期間内に供託し、控訴審では被告が一審で敗訴した部分が全て取り消され、この判決が確定したものです。

事案の詳細

宮崎県内や隣県にある現場への移動が生じる就労であったことから移動時間が労働時間と評価されるか、労働時間管理がアプリで行われていたものの元社員が正直に会社に申告していたのかどうかが争点となり、会社側が主張する労働時間の枠組みと評価を地方裁判所が全面的に採用した判決が下されたものです。

当初の元社員の請求額は付加金を合わせると500万円以上(付加金を除いても300万円以上)、最終的に会社が支払うことになった額は約120万円(遅延損害金を除く)です。

なお付加金とは未払い賃金の支払いを裁判所が被告にに命じるときに未払い賃金と同額の支払いを命じるもので(労働基準法114条)、本件では地裁が被告である会社に付加金の支払いを会社に命じましたが、控訴期間中に未払い賃金全額を法務局に供託したために付加金の支払いを免れることができました。付加金は判決が確定する前に未払い賃金の支払義務が履行されれば支払義務がなくなる性質のものですので一審判決後に速やかに供託して付加金の支払い義務を免れたことになります。

弁護士の対応とアドバイス

本件では遠隔地の現場での就労を伴う社員の労働時間管理をどうするのか、当時行われていた管理形態を前提に労働時間をどのように認定するのが正しいのかという実務上かなり重要な争点について裁判所が判断したケースとなりました。

地裁での判決では未払い賃金の部分については付加金の支払いが命じられたこともあり、

控訴期間中に地裁での判決認容額の全額を供託して付加金の支払い義務が発生しないように速やかに対処し、控訴審では地裁での判決で支払いを命じられた額を会社が全額支払ったことから元社員の請求は全て棄却(一審での被告敗訴部分取り消し)という判断となりました。

本件ではこの訴訟提起をきっかけに会社から顧問契約を締結してもらい、顧問業務と並行して本訴訟の対応を行いました。

本件に限らず民事訴訟を提起された,代理人弁護士から文書が来たことによって精神的に参っておられる会社経営者の方が少なくありません。法的紛争への対応を代理人弁護士に依頼するという対応と同時に顧問契約を締結して紛争への対応コストを下げるとともに,紛争に巻き込まれた際には顧問弁護士に相談すればいいとの安心感,自社で紛争についての悩みや労力等の目に見えないコストを余計に抱え込まなくてもよい状態を作り上げると日々の経営により注力できる環境が作れるのでお勧めですよ。

当事務所は,100社以上の会社,法人,個人事業主との顧問契約を締結しており,日々生じる会社経営者のお悩みや法律問題の解決に注力しております。

顧問弁護士を選択する際に当事務所を選択肢の1つとしてご検討いただけると幸いです。

 

文責  弁護士 濵田 諭

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