問題社員について解雇するのではなく交渉によって会社都合退職という形で合意退職による解決ができた事例
・会社にとって不利益な行動や職務怠慢が見られる社員との間で退職に向けた交渉を行い,
会社都合退職にて合意退職させることができたケース
タイトル
問題社員について解雇するのではなく交渉によって会社都合退職という形で合意退職による解決ができた事例
概要
・企業の業種:介護事業
訪問看護事業を行っている、都城市に本社がある合同会社
・相談内容
近い将来に会社からの独立を考えていると思われる社員が取引先に対して会社の悪口を伝えて取引を終了させ,競業行為に向けた準備を疑われる行動を行っている。
この社員は利用者に対する問題行動もあって利用者に対する健康被害が発生する可能性も生じていた。
この社員との雇用契約を終了させたいと思い,解雇を内容とする通知書等を作成する等の準備をしていたが,この社員の代理人弁護士から約半年後まで会社への在職を認めること,解決金を賃金3か月分(在職中の賃金とは別に)を支払うのであれば解決に応じる準備があるとの連絡があった。
どのように対応すればよいか。
・解決方法
社員の代理人弁護士との間で退職に向けた交渉を行う方針にした。会社からすると本来は解雇相当のケースであること,社員が行った取引先に行った行為によって被った損害賠償を請求する準備があること等を主張して退職条件について会社にとって有利な条件とすることを目標として行うこととなった。
在職期間は社員の希望通りとなったが在職中の賃金は休業手当相当額,解決金はなし,会社都合(退職勧奨による退職)という条件にて合意退職してもらうことができた。
・解決までの期間
依頼を受けてから合意退職までに約6か月
事案と結果
相手方の社員は職務上の問題(施設利用者に健康被害をもたらしかねないものを含む)があり,会社としては注意や指導を行ってきたが,それに加えてこの社員が会社からの独立を
考えていること,独立に向けた準備行為と思われる取引先へのアクション(会社の悪口を伝えて取引を終了させる等)が見受けられることから社労士に相談して解雇を検討していたところ,社員に代理人弁護士が付いて解決金3か月,半年の在籍等の条件提示をしてきた
ものです。
この会社との間で顧問契約を締結して顧問業務の一環として社員の代理人弁護士と交渉を行い,在職中の労働条件,合意退職に向けての条件を決めて合意退職での解決に至ったものです。在職中の労働条件は休業手当相当額の支払いで済み,解決金の支払いもせずに
合意退職で終わらせることができた事案となります。
事案の詳細
今回の事案では相手方社員が独立に向けた競業行為またはその準備行為(顧客情報の持ち出しやそれを利用した勧誘行為等)を行うリスクがありましたので社員を今まで通り出勤させることによるリスクがありました。
そこで自宅待機を命じてその代わりに休業手当(平均賃金×6割)を支払う形にして競業行為をさせないように配慮しました。
社会保険料等は発生しますが,会社が被るリスクを最小限にしつつ在職中に支払う額についても合理性のある金額(休業手当)で推移させることができ(社員の代理人もその内容にて合意したため),当初要求があった解決金の要求についても撤回してもらっての合意退職での解決となったものです。
弁護士の対応とアドバイス
問題社員との雇用契約解消に向けた交渉業務には会社の内情の把握とそれを踏まえた条件の提示が要求されますので顧問契約を締結し顧問業務の範囲として交渉業務を行いました。会社の代理人弁護士として会社の主張を文書にして社員の代理人弁護士に送付して文書のやり取りをしながら在職中の労働条件,雇用契約終了の時期,その他の条件についての詰めと合意退職書の作成などを行いました。
最終的には双方の代理人弁護士が署名・捺印する形で合意退職書2通を作成して,会社と社員双方が保有するという形で本件は解決することができました。
問題社員との雇用契約の解消については会社側が解雇を選択した結果,大惨事(バックペイの支払いと多額の解決金の支払いが必要となるケース等)になることがあります。
本件についても当初の会社の予定通り解雇を選択した場合には解雇の有効性をめぐる争いが生じたと思われ,不当解雇と判断された場合のリスクを念頭において社員側との交渉を行う必要があったと思われます。
リスクの計算がバックペイ(解雇時から解決時まので賃金満額を遡って支払うもの)をベースや不当解雇と評価された場合の解決金がいくら程度必要かを考えなくてはいけない解雇での解決は基本的にするべきではありません。これは懲戒解雇相当のケースである場合も同様であると考えます。
本件については社員の解雇を検討している状態から合意退職での解決に方針変更をした結果,会社が負担する可能性があるリスクを回避して解決に至ったという意味で良い解決になったと考えております。
問題社員への対応は会社経営者,人事担当者にとって悩ましい問題であり,社内で抱え込んだ結果,誤った判断をするリスクがありますし,抱え込んでいる間の精神的な負担や手探りで対処を検討する間の時間についても無駄なコストではないかと思います。
このような負担を軽減し,誤った判断から生じるリスクを回避するためにも普段から気軽に弁護士に相談できる環境を整備すること,顧問弁護士を置かれることをお勧めします。
当事務所は,多くの会社,法人,個人事業主との顧問契約(100社以上)を締結しており,日々生じる会社経営者のお悩みや法律問題の解決に注力しております。
ということで,顧問弁護士を選択する際に当事務所を選択肢の1つとしてご検討いただけると幸いです。
文責 弁護士 濵田 諭
- 既に退職した社員から現場への直行直帰を伴う就労について現場への移動時間、現場からの戻り時間についても労働時間であり、この時間について賃金が支払われていないことを理由に未払い賃金を請求されたものの元社員の請求額を大幅に削った内容の判決から付加金を削った内容にて控訴審が判決を下し、これが確定して解決した事例
- 懲戒解雇とは?懲戒解雇が認められる場合、認められない場合について、弁護士が解説
- 【ご報告】代表弁護士柏田笙磨が国際ロータリー第2730地区の危機管理委員(弁護士)に選任されました
- 解雇の種類と注意すべきポイントを弁護士が解説
- 問題社員について解雇するのではなく交渉によって会社都合退職という形で合意退職による解決ができた事例
- 遅刻や欠勤を繰り返す問題社員を放置するリスクとは?企業が知っておくべき対応方法について弁護士が解説
- 業務の指示に従わない社員にどう対応する?問題社員対応について弁護士が解説
- 非違行為のある社員とは?企業の適切な対応方法について弁護士が解説
- ハラハラ(ハラスメントハラスメント)への対応について弁護士が解説
- 建設業における契約書のポイントについて弁護士が解説