トラック運送業における労務管理その10-出来高給を採る場合の割増賃金の計算方法について-

浜ちゃんが最近,物流業界に興味を持っているとの噂を聞き,相談に来られた運送会社S社のK社長。

今回もトラック運送業における労務管理について浜ちゃんに相談しています。

 

割増賃金の基本的な計算方法は?

K社長

「前回お話ししたように当社ではトラックのドライバーに対して

 固定給と出来高に応じた歩合給を支給する賃金体系をとっています。

 今日は,このような体系をとっている場合の割増賃金の計算方法を教えて欲しいのですが・・」

 

浜ちゃん先生

「わかりました。ただ,まずは割増賃金の計算方法の基本から確認していきましょう。」

 

 

K社長

「お願いします。」

 

浜ちゃん先生

「労働基準法37条1項本文は,時間外労働・休日労働をさせた場合には

 

 通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の2割以上5割以下の範囲

  それぞれ命令で定める率以上の率で計算して割増賃金を支払わなければならない」

 

 と規定しています。」

 

 

1ヵ月60時間以上の時間外労働をさせた場合の割増率は?

K社長

「それに1ヵ月に何時間以上かの残業をさせた場合には

 割増率が上がるという規定があるんでしたよね?」

 

浜ちゃん先生

「よくご存じですね。同じ労働基準法37条1項但書に

 

 「当該延長して労働させた時間が1箇月について60時間を超えた場合においては,

  その超えた時間の労働については,

  通常の労働時間の賃金の計算額の5割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。」

 

 との規定があります。」

 

K社長

「当社は中小企業なので,この5割以上の割増率の適用がない

 思っているのですが,そういう理解で大丈夫ですか?」

 

浜ちゃん先生

「現在(2021年)は適用されませんし,2023年3月31日までは適用されませんが,

 2023年4月1日以降は適用されることになりますので注意してください。」

 

K社長

「それは要注意ですね。当社の場合,時間外労働が1箇月当たり

 60時間を超えることもあるので減らす努力をしなくてはいけませんねぇ。」

 

 

休日労働・深夜業の割増率は?

 

浜ちゃん先生

「そうですね。これも確認なんですけど

 午後10時から午前5時までの深夜労働についての割増賃金率が2割5分以上

 休日労働の割増率が3割5分以上というところも一応確認しておいてください。」

 

K社長

「了解しました。時間外労働かつ深夜業については5割以上(2割5分+2割5分),

休日労働かつ深夜業については6割以上(2割5分+3割5分)の割増率になるんでしたよね?」

 

浜ちゃん先生

「そのとおりです。これを前提に最初にご質問いただいた点についてお話ししていきましょう。」

 

 

 

出来高給制をとる場合の割増賃金の計算方法は?

K社長

「当社のように出来高給制をとる場合,時間外労働が発生しても,その時間分の賃金は

 出来高給という形で所定労働時間の賃金に上乗せされることになります。

 そうすると固定給だけをベースに割増賃金を計算さればいいと思うのですが,どうでしょうか?」

 

浜ちゃん先生

「それは違いますねぇ。出来高給制の賃金であっても,

 時間外・休日労働に対して割増賃金を支払わなくてはいけません。

 

K社長

「固定給の場合はわかるのですが・・」

 

浜ちゃん先生

「固定給が月給の場合,その金額を月の所定労働時間数

 (月によって所定労働時間数が異なる場合には,1年間における1カ月平均所定労働時間数)で

 除して(割って),1時間当たりの賃金を計算します。

 

 固定給部分の時間外単価(A)

 =固定給÷1年平均の1カ月当たり所定労働時間数」

 

K社長

「そこまでは分かりますが,出来高部分はどうなりますか?」

 

 

浜ちゃん先生

「出来高給については,その賃金算定期間において出来高制によって計算された

 賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で

 除した(割った)金額として1時間当たりの賃金を計算します。

 

 出来高給部分の単価(B)

 =出来高給÷その月の総労働時間数」

 

K社長

「どうしてそのような計算方法になるんですか?」

 

浜ちゃん先生

「出来高給については,所定労働時間内の労働と時間外労働を含めた全労働時間の

 売り上げ等を対象に算定し,支払うものだからです。」

 

K社長

「そうすると当社ではどのような計算方法で計算することになるのでしょうか?」

 

浜ちゃん先生

「固定給部分の時間単価をA,出来高部分の単価をBとしますと以下の計算式で

算出することが出来ます。」

 

 割増賃金=(A×1.25+B×0.25)×時間外労働時間数

 

K社長

どうして固定給部分の時間単価には1.25をかけるのに,

 出来高給部分の単価には0.25をかけるのでしょうか?

 

浜ちゃん先生

「出来高給の場合,時間外労働に対する時間当たり賃金すなわち1.0の部分については

 出来高給部分で既に計算されていますので(支払われていますので),

 0.25部分だけを計算すればいいんです。」

 

K社長

「そうなんですねぇ。今日も勉強になりました。今後ともよろしくお願いいたします。」

 

浜ちゃん先生

「こちらこそ,よろしくお願いいたします。」

 

 

さいごに

当事務所においては,これまでも労務管理を中心とする中小企業の顧問業務,

宅建業や不動産取引にかかわる紛争の解決に注力して参りましたが,

今後は流通・運送業界の法律問題の解決,顧問業務にも力を入れて取り組むことになりました。

 

このブログにおいても有益な情報発信ができるよう努力して参りますので,よろ

しくお願いいたします!

 

執筆者  弁護士 浜田 諭