【コラム】弁護士が教える法改正 「時間外労働の上限規制への対応」その2

宮崎県内で建設業や電気工事業を営むS社を経営するK社長,2年前にS社の経営を前社長から引き継いでからS社が抱える問題を解決するために浜ちゃんと顧問契約を結んだところである。

浜ちゃん先生
前回のK社長と私の話、ご覧になりましたか?」

 

K社長
「拝見しました。時間外労働・休日労働を行う業務の区分を細分化し、業務の範囲を明確にしましょうというところで終わっていましたよね?他にもあるんですか?」

 

浜ちゃん先生
「N社は電気設備などに故障が生じた場合の業務で時間外労働を行うケースが多くて従業員の時間外労働が長くなっているという話をされていましたよね?1ヶ月あたりの時間外労働って何時間くらいになっていますか?」

 

K社長
「かなり長いんですよ。長い従業員だと月に80時間を超えるのが普通になっていますね。」

 

浜ちゃん先生
「えっ・・・・そんなに長いんですか?」

 

K社長
「でも当社は36協定も締結していますし時間外労働の分の残業代はきっちり計算して支払っていますから大丈夫ですよね。」

 

浜ちゃん先生
「いやいや、それ自体は良いんですけど現在の時間外労働時間の長さは問題ですよ。」

 

K社長
「どう問題なんですか?」

 

浜ちゃん先生
「前回お話ししたように36協定の範囲内であっても労働時間が長くなると過労死リスクがありますし,その場合には貴社に安全配慮義務違反があったとされて多額の損害賠償責任を負担されるリスクがあります。」

 

S社長
「当社は建設業ということで時間外労働の上限規制について猶予期間があると聞いたのですが,猶予期間中もリスクがあるということでいいですか?」

 

浜ちゃん先生
「そのとおりです。
確かに貴社の事業には猶予期間が適用されますが(上の図参照),時間外労働の上限規制に係る労基法の適用時期と長時間労働をさせることによるリスクは関係ありません。猶予期間中もリスクがあるということです。」

「また限度時間の規制が猶予されている事業・業務についても、限度時間を勘案し、労働者の健康・福祉を確保するよう努める義務がありますので、この点も注意が必要です。」

 

S社長
「それじゃあ,その辺りを解説してくださいよ。」

 

(1)はじめに

前回は時間外労働の上限規制の実務上のポイントの一部についてお話ししましたが,今回は前回お話しできなかった点をお話ししていきましょう。前回は①から③までお話ししましたので今回は④からですね。

 

④臨時的な特別の事情がなければ,限度時間(月45時間・年360時間)を超えることができません。また限度時間を超えて労働させる場合は,できる限り具体的に定めなくてはなりません。この場合にも、時間外労働は、限度時間内にできる限り近づけるように努めてください(指針 第5条)。

ここに「限度時間を超えて労働させることができる場合」を定めるにあたっては,通常予見することができない業務量の大幅な増加等に伴い臨時的に限度時間を超えて労働させる必要がある場合をできる限り具体的に定めなければなりません。」

 

例えば「業務の都合上必要な場合」×
「業務上やむを得ない場合」×

これは恒常的な長時間労働を招く恐れがあるので認められないということになります。
この点は記載例を実際に見て頂く方が分かりやすいと思います。

 

「時間外労働の上限規制 わかりやすい解説」(厚労省ほか)より引用

 

この記載例を見ると「突発的な仕様変更」「製品トラブル・大規模なクレームへの対応」「機械トラブルへの対応」が掲げられていますね。

 

⑤ 1カ月未満の期間で労働する労働者の時間外労働は、目安時間※を超えないように努めてください(指針第6条)。
※1週間:15時間 2週間:27時間 4週間:43時間

⑥ 休日労働の日数及び時間数をできる限り少なくするように努めてください(指針第7条)。

⑦ 限度時間を超えて労働させる労働者の健康・福祉を確保してください(指針第8条)。

ここに労働者の健康・福祉を確保する措置については次の中から協定することが望ましいことに留意してください。
(1)医師による面接指導
(2)深夜業(22時~5時)の回数制限
(3)終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
(4)代償休日・特別な休暇の付与

(5)健康診断
(6)連続休暇の取得
(7)心とからだの相談窓口の設置
(8)配置転換
(9)産業医等による助言・指導や保健指導

 

⑧ 限度時間が適用除外・猶予されている事業・業務についても限度時間を勘案し、労働者の健康・福祉を確保するよう努めなくてはいけません(指針第9条、附則第3項)

限度時間が猶予されている事業については先に掲げた表のとおりですし,新技術・新商品の研究開発業務については上限規制の適用が除外されていますが,いずれの場合にも労働者の健康・福祉を確保するよう努めなくてはいけないということになりますね。

 

時間外労働の上限規制については今回でひとまずおしまいです。

 

次回からは年次有給休暇制度の変更についてお話ししていこうと思います。

 

今回触れた点に限らず労務管理について社労士の先生に加えて弁護士を顧問として委任することにより労使の紛争予防につながると思いますので興味をお持ちの事業者の皆様,お気軽にご相談ください。