無料求人広告をめぐる詐欺トラブル解決のポイント
中小企業で頻発する無料求人広告をめぐる詐欺トラブル解決のポイントについて今回はお話しいたします。
無料求人広告詐欺がはびこる背景
端的に言うと人手不足です。特に三大都市圏以外の中小企業における人手不足感は深刻であるというのは厚生労働省や日銀が集計した各種統計にも表れているところです。
宮崎県の各市町村にある中小企業の多くが人手不足で悩んでおり,ハローワークなどに求人を出し続けているという企業も少なくありません。そしてハローワークのインターネットサービスによって求人を出している企業(出し続けている)の情報が簡単に入手できます。求人広告についての見込み顧客は簡単に見つかるということですね。
なお,無料求人広告詐欺に限らず事業者向けの詐欺まがい商法が厄介なのは特定商取引法や消費者契約法といった消費者法の適用がないことです。簡単な契約解消方法であるクーリングオフなどは使えないということです。
このことから電話機リース詐欺,ホームページリース詐欺,防犯設備リース詐欺といった事業者向けの詐欺まがい商法がこれまでも問題になってきましたし,現在でもそういった事業者向けの詐欺まがい商法は発生し続けています。無料求人広告詐欺は事業者向け詐欺まがい商法の現在のトレンド(この表現が適切かどうかは別として)と言って良いと思います。
無料求人広告詐欺の手口
私自身、相談を受けることが多く、そのうち何件かは交渉案件として受任して解決に至ったものも複数件あるのですが,どの案件についても入り口は全て同じです。電話営業です。電話で「今なら2週間求人広告を無料で掲載できます。広告を見た方から応募があって良い方が採用できるかもしれませんよ。」等と言って勧誘してきます。業者によって「無料」というところの押し出しが強いところとそうでないところがあるようですが,大差はありません。
そして,営業を受けた方(多くが一般の社員の方であり社長や役員であることは稀です)興味を示すと無料掲載への申込みに必要な書類を会社にFAX送信してきます。これを記入して申し込めば無料掲載がいつから始まりますとの記載がされている申込書であることが多いようです、申込書の中に契約書という表記が存在するものもあります。
そしてFAX送信をすると無料掲載期間とされている時期から広告掲載が始まります。会社によっては広告イメージを掲載前にメールなどで連絡してくるところもあるようです。
無料掲載期間が終了に近づいて会社から連絡をすると解約の方法について細かい指定をしてくる会社,解約には容易に応じないというスタンスの会社,解約の話をしようとすると連絡が取れなくなる会社,不誠実な対応をして解約を防ごうとする会社が存在します。
このような会社でなくても,勧誘の際には「無料掲載期間満了前にこちらから連絡するので有料に移行することはないですよ。」と言っていたのに、連絡をして来ずに会社の方が解約するのを忘れてしまうというパターンもあります。
また単純に会社の担当者が無料掲載期間の終わる時期を失念していて,気づいたら有料掲載期間に入っており請求書が送られてきて慌てるというパターンもあります。いずれのパターンでも、業者から有料広告掲載期間に入ったとして高額な広告費用を請求され、そこで困って弁護士に相談してこられます。
無料求人広告詐欺に巻き込まれた場合にやってはいけないこと
絶対に広告費用を支払ってはいけません。いったん広告費用を支払ってしまうとそれを取り戻すのが厄介です。こちらから支払い済みの費用の返還を求めるというアクションが必要になるからです。
無料求人広告詐欺を行っている会社は、任意で広告費用を返還することはありませんので、こちらから訴訟提起をして返還を求めることになるのですが、支払っている広告費用が20万円~60万円くらいであるケースが多く,訴訟提起の際にかかる時間や費用(弁護士費用等)を考えると費用倒れになります。費用対効果を考えると割に合わない展開となり、結果的に泣き寝入りすることになるケースが多くなります。広告費用を支払わないでそのまま無視するという方法もあるのですが,業者は無料広告掲載期間の終了を理由として有料サービスへの移行として広告料を請求,その後の掲載期間の更新でさらに広告料を上乗せ請求ということをやりかねません。最初は「どうせ支払わなくていいや,ネットで検索したら支払わなくていいって書いてあったし。」と思っていたものの,請求がどんどん来る,請求額が上がってくるうちに不安になってしまって、不安から楽になりたいという気持ちから支払ってしまうというパターンになることも考えられます。その段階でも不安になって支払わないまま弁護士に相談するという選択肢をとっていただけるのであれば,まだましですが。
無料求人広告詐欺トラブルについて弁護士に相談,案件として依頼する意味
さて無料掲載期間内に解約できないまま有料期間に移行して広告費用を請求された段階で何をすべきかというと、業者に対して請求を拒絶する内容の文書を送ることです。この文書でどのような主張をするのかというのが最も重要です。無料求人広告を取り扱っている法律事務所の解説では、詐欺、錯誤に基づく取り消しを主張すべき、公序良俗違反での無効を主張すべきと記載しているものが多いように思えますが、契約の成否から争えると個人的には考えております。広告業者は電話1本、FAX送信1本で契約の成立とその後の有料広告掲載期間への移行を理由に広告料を請求してきますが、掲載申込書に会社のザバン・法人印が捺印されているケースも少なく仮に捺印されているとしても電話やFAX送信を担当した社員に契約の締結権限があるかどうかなど業者は確認していません。
また契約書自体は交わされていないケースがほとんどで契約書に変わる書類も不十分、請求の根拠となっている文書も不十分(契約締結権限がある人が作成していないという点で)ということで契約の締結を否定し、仮に契約が成立しているとしても詐欺、錯誤、公序良俗違反といった構成で争うという形になります。さらに仮に契約が成立しているとしても、これ以上の契約更新はしないとの記載も必要なケースが多いと思います。
以上に述べたような内容の文書を中小企業の経営者や総務担当者が日頃の業務の合間に作成して相手方に送付するというのは大変でしょうし,このような後ろ向きの業務(お金を生み出さない業務)に会社のリソースを割くのは合理的ではありません。さらに金額は大きくないとしてもこのようなトラブルの渦中にいるというのは経営者や担当者にとっては心理的な負担が大きいものです。裁判を起こされたらどうしよう、会社のイメージが傷つくのではないか、取引先や顧客に知られると悪影響があるのではないか等、不安は広がりがちです。
そこで弁護士に相談して文書の作成を依頼したり、交渉案件として依頼したりというニーズが生まれることになります。会社のリソースを割かずに、かつ経営者や担当者の心理的な負担を解消するというのが動機になりますね。
当事務所が無料求人広告詐欺トラブルについて提供しているサービス
当事務所としましては
① 代理人弁護士として請求を拒絶する文書を作成して内容証明郵便で送付するという簡易なサービス(この場合には書面を送付した後の業者とのやり取りは想定していません)
◆5万5,000円(消費税込み)~
② 請求を拒絶する文書を作成して内容証明郵便で送付し,それに対する業者からの反応に対しても代理人として対応するという交渉案件としての対応
◆着手金11万円(消費税込み)~
◆報酬 5万5,000円(消費税込み)~
の大きく2つのサービスを用意しております。
また、無料求人広告トラブルでの交渉案件程度であれば通常の顧問業務の範囲内(着手金については無料)で対応しておりますので、もしこれを機会に顧問弁護士を依頼したいという会社がおられましたら顧問契約をいただいて、その業務として交渉対応させていただくということも可能です。その場合には実費と報酬以外はいただかずに対応することが可能です。
元々、顧問弁護士を置くことに興味をお持ちの会社の方にとっては顧問契約の方がメリットがあるかもしれませんので前向きにご検討いただけると幸いです。
顧問契約についてはこちら
☆当事務所においては,労務管理を中心とする中小企業の顧問業務,宅建業や不動産取引にかかわる紛争の解決に注力して参りましたが,無料求人広告詐欺のような事業者向けの詐欺トラブルについても解決に力を入れて取り組むことになりました。
このブログにおいても有益な情報発信ができるよう努力して参りますので,よろしくお願いいたします!
執筆者 弁護士 浜田 諭
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