退職代行を使われたらどうする?対応のポイントについて弁護士が解説
今回は顧問先企業から相談を受けることが多いテーマ「退職代行を使われた場合の対応」についてお話ししていこうと思います。
お話しする内容は以下のとおりです。
1 退職代行とは
2 退職代行における退職の申入れは拒否できるのか
3 退職代行を使われた場合に注意すべきポイント
4 退職代行を使われないための予防策
5 従業員の退職に関して弁護士に相談すべき理由
近年、労働現場で急速に普及し、もはや珍しい光景ではなくなったのが「退職代行サービス」です。ある日突然、見知らぬ業者から電話や通知が届き、「本日をもって〇〇は退職します」と告げられる。経営者や人事担当者の皆様にとっては、寝耳に水の話であり、戸惑いや憤りを感じるのも無理はありません。
しかし、感情に任せた対応は、法的な紛争(バックペイの請求や慰謝料請求など)を招くリスクがあります。今回は、使用者側に立って労使紛争を取り扱っている弁護士の視点から、退職代行を使われた際の適正な実務対応について詳しく解説します。
1 退職代行とは
退職代行とは、労働者本人に代わって、退職の意思表示を会社に伝達するサービスを指します。 大きく分けて以下の3つの運営形態があります。
(1)民間業者
労働者の退職の意思を「伝達」するのみであり交渉権はない。代理人ではなく使者(メッセンジャー)のようなものだとご理解ください。
(2)労働組合
団体交渉権を背景に、退職日の調整や有給消化の交渉が可能です。
(3)弁護士
労働者の代理人として、未払賃金の請求や損害賠償問題も含めた全ての交渉が可能です。
多くのケースでは民間業者や労働組合が窓口となりますが、いずれにせよ「本人が会社と直接話したくない」という強い拒絶反応を示している状態であることを理解する必要があります。
2 退職代行における退職の申入れは拒否できるのか
結論から申し上げますと、原則として退職を拒否することは困難です。
民法第627条第1項により、期間の定めのない雇用契約(正社員など)において、労働者はいつでも解約の申入れをすることができ、申入れから2週間が経過すれば雇用契約は終了します(民法第627条第1項 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する)。
就業規則に「退職は1ヶ月前までに申し出ること」と定めている企業も多いですが、判例上、民法の2週間という規定が優先されると考えられています。そのため、「後任が決まるまで辞めさせない」「本人と直接話さなければ認めない」といった対応は、法的に不利な状況を作り出すだけとなります。
3 退職代行を使われた場合に注意すべきポイント
実際に通知が来た際、リスクを最小限に抑えるためのポイントは以下の4点です。
① 相手方の属性を確認する
連絡してきた者が「弁護士」なのか「労働組合」なのか、あるいは「民間業者」なのかを確認してください。民間業者の場合、退職日の調整や未払残業代の交渉などを行うことは「非弁活動(弁護士法72条違反)」に該当する可能性があります。ただし、業者を問い詰めることが解決に繋がるわけではないため、まずは冷静に相手の身元を記録しましょう。
② 本人の意思確認と備品の返却
「本当に本人の意思か」を確認するため、委任状の写しを求めます。また、貸与しているパソコン、健康保険証、社員証などの返却方法、および離職票の送付先などを整理します。これらは代行業者の「郵送でやり取りしたい」という要望に応じるのが、余計なトラブルを避ける近道です。
③ 感情的な連絡を控える
「一度会社に来て説明しろ」と本人に直接電話やメールを繰り返すことは避けましょう。これが「嫌がらせ」や「ハラスメント」と見なされ、慰謝料請求の根拠にされるリスクがあるからです。
④ 有給休暇の消化への対応
退職代行を利用する労働者の多くは、退職日までの期間をすべて有給休暇の消化に充てようとします。会社には「時季変更権」がありますが、退職日が決まっている場合、その後に有給を振り替える日が残っていないため、実効性を持たないことがほとんどです。基本的には認めざるを得ないケースが多いと心得てください。
4 退職代行を使われないための予防策
退職代行を使われるということは、社内に「辞めたいと言い出せない空気」や「引き止めが厳しすぎる過去」があるというサインでもあります。
予防策としては以下のようなものが考えられます。
(1)風通しの良い組織づくり
定期的な労働者と上司や人事担当者との1on1ミーティングを実施し、不満が蓄積する前に吸い上げる体制を構築するのが効果的です。
(2)退職ルールの明確化
円満退職のフローを就業規則やマニュアルで明確にし、退職のハードルを心理的に下げておくこと(結果として代行費用を払うより直接話す方が楽だと思わせる)。
(3)ハラスメントの根絶
上司のパワハラ等が原因で(それを理由に)代行を使われるケースが圧倒的に多いため、管理職教育を徹底する。
5 従業員の退職に関して弁護士に相談すべき理由
退職代行への対応を弁護士に依頼・相談することには、単なる「窓口業務の代行」以上のメリットがあります。
(1)「非弁活動」への適切な牽制
相手が法的権限のない業者である場合、弁護士が介入することで適切な法的主張を行い、過大な要求を退けることができます。
(2)二次トラブルの防止
退職後に「残業代未払い」や「パワハラ」を理由とした訴訟に発展させないよう、合意書(包括的な清算条項を入れたもの)の作成を含めた出口戦略を練ることが可能です。
(3)経営者の精神的負担の軽減
突然の退職代行は経営者にとってショックな出来事です。弁護士が法的な防波堤となることで、経営に集中できる環境を取り戻せます。
退職代行への対応を誤ると、SNSでの拡散や労働基準監督署への通報など、企業のレピュテーション(評判)を大きく損なう恐れがあります。「たかが退職」と軽視せず、初期対応こそ慎重に行うべきです。
6 当事務所のサポート内容
当事務所は多くの会社の顧問業務を日常的に行っており,その中で退職代行業者から連絡があったがどう対処すればよいのかという相談を受けるケースも少なくありません。また退職代行への対応のみならず問題社員への退職勧奨、解雇を含めた問題社員との雇用契約終了に向けてのアドバイス,退職勧奨の方法等についての助言、雇用契約終了について紛争化した場合の会社の代理人としての交渉対応,訴訟対応などを行っております。
退職代行への対応も含めた社員との雇用契約終了(解雇,退職等)に向けて弁護士から適切な助言を得るには,紛争化した後のスポットでの対応を依頼するよりも,日頃から問題社員対応について弁護士から助言を得られる体制作りをされること(顧問弁護士を依頼されること),顧問弁護士に問題社員対応等を相談することを習慣にされることをお勧めします。このことにより会社の業務や社内での人間関係を理解した上での助言を顧問弁護士から得ることが可能となるからです。
当事務所との顧問契約を検討されたい会社経営者の皆様,人事担当者の皆様は遠慮なくお問い合わせください。
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