社外の既婚者と交際(不倫)している社員に対する懲戒処分可否を解説
浜ちゃんが最近,物流業界に興味を持っているとの噂を聞き,相談に来られた運送会社S社のK社長。
今回もトラック運送業における労務管理について浜ちゃんに相談しています。
1.社外で不倫をしている社員が負う法的責任はどのようなものか
K社長
「最近,当社の社員が交際している方の夫から連絡がありました。
その男性からは当社の社員がその男性の妻と不倫をしているので
当社が処分してくれという要望が出されました。
このような場合,どう対処すればよろしいでしょうか?」
浜ちゃん先生
「運送業界に限らずこの手の私的なトラブルが社内に持ち込まれるケースはありますねぇ。
まず不倫が法的にどのように評価されるかを確認していきましょう。」
K社長
「お願いします。」
浜ちゃん先生
「不倫という表現は法的には正確な用語ではないので不貞行為という表現を使いますね。
不貞行為とは配偶者が以外の者と性的関係を結ぶことをいうとされていますが
(最高裁昭和48年11月15日判決),離婚の理由となる「不貞な行為」
(民法770条1項1号)は,これより広い意味で使われているようです。」
K社長
「本件の場合,交際している女性の夫との関係で社員はどのような法的責任が生じるのでしょうか?」
浜ちゃん先生
「女性の夫に対して慰謝料の支払い義務が生じる可能性がかなり高いですね。」
2.社外で不倫をしている社員に懲戒処分を下すことはできるか?
K社長
「しかし,それは女性の夫と当社の社員との問題であり,当社が社員に対して
指導監督するような内容でも,ましてや懲戒処分するような内容でもないですよね。」
浜ちゃん先生
「そのとおりです。社員が誰と恋愛するかは社員の私的な問題ですので,
会社が懲戒処分をしてやめさせるようなものではないですね。
原則として懲戒処分等はできないということになります。」
3.例外的に懲戒処分を下すことができるのはどのようなケースか?
K社長
「原則ということは例外的に社員の不貞行為について懲戒処分等を下せる場合があるということですか?」
浜ちゃん先生
「そのような場合があるかどうかは懲戒処分とはどのようなものなのかから遡って考えていけばわかります。
懲戒処分というのは,
企業秩序や職場の規律を維持するために,これを乱した社員に対し,就業規則に基づいて行う制裁です。
そうすると社員の私生活上の言動が企業秩序や職場の規律に支障を与えているような
例外的なケースでは懲戒処分を行うことができるということになります。」
K社長
「具体的にどのようなケースが考えられるでしょうか?」
浜ちゃん先生
「例えば,今回の社員がドライバーである場合,ドライバーが荷主である会社を訪れるうちに,
その会社の女性社員(既婚)と親しくなり不貞関係になったとします。
そして,このことが原因でトラブルが発生して貴社と荷主である会社の取引に
悪影響を及ぼしたような場合にはドライバーの私的な問題の領域を超えています。
このような場合には懲戒処分を下すことも可能ではないかと思います。」
4.今回の問題で社員の交際相手の夫にとるべき対応
浜ちゃん先生
「冒頭の質問にお答えしていなかったですね。
社員の交際相手の夫から貴社に連絡があった場合ですが,社員の私的なトラブルについて
会社としては対応しかねますので直接本人とやり取りをしてくださいと応対することになろうかと思います。」
K社長
「直接本人とやり取りをしたいので本人の連絡先を教えてほしいとの申し出があった場合はどうですか?」
浜ちゃん先生
「社員の個人情報についてお伝えするわけにはいきませんと回答するのが良いでしょう。」
K社長
「今回の件で社員に対して処分をするのかと聞かれた場合にはどう答えればよいですか?」
浜ちゃん先生
「処分しないという結論だとしてもそれを伝える必要はありません。
「処分の有無については弊社内の問題ですのでお答えできません。」と
回答するのが良いのではないかと思います。」
K社長
「なるほど,社員のプライベートな問題について
会社は関わらないというのが基本であるという理解でよいですか?」
浜ちゃん先生
「そのような理解で大丈夫です。」
K社長
「今日も勉強になりました。今後ともよろしくお願いいたします。」
浜ちゃん先生
「こちらこそ,よろしくお願いいたします。」
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さいごに
☆当事務所においては,これまでも労務管理を中心とする中小企業の顧問業務
宅建業や不動産取引にかかわる紛争の解決に注力して参りましたが,
今後は流通・運送業界の法律問題の解決,顧問業務にも力を入れて取り組むことになりました。
このブログにおいても有益な情報発信ができるよう努力して参りますので,よろしくお願いいたします!
執筆者 弁護士 浜田 諭
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