【コラム】「働きやすい職場認証制度」について その2
浜ちゃんが最近,物流業界に興味を持っているとの噂を聞き,相談に来られた運送会社S社のK社長,前回に引き続き「働きやすい職場認証制度」について質問しています。
K社長
「前回は働きやすい職場認証制度について大まかなところをお聞きしたのですが,今回は認証項目などについて教えてください。」
浜ちゃん先生
「認証項目というのは,この認証制度において合否を判定するための項目で,27項目を満たす必要があります。」
K社長
「全てを満たすのは大変そうですね。」
浜ちゃん先生
「この27の認証項目の中には複数の小項目が設定されていて,すべての小項目を満たさなくても,設定されていた基準 例えばこの項目内での合計点が何点以上あれば大丈夫というものもあるので,全てを満たすのは決して難しくないと思います。」
K社長
「27の認証項目ですが,何個かの分野に分かれていると聞きました。具体的にどのような分野に分かれるのですか?」
浜ちゃん先生
「試行運用が始まる一つ星認証を前提にお話ししますね。」
K社長
「その後,二つ星,三つ星とグレードアップすることもあり得るんですね。」
浜ちゃん先生
「そうですね。まずは一つ星認証を得ないとグレードアップはあり得ませんので,まずは一つ星認証を目指すということです。」
「話が脱線しましたが,取組みの対象となるのは以下の6分野です。このうち6つめについては一つ星認証では求められていない部分です。
A 法令遵守等
B 労働時間・休日
C 心身の健康
D 安心・安定
E 多様な人材の確保・育成
F 自主性・先進性 」
K社長
「とすると27の認証項目がこの6分野,一つ星認証だと5分野に分けられるということですね?」
浜ちゃん先生
「そういうことです。」
K社長
「それではAの法令遵守の分野に振り分けれる認証項目について教えてください。」
浜ちゃん先生
「この分野に振り分けられる認証項目は9つあります。そのうち1から4までは各種法令の違反や処分の事実の有無になりますし,また8は「認証を取り消されてない」9は「認証事業者でないにも関わらず認証マークを表示していない等」という制度の存在,認証を受けていたことを前提とした項目です。そうすると残りの3つが重要かなと思います。」
K社長
「認証項目でいうと5からですね?」
浜ちゃん先生
「そうです。5の項目ですが,就業規則が制定され,労働基準監督署長に提出されている。また,従業員に周知されている。というものです。」
K社長
「就業規則って作成していて当たり前なんじゃないですか?」
浜ちゃん先生
「実は,常時10人以上の労働者を使用する使用者には就業規則の作成及び届出が義務付けられていますが,より労働者が少ない使用者には義務付けられていないんです。」
K社長
「そうなんですねぇ。就業規則は全ての使用者が作成・届出しなくてはいけないものだとばっかり思っていました。義務がない使用者が作成・届出すれば,よく頑張っているという評価になりますもんねぇ。」
浜ちゃん先生
「そうですね。仮に就業規則が存在しないと、従業員全体に適用される労働条件や服務規律が明らかにならず従業員の労務管理に支障を来すことになります。
また,特に従業員に問題行動があった場合に減給や降格といった懲戒処分を行うことができず会社内の秩序を維持することが出来なくなってしまうという問題があります。
そうすると就業規則の作成は義務のある使用者でなくてもしておいた方が良いということになりますね。」
K社長
「認証項目6は何ですか?」
浜ちゃん先生
「36協定が締結され,労働基準監督署に提出されている。また,従業員に周知されている。」というものです。
K社長
「36協定って時間外労働に関するあれですよね。当社は締結して提出もしているのですが,この協定について念のため教えてください。
浜ちゃん先生
「従業員を雇用している者が従業員に時間外労働(原則として1日8時間、1週40時間を超える時間外労働や午後10時から午前5時までの深夜労働と週1日の休日の労働のこと)を行わせるためには時間外・休日労働のための労使協定を締結しなくてはなりません。
この協定の根拠条文が労働基準法36条であることから、36協定と呼ばれています。
36協定は社内に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合には、その労働組合と、このような労働組合がない場合には労働者の過半数を代表する者との間で書面による協定を交わして、会社を所轄する労働基準監督署長へ届け出る必要がある。
したがって、貴社のように労働組合がない場合でも、労働者の過半数を代表する者との間で書面による協定を交わし、労働基準監督署長へ届け出なければならないことになります。」
K社長
「ありがとうございます。社内労組がなくても届出をしなくてはならないという話は以前も伺いましたね。」
浜ちゃん先生
「そうですね。認証項目の7についてお話ししますね。これは「従業員と労働契約を締結する際に,労働条件通知書を交付し,説明を行っている。」というものです。この根拠となっているのは労働基準法の15条1項になりますね。
K社長
「労働条件の通知にあたって労働条件を適用する部分を明確にして就業規則を交付しても良いという話になっていたと思うのですが・・・そういう形でも大丈夫ですかね?」
浜ちゃん先生
「ご指摘があったのは労働基準法の一部を改正する法律の施行について(平成11年1月29日基発第45条)で許容されている通知方法ですね?
就業規則の交付による通知を行っていた場合であっても,この認証制度では別途労働条件通知書が必要とのことです。」
K社長
「そうなんですねぇ。わかりました。」
浜ちゃん先生
「次回は認証項目の分野B 労働時間・休日についての認証項目からお話ししていこうと思います。引き続きよろしくお願いいたします。」
自動車運転事業者の「働きやすい職場認証制度」の手続等については一般財団法人日本海事協会の特集サイト(https://www.untenshashokuba.jp/)をご覧いただくのが最もわかりやすいと思います。
- 従業員のセクハラ問題|会社の責任について弁護士が解説
- 弁護士が解説!債権回収の時効 ~権利が消滅する前に知っておくべきこと~
- 問題社員を解雇するための手順とは?解雇をするための要件やポイントを解説
- 問題社員の放置は危険!企業が抱えるリスクと対応すべき事項を解説
- 従業員の競業避止について企業が対応すべきこと
- 【中小企業向け】人事担当者、会社経営者必見!違法にならない退職勧奨とは
- 契約書の内容を変更するには?中小企業様必見!弁護士解説コラム
- 未払い残業代を労働者から請求されたらどうするべき?
- 【中小企業向け】時間外労働が月に60時間超で割増賃金率が引き上げに!経営者が求められる対応とは
- ハラスメント発生時において企業が求められる対応とは