雇用契約が終了した後に元従業員から送られてきた文書への対応方法とは?
労働事件を浜ちゃんが多く扱っているとの噂を聞いて3年前に顧問契約を締結した有限会社K社,ここ2年ほどは相談することもなかったが,退職した従業員から文書が届いたことからK社のS社長が久しぶりに浜ちゃんの事務所を訪れて相談することとなった。
浜ちゃん先生
「お久しぶりです。以前,ご相談いただいていた案件は無事に終わって良かったですね。今回はどうしました?」
S社長
「実は2カ月前に退職した従業員から文書が届きまして,解雇予告手当を支払えと書いてあるんです。」
浜ちゃん先生
「その元従業員の退職時に退職届は提出されていますか?」
S社長
「それが・・・退職届は提出するように促したのですが,提出されなかったのです。」
浜ちゃん先生
「元従業員から退職の申し出があったことを裏付けるものが何かありますか?」
S社長
「後から言った言わないのトラブルになったらいけないと思いまして退職について話を聞いた時の元従業員との会話を録音しています。」
浜ちゃん先生
「その会話の内容ですが,社長の方が従業員に強く退職を迫ったりとか圧力をかけたりということはありませんでしたか?」
S社長
「そんなことはありません。以前から気にくわないことがあると辞めるという話をすることが多い従業員だったので,今回は念のために会話を録音しておこうと思って対応しましたし,自分から退職しようという従業員に圧力をかける理由はありません。」
浜ちゃん先生
「わかりました。退職後の処理ですが,自主退職扱いで処理をしていますね?」
S社長
「そうです。従業員の方から退職したいという話があって退職することになった
という経緯でしたので会社都合退職にする理由はありません。」
浜ちゃん先生
「話を伺っていると元従業員との雇用契約の終了については退職であり,貴社が解雇したと評価されることはなさそうです。解雇予告手当を支払う必要はありませんね。」
S社長
「元従業員からの文書の末尾に解雇予告手当を支払わなければ労働基準監督署に相談すると書いてあるのですが,大丈夫ですか?」
浜ちゃん先生
「自己都合退職であり,それを裏付けるものもあり元従業員からの退職の意思表示に問題がないというのであれば解雇予告手当を支払う必要はありませんし,労基署からの連絡があれば事実関係をきちんと伝えれば是正指導等をされることもありません。」
S社長
「どうして法的な根拠がない文書を元従業員は送ってきたのでしょうか?」
浜ちゃん先生
「退職届さえ出さなければ退職ではない。退職ではなくて自分が会社を辞めたのであるから会社から解雇されたのだという独自の考え方をとっているのかもしれません。ネット上で自分にとって都合の良い情報をつまみ食いして自分に有利に解釈して対応する方もいらっしゃいますので,そういうことかなと思います。」
S社長
「そうなんですね。従業員から退職届が提出されていなければ実態が退職であっても解雇扱いにされてしまうのかと不安になっていました。」
浜ちゃん先生
「そういう不安に付け込もうとする方もおられます。正しいことをしていると思っていても自信がない部分がある。そういう不安に付け込もうとする方は今回の元従業員に限った話ではありません。これからも,どう対応してよいのかが分からない文書が来ましたらすぐにご相談ください。」
S社長
「わかりました。今後ともよろしくお願いいたします。」
浜ちゃん先生
「こちらこそ,よろしくお願いいたします。」
今回触れた点に限らず労務管理について社労士の先生に加えて弁護士を顧問として委任することにより労使の紛争予防につながると思いますので興味をお持ちの事業者の皆様,お気軽にご相談ください。
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