運送業界ヒアリングレポート-運送業界の抱える課題と専門家による見解-

 

当事務所では、現在運送業界に特化したサービス提供を積極的に行っております。

今後、運送業向けのサービスを提供していくにあたり運送業の実情と解決を必要とする問題の所在、

問題解決にあたって当事務所が協力できることは何かを知るためにヒアリングを実施いたしました。

 

ヒアリングの実施概要

 

2020年12月から2021年1月にかけて、

運送会社・運送会社の労務管理を担当したことのある社労士の先生方・業界団体の方からヒアリングを行いました。

私自身が運送会社や業界団体に足を運んでお話を伺う形,

社労士の先生方からの電話でのヒアリングという2種類の形式をとっております。

運送会社2社、社労士6名、業界団体の方1名にご協力いただきました。

こちらのレポートでは、ご協力いただきました皆様へのヒアリング内容をもとに、運送業界が抱える問題と

それらの問題について感じられる弁護士としての見解をお伝えさせていただきます。

 

 

運送業界の実情について

人手不足

人手不足のためトラックの台数はあるもののドライバーの数が足りない事業所が多く、

自社で請けても運送できないので下請け,孫請けに出すことになるケースが多いようです。

このような状況下から、求貨求車サービスを利用する運送会社もあるとのことでした。

 

また、人材を選定する余裕もないことから問題のあるドライバーも採用せざるを得なくなり

採用後に問題が生じることも少なくないとのことです。

 

 

【専門家による所感・見解】

漠然と運送業界においても人手不足なのであろうと予想していたが,人手不足の実態と

それが契約形態や新しいサービスの利用にもつながっているとの理解はありませんでした。

人手不足を解消するための方策をとることも重要ですが、かかる実情の下で選択する契約形態や

サービスの利用を踏まえてどのように収益性を確保していくのかというのが課題だと考えます。

 

また人手不足の現状では運送会社が人を選べない実情もあることから、採用した社員の中から

問題社員が発生することは避けられないため適切な対応をできるかどうかが課題となります。

 

 

 

会社の規模等による差異の大きさ

会社の規模、トラックの保有台数、ドライバーの数、何を運んでいるのか、荷主がどこなのか など

様々な状況が関連しており、これらの状況によって各企業での経営状態が全く異なっています。

 

【専門家による所感・見解】

ヒアリングをする前には何を運んでいるのか、荷主がどこなのかの重要性に意識がありませんでした。

特に配送にノウハウを要する精密機器などの配送を請け負っている業者については荷主と良好な関係にあり、

また業務の改善についての交渉力もあるという話も伺いましたが、目から鱗でした。

 

 

 

新型コロナウイルスによる影響

東京や大阪へ配送した後の帰り荷のニーズが減っていて帰り荷の配送依頼を受けて

対価を得ることで利益を確保していた中小運送会社には非常に苦しい事態となっているようです。

 

【専門家による所感・見解】

こちらを出発するトラックが帰ってくる際に現地又は現地と出発地の間の土地から荷物を運んで帰ってくることがあり、

この帰り便で荷主からいただく対価で利益を確保している運送会社が多いというのは初耳でした。

新型コロナウイルスの影響で運送の依頼全体が減ったというシンプルな話ではなく、通常の運送のフローのうち

一部に影響が出ており,その一部というのが利益を確保する生命線であるという構図が理解できます。

 

 

 

運送における実情と建前の乖離

運送業界では、荷受けの時間制限は緩く、荷渡しの時間制限は厳しいという考え方があり、

各種の規制を守っていると荷渡しの期限に間に合わなくなるため

休憩時間を削ってトラックを走らせているドライバーが多い可能性が高いとのことです。

その結果,規制に違反してしまうという事態を招いてしまうことになります。

 

【専門家による所感・見解】

運送業界においてはドライバーの拘束時間,連続運転時間の基準等多くの規制が設けられていますが,

その全てを遵守するというのが難しい実情があるというのを実感しました。

「会社の規模等による差異の大きさ」とも連動しますが,各運送会社が荷主とどのような関係にあるのか,

何を運んでいるのか等にも注目して各運送会社の実情を正確に把握した上で

建前との距離をどう詰めていくのかが課題だと感じられる実態です。

 

 

 

荷待ち時間をどうするのか

運行プロセスの中で荷待ちの時間が長くなると全体の運行計画に影響が出るケースが多いこと、

その結果ドライバーが荷渡し期限に間に合わせるために無理をしてトラックを走らせてしまい

各種規制に違反する事態が生じること,また荷待ち時間について労働時間と評価せずに

この時間の賃金を支払っていない運送会社もかなり多いのではないかとの意見をいただきました。

 

【専門家による所感・見解】

荷待ち時間が予想できず,予想よりも長くなることがあると運行計画全体に影響するとの話は

至極最もな問題だと思います。荷待ち時間を削減すること,事前に予想できるようにすることは

荷主の協力が得られないと現実的には難しいのではないかと考えます。

 

 

 

陸運局・労基署との関係

許認可の関係で陸運局からの目を気にしている反面、労務管理における労基署からの

チェックについては意識が乏しい経営者がある程度見受けられる現状があるとのことです。

 

【専門家による所感・見解】

運送業界において会社の経営に直結する監督権限を有する国交省や陸運局から

目を付けられないかというところに意識が強くあるというのを実感しました。

また一方で、会社の経営に直接ダメージがない労基署からのチェックについては

意識が乏しい経営者もある程度おられるというのも感覚的には理解できます。

いかにそういった機関との関係性を構築するかがカギとなりそうです。

 

 

 

解決を要する問題

 

以上を踏まえて運送業界において解決を要する問題は整理をすると以下の4つにまとめられます。

(1)人手不足の解消
(2)会社の規模等に応じて生じる個別の問題(荷待ち時間解消を含む)
(3)実情を踏まえたうえでの各種規制に違反しないように対処していくこと
(4)陸運局,労基署と良好な関係を保てるか
 

 

運送業界の皆様が抱える問題解決にあたって当事務所が協力できること

まず大前提として各運送会社の実情を正確に理解することが必要で,その上で

以下下のような形で当事務所が協力できればと考えております。

 

(1)日常の労務管理において問題社員への対応を迅速にアドバイスすることによって
   経営者の精神的負担を軽減すること
 
(2)荷待ち時間の発生等による労働時間の増大,それに伴う残業代の発生について
   抑制するための予防的なアドバイス顕在化した場合(未払い残業代請求が来た場合)の対応
 
(3)許認可の問題や運送業界独自の労務管理への正確な理解と
   行政からの指導・監査への適切な対応をアドバイスすること

 

 

今後,当事務所が展開していくサービス

以上を踏まえて当事務所は以下のようなサービスを展開していきます。

 

(1)運送業界の皆様へのセミナー開催・メルマガ送信による情報発信
(2)運送業界の実情を踏まえたワンポイントアドバイスのご提供
(3)個別案件での代理業務の提供顧問契約での継続的なサービスの提供

 

今回ご協力いただきました運送業の関係者の皆さま、ありがとうございました。

継続して業界研究を進めてまいりますので、皆さまにも情報提供してまいります。

引き続きよろしくお願いいたします。

 

報告者:弁護士 濵田 諭

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