【コラム】中小企業のコンプライアンス経営のために!会社の基本的なルール(株主総会・取締役・監査役)について①
浜ちゃんが中小企業からの相談を多く受けていると知って相談予約を入れて来所された中小企業A社の代表者のT社長。
A社は乳製品の製造・販売を行っているメーカーで株主はT社長,T社長の先代の代表取締役であるK氏,K氏の妻であるMさんの3名,発行済み株式数は100株です。
今回は株主総会の開催についての相談に来られました。
浜ちゃん先生
「はじめまして。今日はどんな相談でしょうか?」
T社長
「私が代表取締役をしている当社は,私が7割の株式を持っており,残りの3割は私の実父であるKが2割,Kの妻であり私の実母であるMの方が1割をもっています。」
浜ちゃん先生
「そうすると貴社の発行済み株式総数が100株ですから,社長が70株,K氏が20株,Mさんが10株を持っているということになりますね。」
T社長
「そうです。KとMの方はMの実家のある東京に転居していて当社の経営には
全く関心がない状態です。」
浜ちゃん先生
「なるほど,そんな2人に貴社の株式の3割を保有させておくのは好ましくないですね。」
Y社長
「そうですね。いずれ2人から株式を買い取る等の対応をしようと思っているんですが,他に気になることがありまして・・」
浜ちゃん先生
「何ですか?」
Y社長
「私以外の株主2名が東京に転居してしまったので株主総会に読んでも面倒くさがって出てこなくなったんです。そのことから今では実際に株主総会を開催しなくなり,とりあえず開いたことにして株主総会の議事録等を作成しているだけです。」
「経営に関心のない株主2名が参加していないだけですし,仮に参加したとしても全体の7割の株式を私が保有しているので議案については私の意向で可決できるはずです。」
浜ちゃん先生
「それで?」
Y社長
「株主総会は開催しなくても問題ないですよね?」
浜ちゃん先生
「いやいや開催してください。」
Y社長
「どうしてですか?知り合いの中小企業でも同じように実際には株主総会を開催していませんが・・」
浜ちゃん先生
「K氏やMさんは身内ですが,株主同士の関係が悪化してしまった場合,株主総会が実際には開催されていなかったことを理由として,一部の株主が会社に対して。あるいは株主同士が訴訟を提起しあうなど,深刻な対立が生じる場合があるんです。」
Y社長
「具体的にはどのような事態になるんですか?」
浜ちゃん先生
「株主総会は法律で定められた事項及び会社に関する一切の事項を決議できます(会社法295条1項)。取締役会が設置された会社では,法律で定められた事項と定款で定められた事項について株主総会で決議します(同条2項)。
Y社長
「それで株主総会を開催しなかったらどうなるんですか?」
浜ちゃん先生
「株主等から株主総会不存在確認の訴え(会社法830条1項)を起こされ,その結果,その決議された事項に関する会社の活動に支障が生じるおそれがあります。」
Y社長
「その訴えは,誰が,いつまで提起できるのですか?」
浜ちゃん先生
「決議不存在を確認することについて法的な利益がある方であれば「誰でも」,
いつでも提起できます。」
Y社長
「そうすると当社の場合にも3割の株主のうちの誰か等から株主総会決議不存在確認の訴えを起こされる危険があるということですね?」
浜ちゃん先生
「そういうことです。定期的に株主総会を開いて,株主に会社の経営状態を説明する機会を設けることは,会社経営の見直しのきっかけにもなりますので,会社経営の安定にもつながると思いますよ。」
Y社長
「コンプライアンス(法令順守)を重視する経営が会社の経営の安定化にもつながるということですね?」
浜ちゃん先生
「そういうことです。」
Y社長
「次回も株主総会のあり方について聞かせてください。」
浜ちゃん先生
「了解しました。」
(2017年10月 日本弁護士連合会 弁護士業務改革委員会 作成
「創業支援のための中小企業コンプライアンス・チェックシートとその解説【事業者向け】のQ1①より引用)
今回触れた株主総会の開催に限らず,きちんと会社法等の法令を遵守するコンプライアンス経営が会社経営の安定につながるケースが多いと思います。
中小企業がコンプライアンス経営を行っていくにあたって顧問弁護士を委任して日頃から相談をできる体制を作るのも有益ではないかと思われます。
コンプライアンスを重視した経営に興味をお持ちの事業者の皆様,お気軽にご相談ください。
執筆者
日本弁護士連合会 弁護士業務改革委員会
企業コンプライアンス推進プロジェクトチーム副座長 弁護士 浜田 諭
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