【コラム】パワハラの防止を事業主に義務付ける改正法の施行を受けて②

浜ちゃんが企業コンプライアンスについて取り組んでいるとの噂を聞き,相談に来られたU社のY社長,

今回は前回に引き続きパワハラ防止対策が法制化されたことを受けて相談されています。

浜ちゃん先生

「前回はパワハラ防止のためにどのような措置を講ずべきかという話をしました

ね。」

 

Y社長

「前回は事業主がパワハラに関する方針の明確化や労働者に対するその方針の告知を図るといった話でした。」

 

浜ちゃん先生

「そうですね。今回は相談体制の整備という話をしましょう。」

 

Y社長

「相談体制の整備といっても抽象的でぴんと来ません。具体的にどのような対処が必要なのでしょうか?」

 

浜ちゃん先生

「相談への対応のための窓口(以下「相談窓口」)をあらかじめ定めて,労働者に周知しなくてはいけません。」

 

Y社長

「相談窓口を定めていると評価されるにはどうすればよいですか?」

「まずは相談に対応する担当者をあらかじめ定めなくてはいけないですね。これはガイドラインの4(2)イ①に記載があります。」

 

Y社長

「社内で対応しなくてはいけないんですか?それとも外部に委託しても良いんですか?」

 

浜ちゃん先生

「どちらでも構いません。相談窓口をあらかじめ定めていると認められる例としてガイドラインの4(2)イ②相談に対応するための制度を設けること,同③外部の機関に相談への対応を委託することが例示されていますから。」

 

Y社長

「相談体制の整備ですが,労働者への周知も必要なんですよね?」

浜ちゃん先生

「その通りです。相談体制があっても労働者が知らなければ相談体制は機能しませんから,窓口の部署や担当者を周知しなくてはいけません。」

 

Y社長

「相談体制の整備について他に配慮すべき点はありますか?」

 

浜ちゃん先生

「社内に相談窓口を設置する場合も外部に委託する場合にも共通することなのですが,公平性を確保することおよび相談者のプライバシーを保護することが重要です。」

 

Y社長

「もう少し具体的に説明してください。」

 

浜ちゃん先生

「たとえ窓口を設けても,その情報が漏れたり,相談者と行為者(加害者)の主張が公平に扱われなければ,労働者は窓口を信頼して相談しませんし,相談した後の不利益等を考慮して萎縮して相談しないと思いませんか。だからこそ公平性や相談者のプライバシー保護が重要なんです。」

 

Y社長

「社内に窓口を設置する場合に,担当する部署について何か具体的なアイデアがあれば教えてください。」

浜ちゃん先生

「例えば会社の担当役員が管轄するコンプライアンス委員会を窓口にするという会社もあるようです。」

Y社長

「なるほど。相談者のプライバシー保護と公平性確保という観点からどのような配慮をすればよいのかという具体例を教えてください。」

 

浜ちゃん先生

「相談者からパワーハラスメントに関する相談があった場合,申告された事実関係の有無を確認する必要がありますよね?」

 

Y社長

「そうですね。事実が分からないとそれがパワーハラスメントに当たるかどうかの評価もできませんから。」

 

浜ちゃん先生

「そうですね。相談者が申告している事実の有無を確認するために行為者(加害者)や第三者(パワハラとされる行為の目撃者等)から聴き取りをする必要が生じることがあります。その際にも相談者の承諾を得る必要があります。

あと当然のことですけど相談内容が窓口の部外には漏れないようにする必要がありますね。」

Y社長

「他に会社側で対応できることはありますか?」

 

浜ちゃん先生

「相談窓口の担当者が,相談に対し,その内容や状況に応じて適切に対処できるようにすることが必要ですね。」

 

Y社長

「一定のマニュアルを作ってそれに従って対応するということではないんですか?」

 

浜ちゃん先生

「相談者は行為者(加害者)に対して一律に何らかの対応をするのではなく,相談者が受けている言動等の性格・態様によって,状況を注意深く見守る程度のものから,上司,同僚等を通じて,行為者に対して間接的に注意を促すもの,直接注意を促すもの等事案に即して対応を行うことが必要なんです。」

 

Y社長

「その辺りを相談窓口に実践してもらうのは大変そうですね。」

 

浜ちゃん先生

「ですので,相談担当者や担当部署が適正に相談対応することができるように,研修を実施したりマニュアルを作成したりすることも効果的でしょう。」

Y社長

「一からマニュアルを作成するのは大変なんですが,何か参考になるものはないですか?」

 

浜ちゃん先生

「厚生労働省のハラスメント関係資料ダウンロード(https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/jinji/download/)には参考となるマニュアルや書式がアップロードされていますので利用を検討してみてはいかがでしょうか。」

 

Y社長

「ガイドラインの4(2)ロに「相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも配慮」との表現があるのですが,これはどういう意味なのでしょうか?」

 

浜ちゃん先生

「公正な立場に立って,真摯に対応するのは当然の前提として,相談者が相談窓口の担当者の言動等によってさらに被害を受けること(いわゆる「二次被害」)を防ぐための配慮をしなくてはいけないという趣旨が含まれています。」

 

Y社長

「そうなんですね。相談者の心情にきちんと配慮した対応ができるように先に述べられていた研修等を実施していかなくてはいけないですね。」

 

浜ちゃん先生

「今日,私の方が申し上げたことなのですが,厚生労働省が各都道府県の労働局長宛てに発している通達を参考にしています。令和2年2月10日付で発している通達です。」

Y社長

「その通達のタイトルを教えてください。」

 

浜ちゃん先生

「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律第8章の規定等の運用について」という通達で,雇均発0210第1号 令和2年2月10日ですね。https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T200213M0030.pdf

 

Y社長

「了解しました。今日はありがとうございました。」

 

浜ちゃん先生

「お疲れ様でした。」

 

 

今回触れたパワハラの点に限らず,きちんと労働基準法等の法令を遵守するコンプライアンス経営が会社経営の安定につながるケースが多いと思います。

中小企業がコンプライアンス経営を行っていくにあたって顧問弁護士を委任して日頃から相談をできる体制を作るのも有益ではないかと思われます。

コンプライアンスを重視した経営に興味をお持ちの事業者の皆様,お気軽にご相談ください。

執筆者

日本弁護士連合会 弁護士業務改革委員会 

企業コンプライアンス推進プロジェクトチーム副座長 弁護士 濵田 諭

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