運送業における休憩時間付与で注意すべきポイントを解説

浜ちゃんが最近,物流業界に興味を持っているとの噂を聞き,

相談に来られた運送会社S社のK社長。

今回もトラック運送業における労務管理について浜ちゃんに相談しています。

 

K社長

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。」

 

浜ちゃん先生

「こちらこそよろしくお願いいたします。今回は何についてお話ししましょうか?」

 

K社長

「運行スケジュールを組む際に,トラックドライバーが配送所等において

 荷物待ちで足止めされることがあるのですが,

 結果的に休憩時間を長くとらざるを得なくなります。」

 

浜ちゃん先生

「そういうこともありますよねぇ。」

 

K社長

「このように休憩時間を長くとることになるとドライバーから不満の声が出るんですよ。」

 

浜ちゃん先生

「荷渡しの時間に間に合わなくなるでしょうし,賃金の発生しない休憩時間が

 増えることを不満に思うドライバーは多いでしょうねぇ。」

 

K社長

「そうなんですよ。」

 

浜ちゃん先生

「本題に戻りますね。トラックドライバーであっても,労働者であることに変わりはありませんので

 休憩に関しては労働基準法の規定が適用されます。」

 

K社長

「ここで良く話題に上る自動車運転者の労働時間等の改善のための基準で何か触れられているんですか?」

浜ちゃん先生

「特に触れられていないのですが,行政解釈で特別な規制が設けられているので後から触れますね。」

 

K社長

「お願いします。先ほど休憩に関しては労働基準法の規定が適用されると言われましたが,

 具体的にどのように決まっているのかを教えてください。」

 

浜ちゃん先生

「それでは休憩時間の原則を復習していきましょう。

 労基法34条の第1項では,労働時間が6時間を超える場合においては45分

 8時間を超える場合においては1時間の休憩時間を与えなければならないと定められています。」

 

K社長

「休憩時間ってどんな時間でしたかね、前回か前々回に先生が

 説明しておられたと思うのですがど忘れしてしまって・・・」

 

浜ちゃん先生

「いえいえ,気にされなくて大丈夫ですよ。

 休憩時間とは「手待ち時間を含まず権利として労働から離れることが保証されている時間」

 (昭22・9・13 発基第17号)をいいます。」

 

K社長

「そうでしたねぇ。うちの会社の場合,労働時間が8時間を大幅に超えることもあるのですが,

 休憩時間はどのくらい与えればよいのですか?」

 

浜ちゃん先生

「この点について「一昼夜交代制においても法律上は,1時間の休憩時間を与えればよい」

 (昭23・5・10 基収第1582号)とされていますので,法律上は時間ということになります。」

 

K社長

「しかし,この点について何も制限がないというのは違和感があるのですが・・」

 

浜ちゃん先生

「いい感覚ですね。厚生労働省は

 「休憩時間の最長限度についての定めはないが,これを長くすれば

  労働者をいたずらに長時間事業場に拘束しておくことになり,望ましいことではない」(厚生労働省労働基準局編「労働基準法」)

 という考え方を示しています。」

 

K社長

「休憩時間について一斉に与えなくてはいけないということが

 労働基準法に書いてあったような気がするのですが・・・どうでしたかね?」

 

浜ちゃん先生

「労働基準法34条2項のことですね。よくご存じですね。

 確かに「前項の休憩時間は一斉に与えなければならない。」と定められています。」

 

K社長

「うちの会社に限らずトラックドライバーは運行計画に従って

 バラバラの場所にバラバラのタイミングで出発していきます。

 そんなドライバーに休憩時間を一斉に付与することはできないのですが・・・」

浜ちゃん先生

「そうですねぇ。しかし安心してください。

 「貨物の運送の事業」(労基法別表第14号の事業)については,

 労基法34条の「休憩時間の一斉付与」義務の適用はありません。」

 

K社長

「安心しました。休憩時間について他に注意すべき点があれば教えてください。」

 

浜ちゃん先生

「先ほど述べましたように労基法上は休憩時間の限度の定めはないのですが・・・」

 

K社長

「ないのですが・・何かあるんですか?」

 

浜ちゃん先生

「解釈例規(平元・3・1基発第93号)では

 「事業場外における仮眠時間を除く休憩時間は時間を超えてはならない」と定められています。」

 

K社長

「これはこれで厳しいですね。何か例外はないのですか?」

 

浜ちゃん先生

「業務上やむを得ない場合であって,あらかじめ運行計画により3時間を超える休憩時間が定められている場合,

 または運行記録等により3時間を超えて休憩がとられたことが客観的に明らかな場合は、この限りでない」

 との例外が定められています。」

 

K社長

「あ~良かった。基本的に「業務上やむを得ない場合」が常態化していますし,

 運行計画でも前もって3時間を超えて休憩時間を定めていますので例外が適用されるのかなと・・」

 

浜ちゃん先生

「そうなんですね。運送会社の側の努力で変えられることと

 変えられないことがありますからねぇ。」

 

K社長

「そうなんですよ。余裕を持った運行計画を立てて,かつドライバーが

 休憩時間を必要以上に長くとらなくても済むようにしたいのですが・・」

 

浜ちゃん先生

「そういった意識を持っていただくだけでも素晴らしいと思いますよ。」

 

K社長

「ありがとうございます。次回もまた色々と教えてください。」

 

浜ちゃん先生

「いえいえ,こちらこそお付き合いいただいてありがとうございました。」

 

 

 

 

☆当事務所においては,これまでも労務管理を中心とする中小企業の顧問業務,

 宅建業や不動産取引にかかわる紛争の解決に注力して参りましたが,

 今後は流通・運送業界の法律問題の解決,顧問業務にも力を入れて取り組むことになりました。

 

 このブログにおいても有益な情報発信ができるよう努力して参りますので,よろしくお願いいたします!

 

執筆者  弁護士 浜田 諭 (年男)

当事務所が提供できるサポート

労働時間管理について最新の法改正に基き,運送業を経営されている皆様の会社の実情に応じた労働時間管理について一緒に考えて立案し,それを実行するお手伝いをいたします。就業規則の改訂などのハード面のアドバイスと実際に存在している制度をどのように機能させるのかというソフト面でのアドバイスも提供いたします。これは顧問契約を前提としたサービスとなります。

また,現在,労働時間管理にお悩みの運送業の皆様からの個別の相談にも対応しております。このようなサービスに興味をお持ちの運送業の経営者の皆様からのお問い合わせをお待ちしております。

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