「トラック運送業における労務管理」その34-運送業界における働き方改革!雇用主が注意すべきポイント-

働き方改革とは

全体像

基本的な考え方

「働き方改革」は,働く人々が,個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革です。

日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」「働く方々の多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要です。

このことから働く方の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することを目指しています。

 

中小企業・小規模事業者の働き方改革

「働き方改革」は、わが国雇用の7割を担う中小企業・小規模事業者において着実に実施することが必要です。

魅力ある職場とすることで人手不足解消にもつながることが期待されています。

 

働き方改革のポイント

労働時間法制の見直し

目的

働き過ぎ」を防ぎながら,「ワーク・ライフ・バランス」と「多様で柔軟な働き方」を実現するための見直しになります。

見直しの内容

・残業時間の上限規制

・1日1人当たり5日間の年次有給休暇の取得を企業に義務付け

・月60時間を超える残業は、割増賃金率を引き上げ(25%→50%)

 中小企業にも適用あり(大企業は平成22年度~)

・1か月60時間を超える時間外労働についての割増率の改正

・労働時間の状況を客観的に把握するよう、企業に義務づけ

 働く人の健康管理を徹底

 管理職、裁量労働制適用者も対象

・「フレックスタイム制」により働きやすくするために、制度を拡充

  労働時間の調整が可能な期間(清算期間)を延長(1か月→3か月)

  子育て・介護しながらでも、より働きやすく

・専門的な職業の方の自律的で創造的な働き方である「高度プロフェッショナル制度」を新設し、選択できるように

 

生産性を向上しつつ長時間労働をなくすためには、これらの見直しとあわせ、職場の管理職の意識改革・非効率的な業務プロセスの見直し・取引慣行の改善(適切な納期設定など)を通じて長時間労働をなくしていくことが必要です。

 

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

目的

同一企業内における正社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規社員(パートタイム労働者・有期雇用労働者・派遣労働者)の間の不合理な待遇の差をなくし,どのような雇用形態を選択しても、待遇に納得して働き続けられるようにすることで、多様で柔軟な働き方を「選択できる」ようにすることが目的です。

改正の概要その1

・不合理な待遇差をなくすための規定の整備

同一企業内において、正社員と非正規社員との間で、基本給や賞与などのあらゆる待遇について、不合理な待遇差を設けることが禁止されます。裁判の際に基準となる「均衡待遇規定」「均等待遇規定」を法律に整備します。ガイドライン(指針)を策定し、どのような待遇差が不合理に当たるかを明確に示します。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000190591.html

・均衡待遇規定と均等待遇規定

(ア)均衡待遇規定(不合理な待遇差の禁止)

①職務内容※②職務内容・配置の変更の範囲、③その他の事情の内容を考慮して不合理な待遇差を禁止するものです。

(イ)均等待遇規定(差別的取扱いの禁止)

①職務内容※②職務内容・配置の変更の範囲が同じ場合は、差別的取扱いを禁止するものです。

※職務の内容とは、業務の内容+責任の程度をいいます。

 

・派遣労働者について

次のいずれかを確保することが義務化されています。

(1)派遣先の労働者との均等・均衡待遇

(2)一定の要件を満たす労使協定による待遇

★派遣先になろうとする事業主に対し、派遣先労働者の待遇に関する派遣元への情報提供義務が新設されています。

・まとめ

上記で整理させていただいた内容をまとめると下記の通りになります。

厚生労働省作成リーフレットより引用

 

改正の概要その2

・労働者に対する待遇に関する説明義務の強化

非正規社員は、正社員との待遇差の内容や理由などについて、事業主に対して説明を求めることができるようになりました。

改正の概要3

・行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備

都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続が行われるようになりました。「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由に関する説明」についても、行政ADRの対象となりました。

 

働き方改革関連法のうち運送業界の雇用主が注意すべきポイント

時間外労働の上限規制

労働基準法では、労働時間を「原則1日8時間、1週に40時間まで」と定めています(この時間を「法定労働時間」といいます。)。

そして労働者と使用者が36協定を結んでも、法定労働時間を超えて残業が認められるのは、原則月に45時間、年間360時間であり、労使が特別条項に合意しても年720時間までです(一般原則)。

運行管理者,事務職、整備・技能職、倉庫作業職などはこれが適用されます。

 

それに対してドライバーは一般原則とは別の取り扱いとなるのですが、2024年4月から年960時間の時間外労働の上限規制が適用されます。

なお、これを12か月で割ると1月80時間となりますが、1か月あたりの上限については規定がありませんので

80時間を超える月があっても1年間で960時間を超えないように調整できれば大丈夫ということになります。

今までは上限規制がない状態であったドライバーに上限規制が適用されることによって労働時間の管理について上限を超えないように慎重に管理していく必要が出てきたことになります。

 

月60時間超労働の時間外労働の割増賃金率の引き上げ(25%→50%)

2023年4月から、中小企業においても月60時間超の時間外労働への割増賃金率が50%となります。月60時間までの時間外労働への割増賃金率は25%です。このことにより次のような影響があることになります。

全日本トラック協会作成 トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン(解説書)より引用

 

年5日の年次有給休暇の取得義務付け

2019年4月から、年休付与日数が10日以上の労働者を対象に、付与された年休日数のうち5日分について必ず消化されるよう制度化されています(年次有給休暇の時季指定の義務化)。

なお、労働者が自ら取得した年休日数、会社から労働者へ計画的に付与した年休日数は、義務付けられている5日から控除できるようになっています。運送業界においても他の業種と同様、年次有給休暇の取得率が高くなかった

と思われますが、計画的に年次有給休暇を労働者(ドライバー以外もドライバーも)に取得させていく必要がありますね。

 

当事務所が提供できるサポート

労働時間管理や同一労働同一賃金等について最新の法改正やガイドラインに基き,運送業を経営されている皆様の会社の実情に応じた労働時間管理や労務管理について一緒に考えて立案し,それを実行するお手伝いをいたします。

就業規則の改訂などのハード面のアドバイスと実際に存在している制度をどのように機能させるのかというソフト面でのアドバイスも提供いたします。

これは顧問契約を前提としたサービスとなります。

 

また,現在,労働時間管理にお悩みの運送業の皆様からの個別の相談にも対応しております。

このようなサービスに興味をお持ちの運送業の経営者の皆様からのお問い合わせをお待ちしております。

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