「トラック運送業における労務管理」その29-運送業における歩合給の活用について-

 前回は裁判所における労働時間の認定方法とそれを踏まえた運送業界における労働時間管理について取り上げました。今回は運送業界において歩合給を活用する意味と歩合給を機能させるための準備事項についてお話ししようと思います。

 それでは歩合給導入を検討する背景の説明から入っていきましょう!

 なお,今回お話しする内容は以下の目次のとおりです。

目 次

1 トラックドライバーの賃金の格差問題

2 残業代が発生する構造上の問題

3 未払い残業代請求の実情

4 残業代の前払い手法とそれぞれの問題点

5 完全歩合制の採用の検討

 

1 トラックドライバーの賃金の格差問題

 私自身が今年に入って運送業の方や地元の業界団体の方にお話を伺う機会が多くあったのですが,一口に運送業と言っても荷主や運ぶ荷物によって運送形態が異なりますし,運送に用いられる車種も異なります。それに伴ってドライバーに求められる職務能力も異なるし,労働負荷も違います。また必要とする資格も異なります。このように職務能力,労働負荷,資格の有無・種類によってドライバー間に格差が生じるのはやむを得ないことです。

 そして,このような根拠がないのに格差が生じていたり,一定の根拠に伴う格差が大きすぎるという問題が生じると不満を持ったドライバーは離職する可能性が高くなります。意欲があって積極的に働いてくれるドライバーがより報われるような賃金制度を構築しないと良いドライバーからいなくなってしまう可能性もあります

 また,賃金格差があるためにドライバー間での職種の異動の必要性が生じてもスムーズに行えないという問題が生じることもあります。入社時期による格差や正規雇用のドライバーと非正規雇用のドライバーの賃金格差(同一労働同一賃金の問題)も無視できないところです。

 このような賃金格差の問題が生じづらくするために歩合制の採用を検討しても良いと思います。

 

2 残業代が発生する構造上の問題

 運送業界においては取り扱う荷物によって物流量に季節変動があること,景気動向に物流量が大きく左右されます。そして他の業界と同じく慢性的な人手不足にあり余剰の人員や車両を保有しづらい状態にあります。余剰の人員や車両がないとなるとギリギリの人員でギリギリの車両を用いて荷物を運ぶことになり,そのしわ寄せはドライバーの労働時間の増加という形で現れます。

 またトラック運送業は建設業や製造業と同じように階層構造があり,荷主・元請・下請・孫請と荷主との関係が遠くなればなるほど運賃や運行の条件が厳しくなり長時間労働が慢性化しやすいという構造上の問題もあります

 

3 未払い残業代請求の実情

 厚生労働省や裁判所の統計には現れていないところだと思うのですが,労働者からの未払い残業代請求の案件は増加しているという感覚があります。

 なぜ統計の数字にあまり反映されていないかですが,これは交渉段階で使用者側が労働者に未払い賃金を支払う形での和解によって解決しているからだと思われます。訴訟や労働審判,労働局への相談などが増えなければ統計に反映されず一見増えていないように見えるというだけのことではないでしょうか。

 未払い残業代請求が多い業種の1つが運送業だと思います。ドライバーの売り手市場である以上,より待遇の良い会社へ転職するドライバーが一定数出てくるのは仕方ないと思うのですが,未払い残業代請求は退職のタイミングで行われることが多いです

 自分を雇用している会社に在職している間に会社ともめてしまうと後々居づらくなるというのは当然の心理状態ですから,退職して会社との縁がなくなってから在職中の残業代請求をしてくるというのは理解できる話です。

 現在,賃金債権の消滅時効は3年間とされていますが(以前は2年間でした),いずれ5年間となることが確定しています

 ドライバーが離職してしまってから,5年間は在職中の未払い残業代の請求が来る可能性,実際に支払わなくてはいけない可能性があるというのは由々しき事態です。少なく見積もってドライバー1人当たり1か月で2万円,1年で24万円の未払い残業代があると考えた場合,その5年分で100万円です

 1人のドライバーが未払い残業代請求をして一定の額が取れたという情報は他のドライバーにも伝わる可能性が高いです。他のドライバーも離職するタイミングで未払い残業代を請求してくるとなると100万円×請求してくるドライバーの人数分の払い出しを覚悟しなくてはいけません。

 事業を運営するにあたってかかる経費は将来的に売り上げを生み出す可能性がありますが,退職した労働者に支払う未払い残業代は売上につながることもなく利益にもつながらず,その額いかんでは会社が倒産するリスクまで考えなくてはいけません。実際に運送会社が未払い残業代請求を受けたのがきっかけで倒産した事例が複数あるようで,宮崎県のような地方都市でもそのような事例が生じるかもしれません。

 

4 残業代の前払い方法とそれぞれの問題点

(1)定額残業代を設定する背景

 ドライバーに支払う残業代の額を抑えたいという動機から設定する運送業者もおられると思いますが,そもそも本来は計算上発生する割増賃金を支払わなければそれは違法行為です。

 また定額残業代として一定の額を毎月支払っていると思っていたものの,それが残業代の支払いと評価されないこともあり,そうなると未払いの残業代の額が跳ね上がります。実態として計算上の割増賃金の発生額を抑える効果も微妙ということです。

 また定額残業代を支払っているとドライバーがその額をもって残業代が支払われていると誤解して残業代を請求してこない,また薄々固定残業代では残業代がきちんと支払われていないことを知っていても会社と事を荒立てたくないから請求してこないのではないかと期待している経営者の方もおられるかもしれません。

 端的に言えば争わなければ問題がないというスタンスですが,前述のように退職のタイミングでは争いが顕在化する可能性があります。

 採用の観点から労働条件を良く見せたいとの動機で設定することもあるでしょう。残業が多くても少なくても定額残業代がもらえるという制度に魅力を感じるドライバーを採用したいのかなという疑問はあります。より意欲のあるドライバーを採用するために賃金制度を工夫するという方向で考えた方がよいと思います

(2)定額残業代のリスク

 ① 事例の設定

   以下のような事例を想定しましょう。

   基本給:200,000円

   役割手当:5,000円

   業務手当(固定残業手当):90,000円

   所定労働時間:170時間

   時間外労働時間:90時間

 ② 業務手当が残業代の支払いとして認められた場合

   未払い残業代は4万5,662円となります。

 

   計算式は

   (基本給+役割手当)÷所定労働時間数×時間外労働割増率×時間外労働時間数-業務手当=未払い残業代

   実際の計算は

   (200,000+5,000)÷170h×1.25(時間外労働割増率)×90h-90,000=45,662円(小数点以下繰り上げ)

 ③ 業務手当が残業代の支払いと認められなかった場合

   未払い残業代は19万5,221円となります。

 

   計算式は

   (基本給+役割手当+業務手当)÷所定労働時間数×時間外労働割増率×時間外労働時間数=未払い残業代

   実際の計算は

   (200,000+5,000+90,000)÷170h×1.25(時間外労働割増率)×90h=195,221円(小数点以下繰り上げ)

 ④ ②―③

   1か月単位だと

   19万5,221円―4万5,662円=14万9,559円の違いになります。

   これだけでもインパクトのある数字なのですが,

   1年間になると

   171万4,708円となります(14万9,559円×12)

   そして,賃金債権の現在の消滅時効期間である3年間をベースに考えて

   538万4,124円(171万4,708円)の差額が生じることになります。

 定額残業代はそれが残業代に充当されるかどうかで非常に大きな違いが生じるという意味でリスク要素と言えるかもしれません。

(3)定額手当を支給する方法とその問題点

 ① 総論

 残業代の前払いという意味で「運行手当」等の名目で定額手当を支給する方法が運送業界に限らず様々な業界でとられています。残業代に代わる手当であった場合は残業代(割増賃金)の基礎となる賃金からこの手当は控除された上,この手当相当分の残業代は支払い済みとなりますから,使用者が支払うべき残業代は大幅に減ることになります。

 一方,定額手当が残業代の支払いと評価されない場合には先に述べたように基礎賃金から控除されず,かつ残業代の支払いとも評価されないこととなり,残業代の額が跳ね上がります。

 ② 定額手当での支払いをしていたケースについての裁判例

 定額手当について残業代の支払いと評価した肯定例,否定例を順番に見ていきましょう!

   肯定例〇

 ア 名鉄運輸事件 名古屋地判平成3年9月6日 判タ777号138頁

 一般路線貨物自動車運送会社のドライバーに支給される「運行手当」が深夜勤務時間に対する割増相当額(深夜残業代相当額)と評価されるのかが争われた事件です。

 この事件においては,

(ア)仕事の性質上深夜労働をせざるを得ないドライバーに限って支払われている点

(イ)就業規則において深夜勤務時間に対する割増賃金であることを明示している点を考慮して割増賃金(残業代)として支払われたものと評価しています。

 運送業に関する裁判例ということで一つの参考になるかと思います。

 イ 関西ソニー販売事件 大阪地判昭和63年10月26日 労判530号40頁

 家電のセールスマンに支給されていた「セールス手当」の支払いを割増賃金(残業代)の支払いと認めた事件です。

 この事件においては

(ア)給与規則に記載があること

 「セールス手当は営業等社外での勤務を主体とする者に支給されるが,当該手当支給者には超過勤務手当及び残務手当は支給されない。なお,休日に勤務した場合には休日勤務手当が支給される」旨規定されている。

(イ)セールス手当の定め方

 セールス手当は基本給月額の17%,会社はセールスマンの時間外勤務時間が平均して1日約1時間で1か月間では合計23時間であるとの調査結果を基にセールス手当の割合を定めたこと

(ウ)休日勤務手当は別途支給されていることを根拠に「セールス手当」を割増賃金(残業代)の支払いと認めています。

 給与規則に定めがあるという部分は当然だとして,手当設計の合理性,給与規則の規定どおり実際に休日勤務手当の支給が行われている実績に着目している点で合理的な判断ではないかと思います。

 ウ ユニ・フレックス事件 東京地判平成10年6月5日 労判748号117頁

 これは派遣会社の営業社員に支給されていた営業手当月額3万円ないし4万円について割増賃金(残業代)の基礎賃金に含まれると判断した事件です。

 この事件においては

(ア)就業規則に明記されていたこと

 「営業手当は,営業担当者の営業業務に対して,その職務能力に応じて支給する。この場合,時間外手当は支給されてない。」を理由にこの判断をしています。

 

   否定例×

 ア 三好屋商店事件 東京地判昭和63年5月27日 労判519号59頁

 これは時間外割増賃金に相当する金額を基本給と職務手当の中に含めて支給していた可能性は認めながらも

(ア)割増賃金の額が法定額を下回っているかどうかが具体的に後から計算できないような場合であるから,そのような方法による割増賃金の支払は労基法37条の趣旨に反していることが明らかであることを理由として割増賃金(残業代)の支払いと認めませんでした。

 イ 東建ジオテック事件 東京地判平成14年3月28日 労判827号74頁

 この事件において使用者側は業務推進手当には月45時間までの残業手当を含むと主張しましたが,この主張は通りませんでした。

   その理由は

(ア)賃金規定に明記されていないこと

(イ)契約締結過程で業務推進手当が月45時間分の残業代に該当するものであることが雇用契約の内容となったと認められないこと

(ウ)職責手当の1つに過ぎないことです。

   ここでも賃金規定への明記が問題になっていますね。

③小括

裁判所が定額手当による支給を残業代(割増賃金)の支払いと評価するかどうかは各手当の実質について

 ア 就業規則(賃金規定)の定め方

 イ 給与明細上の記載

 ウ 実際の運用等

を総合的に判断していると言えそうです。

 就業規則(賃金規定)に明記し,給与明細上の記載して,定額手当によって支給されている額よりも実際の残業代が多い場合には差額を追加支給するなどの実態が必要ということになります。

 

(4)残業代(割増賃金)を基本給に組み込んで支給する方法とその問題

 ① 総論

 基本給の中に残業代の前払い分を含ませて支給する方法ですが,この方法は通常の労働時間に対する賃金部分と割増賃金部分の比較対照が困難であり,労基法所定の割増賃金以上の支払いがされたどうかの判断ができない場合には労基法37条違反となり違法ということになります。

 しかし,この場合においても,定額給(割増賃金が含まれた基本給)のうち割増賃金に相当する部分とそれ以外の部分が明確に区別されていれば,使用者は割増賃金に相当する部分の支払い義務を免れることになります。

 ② 基本給に組み込んで残業代(割増賃金)の支払いをしていたケースについての裁判例

 先ほどに述べました定額手当での支給の場合と比べて残業代の支払いと認められるケースが少なく,ご紹介するのは否定例のみとなります。

   否定例×

 ア 小里機材事件  最一昭和63年7月14日労判523号6頁

 この事件は「基本給の中に15時間分の割増賃金が含まれている。」との使用者の主張は認められないと判断したものです。最高裁の判例であり,重要なリーディングケースです。この裁判例においては,基本給の中に割増賃金が含まれているとの主張が認められるには

(ア)基本給のうち割増賃金にあたる部分が明確に区分されて合意されること

(イ)労基法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその差額を当該賃金の支払期に支払うことが合意されていることが必要であるとしています。

 イ ニュース証券事件 東京地判平成21年1月30日 労判980号18頁

 「給与規定で月30時間を超えて時間外労働をした者について時間外手当を支給することとし,月30時間を超えない時間外労働に対する部分は基準内賃金に含まれるので月30時間分までは時間外手当は発生しない。」との会社の主張は認められないと裁判所が判断した事件です。

 裁判所はその判断の理由として

(ア)全証拠に照らしても,原告の基準内賃金のうち割増賃金に当たる金額が明確に区別されているとは認められないことを挙げています。

 ウ 小括

 まとめますと,基本給の中の割増賃金と本来の基本給部分とが明確に区別されていないと使用者側の割増賃金(残業代)が既払いとの主張は通らないということですね。

 また明確に区分されていないと割増賃金込みで支給していたと思っていた全額が本来の基本給と評価されて基礎賃金に算入されて,かつ残業代としては全く支払われていないと評価されるわけですから残業代の額が跳ね上がります。これは前述したとおりです。

 エ 就業規則(賃金規定)にどう記載するのが良いのか

 このパターンで就業規則(賃金規定)にどういった表現で記載されていれば基本給の中に割増賃金(残業代)が含まれると評価されるのかについて少しお話します。

(ア)例1 「基本給30万円について固定残業代を含む」×

 これは明確区分性を満たさないので割増賃金の支払いと評価されないですね。

(イ)例2 「基本給30万円のうち,5万円は1ヵ月20時間の時間外労働に対する割増賃金とする」

 ここまで明記していると明確区分性を満たし,割増賃金の支払いありと評価されるでしょう。

(ウ)例3 「基本給30万円のうち,5万円は時間外労働時に対する割増賃金とする。」

 この表現だと微妙です。所定労働時間と基礎賃金が把握できていれば計算をして5万円が何時間分の時間外労働に対する割増賃金というのが理解できるかもしれませんが,労働者に不親切ですね。

 

(5)固定残業代制における上限とドライバー間の不公平問題

 固定残業代制をとって,定額手当が残業代であると明記し,かつそれが何時間の残業代にあたると就業規則等に明記したとしてもすべてが有効になるわけではありません

 2018年6月に成立した働き方改革関連法で36協定で定める時間の上限原則的な限度時間は1か月につき45時間1年につき360時間とされるなど長時間労働抑制が求められている現状がありますし,そもそも残業は例外的なものというのが労働基準法の根底にある考え方になります。

 仮に長い時間の時間外労働分として定額手当を支給する会社があり,その支給をもって割増賃金の支払いと認めてしまうと,手当が想定している時間の分だけ働かせた方が得だということになります。

 固定残業代制を広く認めたが故に労働者の長時間労働を招くという事態になるわけです。そこで月に45時間を超える時間外労働分の定額手当を定めている事例においてはその効力を否定される裁判例が多いです

 ① ザ・ウィンザー・ホテルズインターナショナル事件

   札幌高判平成24年10月19日労判1064号37頁

   月95時間分 ×

 ② マーケティングインフォメーションコミュニティ事件

   月18万円(100時間相当)×

 ③ 穂波事件

   管理職手当

   月80時間分 ×

 このように上限の問題もありますし,定額手当方式であれ基本給組み入れ方式であれ,明確区分性の問題をクリアーしないと残業代の支払いとは評価されないとの問題があります。また固定残業代を支払うとなると効率が悪くダラダラと仕事をしているドライバーの方が効率の良いドライバー(固定残業代が想定している時間数で労働を終えるドライバー)よりも高い賃金を得ることができてしまうというジレンマが生じます。

 そこで歩合制度の活用を考えることになるのですが,歩合給での支払いについても裁判所が判断を下している例があります。

(6)歩合給での残業代の支払いとその問題点

 歩合給制の賃金に時間外および深夜の割増賃金も含まれている旨の基本給組込型の固定残業代を支払っている会社もあります。

 こういった工夫も高知県観光事件(最高裁平成6年6月13日判決 労判653号12頁),国際自動車事件(最高裁令和2年3月30日判決)によって否定されてしまいました。通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金にあたる部分を判別することができないというのがその理由になります。

 

5 完全歩合制の採用の検討

(1)完全歩合制度のメリット

 ① 総論

 このような現状においてどのような対処を検討すべきでしょうか?1つのアイデアとして考えられるのが完全歩合給制の採用です。完全歩合給制をとる場合には割増賃金の計算方法が異なり,割増賃金の発生,未払いリスクが軽減できるからです。

 ② 具体例

 以下のような例で考えてみましょう。

   固定給 300,000円 月の所定労働時間:150時間

   毎月の時間外労働時間(深夜・休日労働なし):80時間

 という会社があったとします。

 ア 歩合給制をとらない場合(月給制)の割増賃金

 計算式は

   300,000円÷150h×80h×1.25=200,000円

 イ 歩合給制

   300,000円÷(150h+80h)×0.25=26,086円

 ウ このように歩合給制の方が残業代が安くなりますので完全歩合制の採用にはメリットがあります。

 ③ 完全歩合制度の他のメリット

 やればやっただけ(成果の分だけ)待遇に反映されることから経営者やドライバーの感覚に合うと思われます。効率の悪い仕事をしているドライバーが効率の良い仕事をしているドライバーよりも賃金が高くなるという不公平感もなくなるでしょう。

 また,運送業界においてはドライバーの高齢化が問題となっていますが,高齢となったドライバーがマイペースで仕事をしていただくために完全歩合制という制度は合理的ではないかと思われます。

(2)完全歩合給制をめぐる誤解

 完全歩合給制が違法ではないかとのイメージを持っている経営者もおられると思いますが,違法であるとの法的な根拠はありません。また固定給部分だけで最低賃金をクリアーしなければならないのではないかとお考えの経営者もおられると思いますが,これも誤解です。ドライバーの仕事が少ない場合にも支給される保障給を設定すれば大丈夫です。

(3)完全歩合制移行への課題

 完全歩合制に移行するにあたってはクリアーしなければいけない問題が複数あります。移行の過程で一時的に手取り額が減るドライバーが生じるのは避けられませんので,労働条件の不利益変更を行うことになります。

 そうすると完全歩合制への移行について労働者,労働組合との間で合意をとるプロセスを経た方が好ましいですし,移行することについての大義名分(合理的な理由)が必要となります。

 そして,移行にあたって不満を持ったドライバーが大量に離職する可能性が出てきますので,待遇が下がるドライバーについては給与を何年間か補填して待遇が下がらないような配慮をする必要があります。いわゆる激変緩和措置の採用です。この期間については現在の未払い賃金の消滅時効期間である3年間を目途にするのが良いと思います。

 これ以外にも課題はあるのですが,今後のセミナーなどでお話ししていこうと思います。

 

☆当事務所においては,これまでも労務管理を中心とする中小企業の顧問業務,宅建業や不動産取引にかかわる紛争の解決に注力して参りましたが,今後は流通・運送業界の法律問題の解決,顧問業務にも力を入れて取り組むことになりました。

このブログにおいても有益な情報発信ができるよう努力して参りますので,よろしくお願いいたします!

 

執筆者  弁護士 浜田 諭

 

 

 

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