運送業における欠勤が長期化している社員への対応方法を解説

浜ちゃんが最近,物流業界に興味を持っているとの噂を聞き,相談に来られた運送会社S社のK社長,

今回もトラック運送業における労務管理について浜ちゃんに相談しています。

 

1 欠勤が長期化している社員について考えられる可能性

 

 

K社長

「当社のドライバーが2週間欠勤しているのですが,妻の方から体調不良で欠勤との連絡があるだけなんです。」

 

浜ちゃん先生

「本当に体調不良が原因なのかがわからないですし,体調不良だとしてどのような状態なのかもわからないですね。」

 

K社長

「そうなんですよ。これからどうしましょうか?」

 

浜ちゃん先生

「体調不良が病気かどうかを確認し,

 入院しているのかどうか診断書を提出していただけるのかを本人か欠勤の連絡をしてくる本人の妻へ確認してくだ 

 さい。」

 

K社長

「それでも埒が明かない場合にはどうしましょうか?」

 

浜ちゃん先生

「直属の上司の方がお見舞いということでご自宅に伺ってはいかがでしょうか。」

 

K社長

「なるほど,自宅療養しているのか入院しているのか,それとも別の理由なのかはわかりそうですね。」

 

浜ちゃん先生

刑事事件によって逮捕勾留されていたりすることも考えられますからねぇ。」

 

 

K社長

「少なくとも職場で何かが起きたというのは把握できていないので仮に刑事事件の当事者であるとしても

 職場外での逮捕・勾留だと思います。その場合には懲戒処分を行うことを検討することになると思うのですが,

 どのような点を考慮して懲戒処分をすればよいのでしょうか?」

 

浜ちゃん先生

①問題の社員が行った行為の性質や情状,

 ②会社の事業の種類・態様・規模,

 ③会社の経済界に占める地位,

 ④経営方針,

 ⑤問題の社員の会社における地位・職種

 等の諸事情を総合的に判断して検討していく必要がありますね

 (日本鋼管事件・最高裁第2小法廷昭和49年3月15日判決)。」

 

K社長

「②から⑤はイメージが湧くのですが,①について,もう少しわかりやすく教えてください。」

 

浜ちゃん先生

「具体的に,どのような経緯・動機でどのような罪を犯したのか(犯したと疑われているのか)を

 判断材料にするということになります。」

 

K社長

「刑事事件の当事者になっている場合以外にどのような理由が考えられますか?」

 

浜ちゃん先生

メンタルヘルス不調が考えられると思います。」

 

2 社員の欠勤の原因がメンタルヘルス不調だと思われる場合の対処

 

K社長

「その後,直属の上司が自宅を訪ねて本人に会えたのですが,憔悴しているように見えたとのことでした。

 また本人によると具体的な病名などはわからないとのことで,

 上司の目には精神的に参っているように見えたとの報告を受けました。」

 

浜ちゃん先生

メンタルヘルスの不調が疑われますね。今後の貴社の対応を決めるためには

 社員の病状を把握する必要がありますので専門医に診断してもらう必要があります。」

 

 

K社長

「それでは本人に専門医の診断を受けるよう伝えましょう。」

 

浜ちゃん先生

「その際なのですが,いきなり命令という形で伝えるとご本人に精神的負荷がかかって

 体調がさらに悪化する可能性,社員の方と貴社との関係が悪化する原因になる可能性があります。

 まずは専門医への受診を勧めてみてはいかがでしょうか。」

 

K社長

「例えば精神疾患であるとの診断を受けると当社から不利益な取り扱いを受けるのではないかと

 心配して受診しない可能性もあると思うのですが,その時はどうしましょうか?」

 

浜ちゃん先生

「その場合には業務命令として専門医への受診を命じるしかないですね。」

 

K社長

「診断書の提出や専門医への受診を命じた結果,

 問題の社員の欠勤理由が虚偽であることが疑われるような場合はどうしましょうか?」

 

浜ちゃん先生

懲戒処分を行うことになりますが,

 まずはけん責処分等の軽微な処分を行って本人に改善の機会を与えた方がよいでしょう。」

 

3 欠勤理由がメンタルヘルス不調と判明した場合に解雇できるか

 

 

K社長

「メンタルヘルス不調だとするといつ職場復帰できるかもわからないし,会社に籍を置いている以上,

 社会保険料の事業主負担分が発生し続けるので雇用を切りたいんですけど解雇はできないですか?」

 

浜ちゃん先生

解雇はできないでしょう。場合を分けて説明していきましょう。」

 

K社長

「お願いします。」

 

浜ちゃん先生

「まずメンタルヘルス不調が業務に起因している場合,

 療養のために休業する期間及びその後30日間は解雇することができません(労働基準法19条1項)。

 ただし,会社が打切補償を支払う場合はこの限りでないとされています(労働基準法81条,同法19条1項但

 書)。

 

K社長

「業務外に原因がある場合はどうですか?」

 

浜ちゃん先生

「このようなケースでも解雇権濫用法理が適用されますので,

 解雇権濫用と評価される可能性が高いと思います。貴社には傷病休職制度がありますか?」

 

K社長

「ありますね。」

 

浜ちゃん先生

「そうすると,まずは社員を休職にして療養の機会を与えることを検討すべきですね。

 このプロセスを踏まずにいきなり解雇にしてしまうと解雇権濫用と評価される可能性はかなり高いと思われま

 す。」

 

K社長

「それはどうしてですか?」

 

浜ちゃん先生

 

傷病休職制度は,業務外の傷病により正常な業務遂行ができなくなった社員に対し,

 解雇を一定の期間猶予して療養の機会を与えるための制度です。

 この制度の存在を無視していきなり解雇にすることは,社会的相当性を欠くことになるからですね。」

 

 

K社長

 

「そうすると当社としては例の社員に対して休職させるかどうかを検討する必要がありますね。」

 

浜ちゃん先生

「そうですね。休職命令を発令することができるかどうかを検討することになりますね。」

 

K社長

「そもそも「休職」って何ですか?」

 

浜ちゃん先生

「ある労働者について労務に従事させることが不能または不適当な事由が生じた場合に,

 使用者がその従業員に対し労働契約関係そのものを維持させながら労務への従事を免除すること

 または禁止すること(菅野和夫「労働法(第12版)742頁」とされています。」

 

K社長

「当社の就業規則には休職の要件として「業務外の傷病により業務に支障が生じた場合」という要件が

 定められていますが,ドライバーである社員の欠勤によって運行業務に支障を来しています。

 休職の要件を満たしそうですかね?」

 

浜ちゃん先生

「伺っているような条項と今,伺っている貴社の状況であれば休職の要件を満たしそうですね。」

 

 

K社長

「あと当社の就業規則には社員の休職期間が満了した時点で当該社員が復職できる状態になっていなければ

 解雇するとの規定があります。休職期間満了後に解雇できると思っていいですか?」

 

浜ちゃん先生

「その社員が復職できるかどうかを慎重に検討する必要がありますので

 満了後には解雇できるとは限らないですね。復職可能性の判断等については次回お話ししていきましょう。」

 

 

K社長

「わかりました。今日はありがとうございました。」

 

浜ちゃん先生

「いえいえ,お付き合いいただきありがとうございました。お疲れさまでした。」

 

最後に

 

 

☆当事務所においては,これまでも労務管理を中心とする中小企業の顧問業務,宅建業や不動産取引にかかわる

 紛争の解決に注力して参りましたが,

 今後は流通・運送業界の法律問題の解決,顧問業務にも力を入れて取り組むことになりました。

 このブログにおいても有益な情報発信ができるよう努力して参りますので,よろしくお願いいたします!

 

執筆者  弁護士 浜田 諭

 

 

 

 

 

 

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