トラック運送業における労務管理その1-休憩時間と手持ち時間を区別するポイントは?-

浜ちゃんが最近,物流業界に興味を持っているとの噂を聞き、相談に来られた運送会社S社のK社長,今回からトラック運送業における労務管理について浜ちゃんに相談を始めます。

 

K社長

「当社においては積荷が到着してから、トラックに積み替えて、そこから目的地に向けて出発するというやり方をとっているんですが。」

 

浜ちゃん

「なるほど。それって運送業界の通常のフローですよね?」

 

K社長

「はい。当社では、積荷が到着し、運転者が積み替え作業に入ってから、労働時間が開始したとみなして、賃金を計算しています。」

 

浜ちゃん先生

「それ自体も問題ないと思います。」

 

K社長

「しかし、ドライバーの1人が、自分が積荷を待っている時間も労働時間に含めて賃金計算をして欲しいと主張しているのですが、現在当社が行っている扱いは違法なのでしょうか?」

 

浜ちゃん

「労働時間ってどんな時間だと思います?」

 

K社長

「働いている時間ですよね?違うんですか?」

 

浜ちゃん

「正確に言うと、労働者が労働するために、使用者の指揮命令下にある時間が労働時間ですね。」

 

K社長

「指揮命令下にあるというイメージが湧かないのですが・・」

 

浜ちゃん

「それでは別の視点から考えてみましょうか。休憩時間ってどんな時間ですか?」

 

K社長

「休んでいる時間はすべて休憩時間でしょう?」

 

浜ちゃん

「休憩時間というためには休んでいるというだけでは不十分で、労働者が権利として労働から離れることが保障されている必要があります。」

 

K社長

「そうすると作業と作業の間の時間、手待時間は休憩時間にあたらず労働時間にカウントされるということですか?手待時間と休憩時間はどのように区別すればよいのでしょうか?」

 

浜ちゃん

手待時間は、使用者の指示があれば直ちに作業に従事しなければならない時間としてその作業の指揮命令下に置かれているのに対し、休憩時間は使用者の作業場の指揮命令から離脱し(労働から解放され)、労働者が自由に利用できる時間という形で区別することが可能です。」

 

K社長

「そうすると当社における「積荷を待っている時間」はどちらと評価されるでしょうか?」

 

浜ちゃん

「この点については2つの通達があります。

昭和33・10・11基収6286号の通達で「トラック運転者に貨物の積み込みを行わせることとし、その貨物が持ち込まれるのを待機している場合(一般に手待ち時間という)において、全く労働の提供はなくとも出勤を命ぜられ、一定の場所に拘束されている時間は労働時間と解すべき」としています。つまり、いつでも作業できる態勢でドライバーを待たせる場合は休憩時間にはあたらないという解釈が示されています。」

 

K社長

「もう1つの通達はどのようなものですか?」

 

浜ちゃん

「一方、昭和39・10・6基収6051号の通達では「貨物の到着の発着時刻が指定されている場合、トラック運転者がその貨物を待つために勤務時間中に労働から解放される手あき時間が生ずるため、その時間中に休憩時間を1時間設けている場合にあって、当該時間について労働者が自由に利用できる時間」であれば「休憩時間である」としています。これら2つの行政解釈からすると、いわゆる「手待ち時間」は労働時間であり、「手あき時間」は休憩時間となりますね。」

 

K社長

「この点について運送業界での労働時間についての裁判例があれば教えてください。」

 

浜ちゃん

「大虎運輸事件(大阪地裁 平成18年6月15日判決 労働判例924号72頁)では、配送先に到着し、次の仕事にかかるまでの時間について運転者は「拘束されているとはいえず」「仮に、会社から突然の指示が来ても、運転者が自ら応諾するかしないかを判断することが許されていたこと」といった事情を考慮し、労働時間に該当しないと判断されています。」

 

K社長

「そうすると当社の場合には?」

 

浜ちゃん

「積荷が到着したら、すぐさま積み替え作業を開始するよう命令があれば、手待ち時間(労働時間)とみなされることになります。貴社において現場で運転者にどのような指示を出しているのかを確認してみてください。」

 

K社長

「わかりました。今後ともよろしくお願いいたします。」

 

☆当事務所においては、これまでも労務管理を中心とする中小企業の顧問業務、宅建業や不動産取引にかかわる紛争の解決に注力して参りましたが、今後は流通・運送業界の法律問題の解決、顧問業務にも力を入れて取り組むことになりました。

このブログにおいても有益な情報発信ができるよう努力して参りますので、

よろしくお願いいたします!

 

執筆者  弁護士 浜田 諭