契約書変更等について用いる「覚書」について企業法務に詳しい弁護士が解説
今回は実務上使うことが時々ある「契約書変更等の覚書」についてお話ししていこうと思います。
お話しする内容は以下のとおりです。
1 変更覚書とは
2 変更覚書が必要な場面の具体例
3 変更覚書の作成手順と注意点
4 作成・チェックについて弁護士に相談するメリット
5 当事務所のサポート内容
はじめに
顧問弁護士として日々多くの中小企業の経営者様や法務担当者様と向き合っていると、「既に締結した契約の内容を少しだけ変えたいのですが、また一から契約書を作り直さなければなりませんか?」というご相談をよくいただきます。
結論から申し上げますと、その必要はありません。こういった場面で非常に重宝するのが「覚書(おぼえがき)」です。今回は、実務で頻繁に登場するこの「変更覚書」について、その正体から作成時の注意点まで、専門的な視点から分かりやすく解説します。
1 変更覚書とは
(1)はじめに
「覚書」という言葉を聞くと、何となく「メモ書き」や「正式な契約書の一歩手前の書類」というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、法律的な評価としては「当事者間の合意内容を記した立派な契約書」です。
特に、既に存在している基本契約や売買契約などの内容を、後から修正・追加・削除するために作成される書面を、実務上「変更覚書」や「変更合意書」と呼びます。
(2)なぜ「作り直し」ではなく「覚書」なのか
元の契約書(原契約)を破棄して新しく作り直すことも可能ですが、以下の理由から覚書が選ばれます。
①事務負担の軽減
変更点だけを記載すれば済むため、全文を作り直す手間が省ける。
②経緯の明確化
「いつ、どの部分が、どう変わったか」という履歴が残り、トラブル時の証拠として追いやすい。
③コスト削減
契約金額によっては印紙税を抑えられる場合がある。
2 変更覚書が必要な場面の具体例
具体的にどのようなケースで覚書が登場するのか、代表的な例を挙げてみましょう。
(1)契約期間の延長(更新)
「令和〇年〇月まで」としていた期間を、さらに1年間延長する場合など。
(2)取引価格(単価)の変更
原材料費の高騰や増税に伴い、納入単価を改定する場合。
(3)振込先や担当窓口の変更
会社の社名変更、移転、あるいは振込口座の指定を変更する場合。
(4)業務範囲の追加
当初予定していなかった付随業務を、現在の契約に紐付けて追加依頼する場合。
3 変更覚書の作成手順と注意点
覚書を作成する際には、形式的なルールを外すと、後日「どの契約の、どこの話か分からない」という事態に陥りかねません。以下の手順とポイントを意識してください。
(1) 原契約(元の契約書)を特定する
まず、「どの契約に対する変更か」を明記します。
(記載例)令和〇年〇月〇日付で甲乙間で締結した「〇〇業務委託契約書」(以下「原契約」という)に関し、以下の通り変更の合意をする。
(2) 変更箇所を対照させて記載する
変更前と変更後を明確にします。「第〇条を次の通り改める」として、新しい条文をそのまま記載するのが最も確実です。
(3) 「その他の条項」の維持を宣言する
変更した箇所以外は、引き続き元の契約が有効であることを念押しします。
(記載例)本覚書で変更した事項を除き、原契約の各条項が引き続き有効であることを確認する。
(4)【重要】印紙税の有無を確認する
ここが中小企業の皆様が最も見落としがちなポイントです。 覚書であっても、その内容が「重要な事項の変更」に該当する場合(例:売買代金の増額、請負金額の変更など)、印紙税がかかる場合があります。 「覚書だから印紙はいらない」と思い込まず、税務署の指針や専門家に確認しましょう。
4 作成・チェックについて弁護士に相談するメリット
「たった一行変えるだけだから、自社で適当に作っておこう」 そう思われるかもしれません。しかし、その「一行」が会社の首を絞めることもあります。弁護士に相談するメリットは以下の通りです。
(1)「矛盾」の防止
一部を変更したことで、元の契約書の別の条文と矛盾が生じ、解釈の争いになるのを防ぎます。
(2)有利・不利の判定
相手方から提示された覚書が、実はさりげなく自社に不利な条件を潜り込ませていないか(例:しれっと賠償額の上限を撤廃している等)を検知できます。
(3)法改正への対応
数年前の古い契約書をベースにしている場合、覚書を作るタイミングで最新の法改正に合わせた微調整を提案できます。
(4)まとめ
変更覚書は、ビジネスのスピード感を維持しながら契約をアップデートするための非常に便利なツールです。しかし、小さく見える変更が、将来的に大きなリスクを招く可能性があることも忘れてはいけません。
「この一行の書き方で大丈夫かな?」と少しでも不安に感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。貴社の権利を守り、安心してビジネスに集中できるよう、法的側面から全力でバックアップいたします。
5.当事務所のサポート内容
当事務所は多くの会社の顧問業務を日常的に行っており、その中で契約書の契約内容を変更するために覚書を作成して欲しい、作成した覚書をチェックして欲しいという相談を受けるケースも少なくありません。また覚書によって変更された契約内容を根拠にして法的な請求を行う際の代理人としての業務(交渉や訴訟提起による解決に向けた業務)を行うこともあります。
契約書のチェック、作成、契約内容を変更する覚書のチェック、作成に向けて弁護士から適切な助言を得るには、作成やチェックについて必要が生じた後のスポットでの対応を依頼するよりも、日頃から契約書や覚書について弁護士から助言を得られる体制作りをされること(顧問弁護士を依頼されること)、顧問弁護士に契約書、覚書のチェックやその作成等を相談することを習慣にされることをお勧めします。このことにより会社の業務やどのような契約をどのような相手方と締結して業務を行っているのかを理解した上での助言を顧問弁護士から得ることが可能となるからです。
当事務所との顧問契約を検討されたい会社経営者の皆様、法務担当者の皆様は遠慮なくお問い合わせください。
文責 弁護士 濵田 諭
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