カスハラとは?企業を悩ますカスタマーハラスメントについて弁護士が解説

 今回は皆様も最近良く目にすることが多いと思われるカスタマーハラスメント(以下、適宜「カスハラ」と略します。)についてお話ししていこうと思います。

 お話しする内容は以下のとおりです。

1 カスハラとは

2 カスハラと正当なクレームとの境界線

3 カスハラが発生した際の対応方法

4 カスハラが与える社員等に影響

5 カスハラを未然に防ぐために企業がとるべき対策

6 カスハラについて弁護士に相談するメリット

7 当事務所のサポート内容

昨今、ニュースやSNSで「カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)」という言葉を目にしない日はありません。顧客による過剰な要求や暴言は、従業員の心身を蝕むだけでなく、企業の存続すら危うくする重大な経営リスクです。

今回は、多くの企業の顧問弁護士を務める立場から、カスハラの定義や実務的な対応策について詳しく解説いたします。


1 カスハラとは

厚生労働省の指針によれば、カスハラとは「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の態様が社会通念上不相当なものであって、当該態様により、労働者の就業環境が害されるもの*と定義されています。

具体的には、以下のような行為が該当します。

(1)精神的な攻撃: 怒鳴る、侮辱する、SNSへの晒しを仄めかす。

(2)過大な要求: 契約外のサービス提供の強要、法外な金銭賠償、土下座の要求。

(3)拘束的行為: 長時間の電話、居座り、執拗なメール。

(4)物理的な攻撃: 殴る、物を投げる、胸ぐらを掴む。

単なる「不満の表明」を超え、従業員の人格を否定したり、業務を妨害したりする行為は、もはや顧客ではなく「加害者」であるという認識を持つ必要があります。


2 カスハラと正当なクレームとの境界線

現場の判断を最も悩ませるのは「どこまでが正当なクレームで、どこからがカスハラか」という境界線です。弁護士の視点では、以下の2つの軸で判断します。

判断軸正当なクレームカスタマーハラスメント
要求の内容商品の欠陥への謝罪、契約に基づく返金。法的根拠のない金銭要求、従業員の解雇要求。
態様(やり方)理性的、事実に基づいた指摘。大声、暴言、長時間の拘束、暴力。

なお「内容が正当であっても、態様が不当であればカスハラ」になり得るという点が重要です。例えば、商品に不備があったとしても、それに対して3時間怒鳴り続けたり、土下座を強要したりすれば、それは立派なカスハラです。


3 カスハラが発生した際の対応方法

実際にカスハラが発生した際、現場で意識すべきは「組織としての対応」です。

この点も含めて留意すべきなのは以下の点です。

(1)事実確認と記録

やり取りを録音・録画し、詳細な経過をメモに残します。これは後の法的措置において不可欠な証拠となります。

(2)複数人での対応

担当者一人に抱え込ませず、必ず上司や複数人で対応します。

(3)毅然とした拒絶

不当な要求には「これ以上の対応は致しかねます」「お引き取りください」とはっきりと伝えます。

(4)警告と遮断

度を越した場合は、書面(内容証明郵便等)による警告や、電話の着信拒否、出入り禁止などの措置を講じます。


4 カスハラが与える社員等への影響

「お客様は神様」という古い価値観でカスハラを放置すると、企業は甚大なダメージを負います。

(1)社員のメンタルヘルス疾患

 強いストレスによるうつ病の発症や離職。これは社員自身にとっての損害であると同時に会社の業務を担う社員がいなくなる、社員のこなせる業務が減るといった意味で会社にとっての損害にもなります。

(2)職場環境の悪化

 他の従業員のモチベーション低下や、連鎖的な退職。カスハラを受けた社員のみならず周りの社員にも「自分も同じ立場になったらどうしよう。」「会社が守ってくれないのではないか、可能であれば顧客対応は自分がしたくない等の心理状態を生じさせてモチベーションが低下や連鎖的な退職を招きかねません。

 モチベーションの低い社員ばかりになった職場環境になってしまうと会社の業務効率の低下、働く社員にとっての職場環境の悪化、職場環境配慮義務違反を根拠とする別の社員からの法的請求のリスクの増大といった会社にとっての不利益を考えなくてはいけません。

(3)安全配慮義務違反

 会社が対策を怠った場合、従業員から損害賠償請求(安全配慮義務違反)を提起されるリスクがあります。

(4)生産性の低下

一人の不当な顧客のために、多くのリソースが割かれることによる生産性の低下、他の顧客にサービスを提供できなくなる等の機会損失も考えられます。


5 カスハラを未然に防ぐために企業がとるべき対策

カスハラは「起きてから」ではなく「起きる前」の準備が肝心です。

(1)基本方針の策定と公表

「カスハラには一切応じない」という姿勢を社内外に宣言します。HPへの掲載や店舗への掲示が効果的です。最近、色々な店舗や役所において掲示されているのを良く見るようになったと思います。

(2)対応マニュアルの整備

「こういう場合は対応を打ち切る」という明確な基準を設けます。また不当な要求に対してどこに相談、連絡すべきかを一見してわかるようなフロー図を作成して社内で共有することもこれに該当します。

(3)教育・研修の実施

カスハラ対応やクレーム対応のロールプレイングを通じ、従業員に「断る勇気」と「守られる安心感」を与えます。

(4)相談窓口の設置

顧客等からの不当な要求で困った従業員がすぐに相談できる体制を整えます。


6 カスハラについて弁護士に相談するメリット

弁護士を介在させる最大のメリットは、「法的な後ろ盾による心理的・実務的な安心感」です。

(1)客観的な法的判断

その要求に対してどのように対処すべきかを指示し、調査の手法を提示して調査結果を検証します。その結果、顧客からの要求について法的に応じるべきものか、それとも拒絶すべきものかを判断し、とるべき対応を指示することが可能です。

(2)代理人としての交渉

顧客等からの不当な要求が継続する場合には弁護士が会社の窓口となることで、悪質なクレーマーを牽制し、従業員を直接的な攻撃から解放できます。

(3)刑事告訴・民事訴訟の検討

顧客等からのアクションについて強要罪、威力業務妨害罪、名誉棄損などの刑事責任が問えるケースでは警察への被害届の提出や刑事告訴を検討することになりますし、民事上の責任の有無が争いになっているものの要求している側が事実上の嫌がらせを継続して対応に困る場合には会社側から債務不存在確認を求める民事訴訟の提起をするといった民事での法的措置を迅速に講じることができます。

(4)予防体制の構築

貴社の実情に合わせたマニュアル作成や研修を行い、1人1人の社員が不当要求への対応について一定の知識を持っていただき不当要求(カスハラ)への適切な対応ができるようにして会社全体の防衛力を高めます。

以上述べましたように顧客等から不当な要求への対応(カスハラ対応)を従業員個人の忍耐に頼る時代は終わりました。会社として毅然とした態度を示し、大切な従業員を守ることが、結果として社員が働きやすい職場を作ること、企業のブランド価値を高めることにつながります。

7.当事務所のサポート内容

 当事務所は多くの会社の顧問業務を日常的に行っており、その中でクレーム対応や不当要求への対処、カスタマーハラスメントとも評価しうるケースについての相談を受けるケースも少なくありません。実際に不当要求を行っている個人、法人に対して要求を拒否すること、不当要求を継続した場合には然るべき法的措置をとるとの警告を内容とする文書を企業の代理人弁護士として送ることもありますし、不当要求を行う相手方に対して債務不存在確認を内容とする民事訴訟を提起して解決に至ったケースもあります。

 不当なクレームへの対応、カスハラとも評価できるような案件において弁護士から適切な助言を得るには、企業が実際に取引をしている商品や提供しているサービスについての知識を弁護士が有していることが望ましいと思いますし、業界の実情や慣行、普段行っている従業員への教育、顧客対応としてどのような点を心がけておられるのかを弁護士が知っていると実態にそぐわない的外れなアドバイスを弁護士がするのを避けることが可能になります。

 そして不当要求の事例に巻き込まれた場合、カスハラ的な対応をする相手方への対応に困った後のスポットでの対応を依頼するよりも、日頃から顧客への対応、従業員と顧客との関係、顧客からクレームを受けやすい問題のある社員への対応等について弁護士から助言を得られる体制作りをされること(顧問弁護士を依頼されること)、困ったことが起きた場合はもちろん、不安が生じた場合には弁護士に相談することを習慣にされることをお勧めします。

 当事務所との顧問契約を検討されたい会社経営者の皆様、法務担当者の皆様は遠慮なくお問い合わせください。

 文責 弁護士 濵田 諭  

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