株主総会

ここでは株主総会について以下の内容を取り上げていこうと思います。株主総会についての説明をしたサイトは多くあると思いますし,そのような説明だけをしてもつまらないと思いますので実務上よくあるケースを最初に触れて,そのケースにあてはめる形で株主総会を適切に行う必要性,重要性を書いていこうと思います。

 

 「株主総会をきちんと招集しないといけません」,「きちんと議事を進行しないといけません。」,「きちんと決議をとらないと後から総会決議の効力を争われる可能性がありますよ。」という解説をするサイトは数多くありますが,これではイメージが持ちづらいと思います。

 

 私自身が弁護士として株主総会がらみで相談を受けることが多いのは,会社の経営陣を一新したい横暴な経営を行う現在の代表取締役を解任したい不祥事が発覚した取締役を解任したい経営能力に問題が出てきた現在の代表取締役にやめていただき意欲と能力のある取締役や社員を代表取締役にして経営を見直したいといったものです。

 そして既に取締役を解任した後に相談に来られる場合には,解任した取締役から不当に解任されたとして損害賠償請求されているとか解任の際の株主総会の招集や議事進行,決議の取り方に問題があったので総会決議の取り消しを主張されているといったものが多いです。

 

 このような相談事例,紛争事例から学ぶのはこれから取締役の解任などの株主総会の決議が必要なアクションを起こす際には適切な招集,議事進行,決議の取り方を行い,株主総会によって得ようとする目的を達成すること,達成した後に紛争にならないようにすること,紛争になっても当方の主張を通せるようにしておくことが重要ということです。

 

 ということで株主総会の話をしていこうと思います。内容は以下のとおりです。

1 株主総会を適切に行えているか

2 株主総会の重要性と基本的なルール

  • 重要性
  • 基本的なルール
  • 総会決議の効力・存在が争われる場面

3 当事務所がサポートできること

4 サポートを受けるメリット

  • リスク回避
  • スムーズな運営と会社のリソースの無駄遣いの防止

それでは内容に入っていきましょう!

1 株主総会を適切に行えているか?

 株式会社には取締役会が置かれている取締役会設置会社と取締役会が設置されていない取締役会非設置会社があり,特に後者においては会社に関する全ての事項を株主総会で決議することができます。

 株主総会を開催しているが招集や議事の進行に問題があるという「適切に」行えているかという問題の前に株主総会を開催していない中小企業は多いと感じています。

 このような中小企業においても前述のように取締役の解任など日常行わないアクションを起こす場合には株主総会を開催することになり,このような場面になって普段は行っていない株主総会,どのように開催さればよいのだろう?という問題に直面するわけです。

 

 毎年定時株主総会を開催している会社では決算報告など毎年毎年のルーティンとして行っていることは出来ているものの,取締役の解任等の例年行わないアクションを起こす際に普段行っている株主総会の招集,議事進行,決議の取り方に問題がないかを検証する必要が生じます。

 定時株主総会のタイミングでは取締役の解任などの議題を上げることができず臨時株主総会を開催することになるケースが多く,そうすると臨時株主総会を開催することになり,定時株主総会は開催しているものの臨時株主総会の開催は初めての経験という会社もあります。

 株主総会を「開催しているか」の段階の会社と「適切に」行えているかを検証する段階の会社があり,いずれの会社においても株主総会を「適切に」「開催」することが重要です。

 次に株主総会の重要性について,その不備がもたらす不利益という観点から説明していき

ます。

2 株主総会の重要性と基本的なルール

(1)重要性

 株主総会は,株主を構成員として会社の意思決定をする機関であり,「会社の最高の意思決定機関」と言われることもあります。前述のように取締役会が置かれていない会社では

会社の関する全ての事項を株主総会で決議することが可能です。

 なお会社の業務に関する意思決定を全て株主総会で行うのは合理的ではないので取締役会を置き,そこで決定したり,代表取締役に業務執行の意思決定の一部が一任されていたり

するわけです。

 

 なお,取締役会が置かれている会社(取締役会設置会社)においても,株主総会で決めなくてはいけないとされている事項があります。

・取締役や監査役などの選任や解任という,役員等の人事に関する事項

・定款変更,合併・会社分割など,会社の基礎的な変更に関する事項

・剰余金の配当など,株主の利益に関する事項

・取締役の報酬など株主総会以外の機関が決定すると株主の利益が害される事項

等です。

 

 今回取り上げている取締役の解任については株主総会における決議が必要な事項であり,

株主総会を「適切に」「招集」「開催」して議案(「取締役の解任」)について「決議」する

必要があります。

 なお株主総会は招集の時期に関して「定時株主総会」と「臨時株主総会」の2種類に

分けられます。定時株主総会は,年に1回開催される株主総会であり,毎事業年度の終了後の一定の時期に招集しなくてはいけないとされています。

 

 一方,臨時株主総会は,定時ではなく「臨時に」開催されているものです。取締役の解任

について定時株主総会の時期に行うことができれば定時株主総会の議案にすることができますが,準備が定時株主総会には間に合わないことも多く,臨時株主総会を招集して決議

することが実務上は多いと思います。

(2)基本的なルール

①招集のルール

 ア 招集の決定

 取締役会設置会社では,株主総会を招集する場合には,取締役会の決議によって

 ・株主総会の日時・場所

 ・株主総会の目的事項がある場合には,当該事項

 ・株主総会に出席しない株主が書面による議決権行使をすることを認めるときは,その旨

等を決定しなくはいけません。

 

 なお,「目的事項」とは,株主総会の「議題」のことです。

 イ 招集方法

 株主総会の招集が決定された場合には,取締役は,株主に対して,招集を通知しなければ

いけません。

 公開会社(全部の株式について定款で譲渡制限をしている会社を「非公開会社」といい,

非公開会社ではない会社が「公開会社」です)の場合には,株主に対し,招集通知を,株主総会の日の2週間前までに,書面で送る必要があります(なお,株主の同意がある場合には

Eメールなどの電磁的方法で送ることも可能です)。

 

 一方,非公開会社(全部の株式について定款で譲渡制限をしている会社のこと,中小企業の場合には非公開会社であることが少なくないので定款をチェックしてください。)の場合には,原則として株主総会の日の1週間前までに送らなくてはいけません。なお,取締役会非設置会社の場合には,招集通知を書面ではなく口頭ですることができる(株主からの書面または電磁的記録による議決権行使を認める場合を除く)とされていますが,口頭での招集通知しかされないと「通知」したかどうかが争いになる際に「言った」「言わない」という不毛な紛争になりますので書面により送るのが通例です。

 

②議決権のルール

 株主は,株主総会で,1株について1個の議決権を有するのが原則です。例外もあるのですが,ここでは割愛します。

 議決権の行使方法ですが,実際に株主総会の会場に行って決議事項について拍手などで賛否の意思を示すのが原則ですが,一定の要件を満たせばオンラインの方法で参加してオンラインで議決権を行使することが可能です。

 なお,本人ではなく代理人が出席することにより議決権を行使することも可能です。

 また「書面による議決権行使」は議決権を有する株主数が1,000人以上の会社では

必ず認められますが,それ以外の会社でこの方式を採用するかどうかは自由です。

「電磁的方法による議決権行使」の採用は各会社の判断に任されており自由です。

 

③議事進行のルール

 株主総会の議事の運営は原則として議長が行います。議長を誰にするかについては通常は定款に定めがありますので,それに従って行われます。取締役社長が議長となって行う

というルールになっている会社が多いです。

 取締役・監査役・執行役・会計参与は,株主総会において,株主から特定の事項について

質問を受けて説明を求められた場合には,必要な説明をしなければなりません。これを取締役らの「説明義務」といいます。

 

 なお,質問事項が株主総会の議題に関しないものである場合等一定の場合には説明義務はないことになっています。

 取締役らがこの説明義務に違反すると「決議方法の法令違反」にあたることになり,株主総会の決議取消事由になりますので注意が必要です。

 

④決議のルール

 株主総会の決議事項を可決するには原則として,定足数と決議要件の2つの要件を満たす必要があります。

 ア 普通決議

 原則として,定款に別の定めがある場合を除き,

・議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数),

・出席した株主の議決権の過半数が賛成する(決議要件)

必要がある場合のことです。

 

「定款に別の定め」というのは,例えば定款で定足数の要件を排除することによって出席した株主の数がどんなに少なくても,出席した株主の議決権の株主の議決権の過半数が賛成すれば可決できるようにしている(ほとんどの上場企業がそうしています)といったものです。

 役員(取締役・監査役・会計参与)の選任・解任については定足数を定款で引き下げる下限が「議決権を行使できる株主の議決権の3分の1」とされていること,決議要件について

「過半数」を下回る割合を定款で定めることができないという縛りがあります。

 イ 特別決議

 会社にとって特に重要な事項については,普通決議よりも要件が重くなる「特別決議」

という要件を満たす必要があります。

 具体的には,

・株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し(定足数)

・出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては

その割合)以上にあたる多数をもって行う(決議要件)

というものです。

 

 例えば役員の任期が定款によって長期に定められているものを「2年」に変更したい場合には「定款変更」が必要になりますので特別決議の要件を満たす必要があるということになります。

 なお,株主総会の冒頭で「総株主数・・名,そのうち・・名が出席ということで総会が適法に成立していることが確認されました。」というアナウンスがされますが,定足数を満たしていることが確認されましたという意味です。

 ウ 採決の方法

 採決の方法については法律上の定めはなく,議長の合理的な裁量に委ねられています、

 通常は拍手,「賛成」「異議なし」等の発声,起立,挙手など,出席者個々人の賛否を

個別に確認しない方法によることが一般的です。

(3)総会決議の効力・存在が争われる場面

 すでに行われた株主総会の決議の効力や存在を後から訴訟で争う手段が以下の3つです。 

①株主総会の決議の取消しの訴え

②株主総会の決議の無効の確認の訴え

③株主総会の決議の不存在の確認の訴え

 株主総会で取締役の解任を行う場合には,後からこの3つの手段を取られないように,

取られた場合にも決議の効力が覆されいように注意する必要があります。

 

①株主総会の決議の「取消し」の訴え

これは

・招集手続または決議方法が,法令もしくは定款に違反し,または著しく不公正なとき

・決議の内容が定款に違反するとき

・決議により特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことにより,著しく不公正な決議がされたとき

といった事由がある場合に,会社法に規定された一定の者(株主,取締役等)が,決議後3か月以内に「訴え」という方法によってのみ,その決議の取消しを請求することができるというものです。

裁判によって争うことができるというものですね。

 

 ここに「招集手続の法令違反」とは,招集通知の発送漏れがあった場合,招集通知の

発送が法定の期間より短い期間だった場合(例えば1週間前に発送すべきものを3日前に

発送した等)等です。

 また「決議方法の法令違反」とは,取締役や監査役が株主総会の説明義務に違反した場合,

定足数が不足していた場合等です。

 そして「決議に方法が著しく不公正なとき」の代表的なものは,株主が出席することが

難しい時間・場所で総会を開催した場合です。

 

②株主総会の決議の「無効の確認」の訴え

株主総会の決議の内容が法令に違反する場合には,その決議の無効を,いつでも,誰から

でも,どのような方法でも主張することができるというものです。訴訟を提起しなくても

できるとされていますが,主張しても会社がそれに応じることは通常考えられないので訴訟

を提起して確認することになると思います。

 この例としては会社が会社法に定める分配可能額を超えて剰余金を配当する決議をしてしまったケースが挙げられます。

 

③株主総会の決議の「不存在の確認」の訴え

実際には株主総会決議が存在しないのに,決議があったものとして議事録が作成され,登記

がなされてしまった場合にその確認を求めるものです。いつでも,誰からでも,どのような

方法でも主張することができます。この点は「無効の確認」の訴えと同様です。

 

 以上述べた3つの訴えを提起されない,提起されてもそれが裁判所によって認められないような株主総会の「適切な」招集,議事進行,決議を行わなくてはいけないということですね。

3 当事務所がサポートできること

 当事務所では株主総会を通じて会社の経営上の問題を解決したい,問題のある取締役について会社経営から排除したいといった個別の目的をもった会社経営者の方からの相談に広く対応しております。

 そして実際に株主総会を招集,開催する場合には招集通知の作成,議事進行のシナリオ,議事録の作成や総会への立会い,総会開催後の役員変更登記などに向けた司法書士への取次ぎなどを行っております。

 

 スポット案件としてお受けするケースもありますが,単発の総会開催で事が解決することは少なく継続的な関与が必要がケースがほとんどですので顧問契約を締結させていただき,その顧問業務の一環としてサポートさせていただくケースが多いです。

4 サポートを受けるメリット

(1)リスク回避

 前述のように株主総会には招集,議事進行,決議,どの場面においても後から不備があったと主張されて決議の効力を争われるリスク,株主総会で行われた行為自体,例えば取締役の解任について不当であるとして争われるリスクがあります。

 株主総会の運用についてはきちんとしたサポートを受けて招集,議事進行,決議を行うことによって株主総会の決議の効力を争われるリスクはかなり小さくできますし,争われても決議の効力が覆されるリスクを0に近づけることができます。

 

 また総会で行われた行為,例えば役員の解任等についても解任に向けた準備や解任の正当な理由を裏付ける資料の収集等を通じて後日紛争になった際に上手く反論して有利に交渉や訴訟を進行させることが可能になるケースが多いと感じています。

(2)スムーズな運営と会社のリソースの無駄遣いの防止

 普段株主総会を招集していない会社,招集はしているものの毎回全会一致で決算報告等をしているだけの会社が株主総会を通じて普段取り上げない議案を取り上げて決議を行い会社の経営体制の見直し等を行う際には社内の誰かが先頭に立って進めていく必要があります。慣れない手続を進めていく際にはわからないことが生じますし,それをインターネットで検索して(書籍を読んで)これで正しいのだろうかと不安になりながら進めていく精神的な負担は想像以上に大きいものです。また日常の業務遂行にかけている時間を総会の開催に向けて割かなくてはいけなくなる時間・労力面でのコストも馬鹿にならないと思います。

 

 わからないところをすぐに弁護士に尋ねることができる安心感,適切な総会の招集・議事進行・決議ができるという期待,そのために今何をしているのかを理解しながら進めていける環境の整備,作成が難しい文書の作成の一部を外注できることによる労力の削減,準備段階での必要以上の試行錯誤による労力の無駄遣いを防ぎ,総会当日の運営をスムーズに行うことができること等メリットが非常に多いことから,弁護士によるサポートを受けることは会社にとって費用対効果が非常に大きいものであると確信しております。

 

 

 

 

 

文責  弁護士 浜田 諭

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