債権回収における弊所のサポート
債権回収におけるよくあるトラブル(このようなお悩みはありませんか?)
債権回収についての会社からの相談で最も多いのは売掛金や請負代金を取引先に支払ってもらえなくて困っているというものです。ご相談いただいている会社と取引先の間で継続的な取引関係があってそれまではきちんと支払ってもらえていたのに突然支払ってもらえなくなったというパターン,単発の取引や工事しかない取引先との関係で売買代金や請負代金を支払ってもらえなくなったというパターンの大きく2種類があります。
私の体感として多いのは後者ですね。前者より後者が多いのは,これからも継続的に取引をしていかなくてはいけない会社に対する支払いは取引先にとっても優先順位が高く,仮に会社の経営が悪化していて会社が抱えている債務の支払いが複数あって,手元資金や借入資金がすべての支払いができない場合でも優先的に支払ってもらえる状態にあるからですね。
前者のパターンの場合には取引先の経営状態が相当程度悪化しており,最悪,会社が倒産することによって貸し倒れが生じるリスクも視野に入れなくてはいけないケースもあります。後者の場合には,それまでに相談企業と取引先の間で積み上げた信頼関係がないこと,取引先からすると相談企業への支払いが遅れることについて軽く考えていて,他の支払いが終わって余裕があれば払うという意識で対応していることも考えられます。
債権回収における対応方法・注意点
(1)請求書の送付
債権回収においては,まず会社から取引先(債務者)に対して売買代金や請負代金の支払いを請求する内容の文書(「請求書」であることが多いと思いますが)を送るのが基本ですし,送っても支払ってもらえないからどうしようというのがスタートラインであることが多いですね。
請求書を出したけれども支払ってもらえないから再度請求書を出すというのを繰り返すということをされている会社が多く見受けられるのですが,請求書を何度出しても,債権の消滅時効を確定的に中断する効果はありませんし,支払能力が乏しい取引先,支払意思が乏しい取引先から回収することはできないことが多いです。
(2)支払いを怠った場合に法的措置をとる旨を記載した文書を内容証明郵便で送付
そこで取引先に対する請求を内容証明郵便にて送るという方法をとる会社がありますが,内容証明郵便という手段をとったからといって特別な効果があるわけではなく,ただ,その内容の通知書を送ったこと,それがいつ届いたかが後から証明できるという効果(配達証明を付けた場合)があるにすぎません。
もちろん,請求を内容証明郵便で送る場合には,その本文で期限を切って,そこまでに支払いがなければ然るべき法的措置をとりますと書くことが多いので,取引先が法的措置(民事訴訟など)をとられるのを嫌がって支払う可能性はあります。
(3)弁護士に債権回収を依頼して会社の代理人名で取引先に文書を送付してもらう方法
そこで債権回収に困った会社が弁護士に相談して,債権回収を依頼し,その弁護士が会社の代理人として取引先に文書を送るという方法をとることも多いです。この方法で回収できるケースもありますが,この方法でも回収できないことも少なくありません。
(4)裁判所を使った手続き
①支払督促
金銭の支払いを求める場合には簡易裁判所における支払督促という手続を使って回収を図ることができます。これは会社自身で行うことも可能ですし,弁護士に代理人として対応を依頼することも可能です。
支払督促という手続のメリットは相手方が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議を申し立てないと支払督促に仮執行宣言というものが付けられて強制執行できる状態になりますし,されに仮執行宣言がついた支払督促について受け取ってから2週間以内に異議を相手方が出さなければ請求している債権について相手方が争う手段がなくなります。
すなわち申立てをしてから,その債権について強制執行できるようになるまでの期間がかなり短くなることが期待できるということになります。民事訴訟については相手方が手続に関与してくる限り,仮に債権の存在や金額に争いがなくても手続きが終わるまで(債権について強制執行できる状態になるまで)に数か月かかることも珍しくありません。言うまでもないと思いますが,相手方が債権の存在や額について争うともっと時間がかかります。これと比較すると支払督促という手続きが早期解決の可能性のある有効な手続きであることが理解していただけると思います。
しかし支払督促について相手方が無視せずに異議を出すと通常の民事訴訟に移行することになります。債権の存在や金額に争いがないケースの場合には相手方が異議を出すものの1か月いくらの分割払いでお願いしたいと記載した異議を出すことが多く,通常の民事訴訟に移行した後も当事者が合意して裁判所での和解(訴訟上の和解)が成立して終了することも珍しくありません。ちなみに,この訴訟上の和解にも違反すると強制執行ができる効力(執行力)がありますので,和解成立後に回収できる可能性は上がります。
なお支払督促の申立てにあたっては債権の存在を裏付ける証拠の提出が必要ありませんので民事訴訟の提起よりは書面作成やその提出が容易であるというメリットもあります。
支払督促について説明するページ(裁判所作成)にリンクを貼ってきますので,ご覧いただくと有益かもしれません。(参考:裁判所 支払督促)
②民事訴訟
相手方が債権の存在や額を争うのが想定される場合には支払督促による解決は難しいと判断して民事訴訟を提起することになります。日本においては民事訴訟において必ず弁護士をつけなくてはいけないわけではありませんので会社自身が代理人を立てずに相手方(取引先)を被告として民事訴訟を提起することも可能です。本人訴訟と呼ばれているパターンです。
しかし本人訴訟の場合には,自社の主張を法的に構成すること,主張を裏付ける証拠を整理して提出して主張・立証していくことが難しいことも少なくなく,弁護士を代理人につけて行う方がメリットは大きいでしょう。請求する金額や相手方からの回収可能性をどう予想するのかにもよりますが,請求額が150万円を超える場合には費用対効果が合うことが多いという感覚があります。
③民事調停
民事訴訟を提起すると相手方との間で角が立ちそうだし,話し合いでの解決も第三者が間に入れば可能ではないかというケースの場合には民事調停という手続を申し立てる方法もあります。この手続では調停委員2名(もちろん背後には裁判官がいますが)に会社が自身の言い分を伝えて待合室に戻り,入れ違いで部屋に入った相手方が自身の主張を調停委員に伝えるという交互に裁判所に対して自身の主張をしていき,双方の主張を踏まえて落としどころが見つかれば双方の合意の元に調停が成立して終了するという手続です。調停で決まった内容には執行力があります。
この民事調停においては相手方が出席しなかった場合,相手方との間で合意に至らなかった場合には不成立となり解決の道筋は全くつかないまま終わるリスクがあります。実際,民事調停が成立するケースはそれほど高くないという感覚がありますし,弁護士が民事調停の代理人として関与するケースは民事訴訟に比べるとかなり少ないようです。
弁護士に依頼するメリット
(1) 交渉段階
債権回収について弁護士が代理人として文書を取引先に送る形で進めていく交渉段階においては2つのメリットあります。
1つ目、これは後述の場合(民事訴訟,民事調停)にも共通して言えることなのですが,債権回収について会社自身が自ら動く必要はなくなり,弁護士主導で案件が進んでいくこと,このことによって会社の物心両面での負担が減ることです。
2つ目ですが,会社名義で請求しても支払わなかった取引先が代理人名義での請求を受けることで支払う可能性が上がることです。会社がいつまでに支払わなかった法的措置をとりますと言っても,「ただの脅しじゃないの」「本当に訴訟まではしないだろう。」と高をくくって対応する場合も多いでしょうが,弁護士が代理人名で送ると「本当に裁判をしてくるのではないか。」「裁判をしてきたらどうしよう。」と考えることになり,支払うという選択肢をとることも期待できるということです。
(2) 民事訴訟
交渉が決裂した後(支払督促に異議が出た後,民事調停が不成立となった後)に民事訴訟を提起したり,進めていったりするにあたっては弁護士を代理人につけた方が良いと思います。会社の主張を法的にどのように構成して,それをどの証拠を引用して主張・立証していくのか,裁判所にどのような書面を出して進めていくのかなど弁護士ではないとわからないことが多すぎると思いますし,弁護士を会社の代理人に立てることで本来通せる主張を確実に通すことができたり,会社が主張したいことをきちんと主張・立証できなかったが故に本来は通る主張が通らなくなるリスクを回避することができます。
(3) 民事調停
申立書の作成や調停期日への弁護士の同行によって労力の削減や会社の主張をきちんと調停委員に伝えるという目的は達成できると思います。ただ,双方の主張に隔たりが大きいケースでは,この手続での解決がそもそも難しい
ことが多く,弁護士に依頼したメリットというのがほとんどないということも少なくありません。
当事務所でサポートできること
(1) 予防的な対応
債権回収については,日ごろから債権管理をきちんと行うことが重要であり,少しでも相手方の支払意思や支払能力に不安を感じたら取引の停止を検討するなど適切な対応が必要になります。そして相手方との間で債権の存在や額について紛争が生じた場合に,自社の主張する債権の存在や額を裏付けるための文書(契約書等)をきちんと作成する必要があります。
このような予防部分について当事務所は会社と顧問契約をいただいて顧問弁護士として対応させていただいております。
(2) 交渉段階
スポット案件として会社の代理人として文書を送るといった交渉業務をお受けすることもありますし,顧問先の依頼で交渉業務を行うこともあります。顧問契約の範囲内で対応できるのか,顧問先からも追加で費用をいただくのかはケースバイケースですが,顧問先からの依頼での代理人名で売買代金や請負代金といった債権について支払いを求める文書の作成・発送につきましては別途料金をいただかないケースがほとんどです。
もちろん実費はいただきますが,スポット案件で対応する場合にはそれなりの費用をいただく業務ですので顧問弁護士として当事務所を選んでいただくメリットとして,この文書の作成・発送が無料であることが挙げられると思います。
(3) 民事訴訟,民事調停
スポット案件として訴訟の代理業務の依頼を受けることもありますが,最近はご依頼される会社から1年の顧問契約をいただいて,その顧問料を着手金に充当する形で対応するケースが増えております。このパターンの場合も報酬についてはきちんと規定どおりいただきます。
なお既に顧問契約をいただいている会社から債権回収についての訴訟提起の依頼を受ける場合には通常の着手金から2割を引く形で対応させていただいております。
民事調停についてスポット案件でお受けすることはありませんが,顧問先の紛争案件の解決手段としてこの手続による解決が妥当であると判断すれば手続の代理業務を行います。費用については民事訴訟の場合と同じく顧問先について着手金の2割引きを採用しております。
最後に
債権回収については契約時の文書の作成,取引開始後の債権の管理,不払いリスクが生じた場合の対処,実際の不払いが生じた場合の対応など弁護士に相談することによって課題の解決や会社がこれらの業務に割くリソースの省力化が図れるケースがあります。
そして,会社の日常の業務のフローがわかっている方が債権回収にあたって適切なアドバイスがしやすい分野であるという意味では,弁護士と顧問契約を締結しておくことをお勧めします。そして,当事務所との顧問契約締結について前向きにご検討いただく会社,法人,個人事業主の皆様からの問い合わせをお待ちしております。
文責 弁護士 濵田 諭