問題社員対応

問題社員とは

ここでの問題社員とは会社の経営者,人事担当者から見て

労務管理上の問題点を発生させる,発生させる可能性のある社員を指します。

既に高齢化社会に突入した日本において人手不足は深刻な問題であり,売り手市場においては

会社が社員を雇用する際のスクリーニングが適切にされずに,採用した後に

「問題社員」であったことが判明するケースも多くなっていると思います。

また,会社が社員の問題行動を黙認しているうちに社員が「問題社員」化すること,

その社員の周りも「問題社員」化してしまうことも往々にしてあるようです。

 

会社としては社員が起こす問題について適切に対処し,「問題社員」化を防ぐこと,

「問題社員」への対応を誤らずに職場の環境を良い状態に保つことが求めれていると思います。

また問題社員だからといって,その問題と均衡がとれない処分や対応をすることは

会社と社員の間での法的紛争につながりますので,そのような視点も重要です。

 

「問題社員」にどのような対応をするかは,いつの時代にも会社経営者や人事担当者の

最大の悩みの1つであり,悩みのバリエーションが時代の変化に応じて

少しずつ増えていっているというのが正しい表現ではないでしょうか。

それでは問題社員にはどのような種類があるのでしょう。

 

 

問題社員の類型

問題社員についてどのように分類するかは色々な考え方があると思いますが,

1つの分け方として次のようなものが考えられます。

 

 

  • (1)日常の業務遂行にあたって能力不足や問題行動がある社員

  • (2)ハラスメントに関わる社員

  • (3)業務とは直接関わらない問題行動がある社員

 

なお会社がその対応に苦慮するメンタルヘルス不調型の社員も会社経営者からすると

「問題」のある社員だと思うのですが,その不調が過重労働によるケースもありますので,

ここでは問題社員とは取り扱いません。

 

 

類型別問題社員への対応方法

日常の業務遂行にあたって能力不足や問題行動がある社員

この中には単なる能力不足の社員,業務上の指示に従わない社員,

業務遂行にあたっての不正行為を行う社員が含まれます。

 

 

 

能力不足社員について

仕事の能率が悪い,ミスが多いといった能力不足の社員については,その問題点を指摘して

注意するだけでは不十分で能力向上に向けた会社側の努力が必要となります。

問題点を指摘し,社員に理解させた上で,能力の向上に向けた具体的な取り組みを実践し,

それにも関わらず能力の向上が見られない場合に退職勧奨を行い,

それも功を奏さない場合に解雇を検討するという手順を踏むのが無難です。

 

会社経営者が能力不足社員について適切なプロセスを踏まずに解雇をして

不当解雇を理由にした法的措置(地位確認を求める裁判所での手続をとられること等)を

取られてしまうというのは非常に古典的な労務管理ミスあるあるだと思います。

 

業務上の指示に従わない社員について

指示された仕事をしない,遅刻や欠勤が多い,配転命令などの業務上の命令に従わない等,

様々な社員がここに含まれます。問題行動があったら指摘し,業務上の指示に従わない場合には

懲戒処分を下すなどの適切な対処を行い,それでも功を奏さない場合には退職勧奨を行うなどして

雇用契約の解消を目指し,最終的には解雇も検討するという形で考えていきます。

 

業務遂行にあたっての不正行為がある社員について

不正行為の中には経理担当者などによる事業資金の着服といった刑事罰の対象になるようなものと

交通費や手当の不正受給といった比較的軽微なものまであります。

 

事業資金の着服(これ自体は刑法上の業務上横領罪にあたる行為です)などの刑事罰の対象となる

不正行為があった場合には懲戒解雇も含めた毅然とした措置と会社に与えた

経済的損害を回収する手立てをとる必要があります。刑事告訴まで行うかどうかは

問題社員が自らの行った行為について責任をとる姿勢を示すかどうかで決めるのが良いと思います。

また,問題社員との雇用契約を解消するかどうかですが,

基本的には解消する(会社を辞めてもらう)方向で調整すべきです。問題はその方法です。

懲戒解雇という手段も正当化される可能性が高いのですが,

退職勧奨をして退職してもらう方が穏当かなと思います。

 

会社の経済的損害を回復する手立てですが,問題社員との間で会社が被った損害について

どのような形で賠償するのかを合意書や示談書として作成すること,

より確実に回収したい場合にはそれを公証人役場で公正証書にすることをお勧めします。

 

ハラスメントに関わる社員について

利用者・利用者の家族とのトラブル

ハラスメントに関わる社員は下記の2種類に分けられると考えます。

  • (1)ハラスメントを行う社員
  • (2)業務上の指導などの本来は問題がない会社側の行動等をハラスメントと主張する社員

 

セクシャルハラスメント(以下,「セクハラ」といいます。)については何がセクハラに当たるかについて

多くの人に理解されるようになったことから②の類型に当たる社員は少ないのですが,

パワーハラスメント(以下,「パワハラ」といいます。)については,何がパワハラであるのかについて

社会での認知度が低く,パワハラと評価されるのを恐れて問題社員を野放しにする問題会社と

会社側の正当な指導を「パワハラ」と評価して理不尽な要求をする問題社員の双方が多く存在していると思います。

 

2019年5月に改正労働施策総合推進法(通称「パワハラ防止法」)が成立し,2020年6月に

施行されていますが,このパワハラ防止法が2022年4月からは中小企業も適用対象となります。

このことから「パワハラ」の内実がわからないまま委縮する会社経営者,「パワハラ」を主張して

会社に理不尽な要求をする社員の双方が増えていくと予想しています。

 

なお,パワハラとは職場において行われる

  • ① 優越的な関係を背景とした言動であって
  • ② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
  • ③ 労働者の就業環境が害されるもの       であり,

①から③の要素を全て満たすものをいいます。

また,客観的にみて,業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については,

職場におけるパワハラには該当しません。個別の事案において,

それがパワハラに該当するのかどうかの判断は難しく労働者からパワハラが主張される場合には,

パワハラに該当すると主張している事実をどのようにして認定するのかという問題と

認定した事実を前提にそれがパワハラと評価できるのかという問題があり,この問題のいずれにも

信頼のおける回答を得るには労務問題に詳しい弁護士の助力が必要となります。

 

 

セクハラ・パワハラいずれについても,それを社員が行ったと評価できた場合には,

その「問題社員」について懲戒処分を下す,配転を行うなどの適切な対応が必要であり,

それを怠るとハラスメント被害を受けた社員から損害賠償請求をされるリスクが高くなります。

一方,会社側の適正な業務指示や指導(会社が弁護士の意見を踏まえてもそのように評価するもの)について

ハラスメントと主張してくる社員については不当な要求には応えないという毅然とした対応が必要となります。

 

 

業務とは直接関わらない問題行動がある社員

残業代請求の増加

実例として分かりやすいのは職場以外で行った行為によって逮捕されてしまった社員,

勤務時間外に自分の車で飲酒運転をした社員などです。刑事罰の対象となる行為をされて

逮捕(その後に勾留・起訴)された社員については懲戒処分を検討することになりますが,

社員が容疑を否認(認めていない)している場合には刑事責任が下されるかどうか,

下されたとして,どのような犯罪事実でどのような処罰を下されたのかを踏まえて

懲戒処分をするかどうか,するとしてどのような処分をするのかを決めることになります。

社員が容疑を自白している場合,どのような行為をしたのかにもよりますが,

実務上は社員の方から退職届が出ることが多いです。退職届が出ない場合ですが,

逮捕・勾留・起訴と刑事手続が進んでいった場合,その結果を踏まえて懲戒処分をどうするのかを

検討することになりますし,起訴休職制度を就業規則に置いている場合には,その利用も検討しましょう。

 

ただ,社員に起訴休職を命じる場合には,

「職務の性質,公訴事実の内容,身柄拘束の有無など諸般の事情に照らし,

 従業員が引き続き就労することにより会社の対外的信用が失墜し,又は職場秩序の維持に

 障害が生ずるおそれがあるか,あるいは当該従業員の労務の継続的給付や企業活動の円滑な遂行に

 障害が生ずるおそれがある場合でなければならず,また,休職によって被る従業員の不利益の程度が,

 起訴の対象となった事実が確定的に認められた場合に行われる可能性のある懲役処分の内容と比較して

 明らかに均衡を欠く場合でないことを要する」

(全日本空輸事件 東京地判平11・2・5労判760号46頁)とされています。

社員が起訴されたからといって無条件に起訴休職を命じることができるわけではないということです。

 

 

当事務所のサポート内容

行政からの指導・監査

当事務所では上記のような問題社員を抱えてお困りの企業様に向けて

適切な対応に向けたアドバイス・ご提案を含めたサポートをしております。

 

退職勧奨サポート

問題社員について会社が雇用の解消を目指す場合には退職勧奨をすることになりますが,

その方法を誤ると後日退職の意思表示が無効になったり,

違法な退職勧奨があったとされて損害賠償責任を負うことになったりすることになります。

また,問題社員の雇用を解消するという目的のために社員をどのように退職方向へ

説得していくのかという技術も必要です。

 

そこで退職勧奨に向けて当事務所では会社経営者,人事担当者の方にその方法について

具体的にお伝えして,問題がなく,その効果が期待できる退職勧奨をお手伝いします。

 

就業規則のレビュー・改定

社員の服務規律の規定,懲戒処分の規定,起訴休職制度など現在の就業規則に必要な規定が抜けていないか,

その内容で十分に運用できるのか,施行されている労働法令を踏まえた内容となっているのか等について

レビューを行い,改定のお手伝いをいたします。

 

懲戒処分の検討

問題社員について懲戒処分を行うのか,懲戒処分を行うとしてどのような処分を行うのかについて

迅速かつ正確なアドバイスを提供いたします。この点については会社様と顧問契約を締結していただき,

顧問業務の一環として行わせていただいておりますが,スポットでのご相談にも対応していますし,

それをきっかけに当事務所との顧問契約の締結を検討される会社も多いです。

遠慮なくご相談ください。

 

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